第4話 心機一転
普段は見ることのできない店員さんの頬がほころぶ表情を見た翌日。俺は街の外にいた。
「なあ。ゴブ助。これから俺一人で魔物を狩らないといけないんだけどお前は手伝ってくれるよな?」
ゴブ助とは、今まで苦楽を共に。いや、死の恐怖を一方的に与え続けてきた俺が召喚したゴブリンだ。しかし、そんなゴブ助は俺が行ってきた行為は気にしないと言わんばかりに首を縦にふっている。
一方、昨日召喚した狐はというと俺の隣で毛づくろいしていた。あまりの温度差にどうにかしてしまったのかと錯覚してしまう俺だったが、流石にこの3人?一人と二匹?で魔物を狩りに行こうとするほど頭はおかしくなっていなかった。
しかし、手持ちの食料はゴブ助に食べられてしまったし、手持ちのお金は昨晩を過ごす宿屋で使ってしまった。このままでは何も実行に移せないと感じた俺は、禁忌の手段。契約で提案できる素材を持たずに召喚を行うことにした。
このままでは、魔物に殺されるか明日を生きるために人を殺すかの2択を迫られそうであったためだ。もし、召喚で何か手に負えない生物が出た時は街に心中してもらおうと城門から少し離れたところで召喚を行った。
召喚されたのはやはりゴブリン。しかもお腹がすいていたのか持っていた弓でゴブ助を射貫いて食べてしまった。
「これが世紀末か。ゴブ助。成仏しろよ」
なんて言葉を吐きながらも新しく召喚したゴブリンアーチャーの標的が俺にならなかったことにほっとしていた。
ゴブリンアーチャーの図体はゴブリンとそんなに変わらないので、いたるところが散乱したゴブリンの死体がそこら中に散らばっていた。
俺は、それらを片付ける前に、召喚したゴブリンアーチャーと契約を結ぶ。ゴブリンは基本的に弱い生物のため、餌さえ用意していれば契約を破棄されることのない使い勝手のいいモンスターだ。
そのため、何の問題もなく契約は成立した。その後、ゴブ助の死体を新しく仲間となったゴブリンアーチャーの餌にするために拾い集めようとも思ったがゴブリンアーチャーとは言えども狩れるモンスターは少ない。そのためもう一度、召喚を行使することにした。
もはや何のためらいもなく召喚を行使して、その場に現れたのは。
何の変哲もない小鳥であった。普段であればゴブリンアーチャーの餌にでもなりそうな小鳥は、まだ拾い集めていないゴブ助の死体の一部をついばむ。
召喚した生物は契約するのが決まりのため、契約を行使すると難なく受け入れられた。
モンスターではなく動物をこの短期間に二回も召喚してしまうというアクシデントじみた結果が出てしまったが、今日はこれ以上召喚をする気持ちになれなかったのでその場を離れて草原へ向かおうとした。
そこで気持ちを切り替え、召喚ズを引き連れていこうと眺めると何やら3匹で三角形を作り会議を行っているような感じになっていた。
俺は、その場を邪魔することをなんとなくではあるが出来なかったためゴブ助の死体を拾い集めて準備だけ整えておくことにした。
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