第5話 帝都電力会長 東大
それから数日後、近藤の言う通り、帝都電力会長、
そして、ノックもなしに三人が入ってきた。
「どなたさんでしょうか?」
渡辺が慌てて聞く。
三人のうちの一人は、勧められもしないのにソファーに座った。
「ジュリー・ワシントンさんですね」
ソファーに座った老人は、たたずむジュリーを見て言った。とにかく態度がでかい。
「はい、わたくしが、ジュリー・ワシントンですけど、どちら様で?」
ジュリーは、近藤の言っていた
「帝都電力会長の東大です」
「とうだいさんですか」
「あずまひろしです」
東大はすでに不機嫌になっていた。
その不機嫌を察して、随行してきた名古屋電力社長の原小力(はらこりき)がフォローする。
「
原小力は、ここまで言うと、自分の事のように胸を反った。
「へぇー、それは大したもんですね。東京大学と言うと本郷にあるあの三流大学の事ですね。まあ、三流大学でも主席卒業っていうのはなかなかのもんです。ちなみに、私は、MIT 150年の歴史で最高の成績で卒業しまして、開設以来の天才なんて言われましたけど、オーホホホ」
ジュリーも負けてはいない。くだらない自慢話の応酬だが………
「東京大学が三流だって………、だいたいMITなんて聞いたことないぞ」
もう一人の随行員、近畿電力会長、関伝四郎(かんでんしろう)はMITを知らない。
“MIT、マサチューセッツ州工科大学、今までノーベル賞学者を100人近く輩出した大学だ。ちなみに、東京大学は、10人あるか無いかに過ぎない。比べれば三流と言われても仕方がない”
その顔を見て、
「東会長は、政界、財界のみならず、芸能界、スポーツ界、文学界、果ては極道界にまで幅広く人脈を持たれ、事実上の日本の支配者なんでおわしますよ。総理大臣の首も10人は
渡辺は、思わず床に座り土下座をしてしまった。
「で、御用件は?」
ジュリーは聞いた。東大の顔は見ていない。見る気もしない。
「博士も色々とお困りだと聞いております。何やら、大学の外にまでデモ隊が押しかけてきているようで、このままでは、ここにも居られなくなるんじゃないですか」
「…………」
「そこで、提案ですが、あの発電機の特許、我々に売ってくれませんか。一億五千万ほど出しましょう。ついでに、返品された機械も全部定価で引き取らせてもらいますよ。どうですか、一つ考えてみてもらえませんか」
東大は、薄ら笑いを浮かべながら言った。
調べ上げている。一億五千万という金額は、開発に要した費用の総額である。これだけあれば、何とか無傷で撤退できる。だが、ジュリーにも女の意地がある。
「御心配には及びませんわ。市場は日本だけではありませんし」
「…………」
「御用がお済ならお引き取り願えませんか。これから講義があるもんで」
ジュリーにとって、精いっぱいの虚勢であった。
「あの女、許さん。こうなったらとことん追い込みかけてやるぞ。俺の力がどんなもんか思い知らせてやる」
東大は、帰りのリムジンの中で怒りを露わにした。
そして、秘書に、
「警視総監の
と命じた。
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