第3話 食欲

ゴブリンに慰められた俺は、なんとなく嫌な気分が晴れ立ち上がるとゴブリンが何か差し出してくる。


それは、斥候役で森へ走り込みウルフにかみ殺された仲間ゴブリンの一部だった。


俺達は、ゴブリンを複数召喚しており、無鉄砲に敵のいそうな場所へと突っ込ませるという作戦とも言えない方法で敵をあぶりだしていた。


俺を慰めてくれたゴブリンが渡してきたのは、その方法で今日お亡くなりになったゴブリンの一部だ。


前にも話したがゴブリンは悪食でる。それは人間が食べない同属であるゴブリンを食べるほどだ。そうやって食費を軽減していた俺が言うのもどうかしているとは思うが流石にそれはどうかと思っている。


俺とゴブリンが苦笑いで見つめあっているとその間に先ほど召喚した狐が入り込んできた。


その狐は俺に背を向けてゴブリンの方を向いている。そして一時話でもしているような時間が過ぎた後ゴブリンは商店街に向かって駆けだした。


先ほどまでは他の人間など死んでしまえばいいと思っていた俺だが、体が勝手に動きゴブリンを追いかける。だがいつもよりゴブリンの足は速く、商店街の一角で叫び声が響き渡った。


俺と狐がそこへ駈け込むと、ゴブリンが稲荷ずしを一個つかみとり追いかけてきた俺の方へ差し出していた。稲荷ずしを買う程度のお金は持っていたため、店員さんに謝りお金を払う。


召喚した狐はその様子をじっと見つめていたが俺はその光景には気が付かなかった。


お金を払ってゴブリンから稲荷ずしを貰うと、俺のお腹が「ぐぅ~」となった。が音は一つではなかった。


狐がこちらを見ないように必死に目を背けているように見えたのだ。俺は狐が現れてからゴブリンの行動に変化が見られたことに気づいた。もしかすると狐がゴブリンに知恵を与えたのかとも思ったが思い過ごしかと思うことにして、狐へ稲荷ずしを差し出した。


しかし、狐は短い手で稲荷ずしを俺を方へ押し戻す。なんだか先ほどまでの暗い気持ちが軽くなったような気がして俺は稲荷ずしを口へ運んだ。


ちなみに、俺が稲荷ずしを口へ運んだ時に狐と目が合い、その眼には少し涙が浮かんでいたのだが俺はそれは見なかったことにすることとした。


そんなやり取りをしているところを稲荷ずしを売っていた店員さんに見られていた。俺は恥ずかしくなったが店員さんの目は狐の方へと向いている。


その瞬間、店員さんと目が合い無言で何かを伝えようとする必死な目をしていた。俺は思わず頷いてまったがその時に店員さんの手に乗せられていた稲荷ずしを狐の方へと差し出していた。


狐は店員さんの手から稲荷ずしを食べると、そのもふもふの毛をこれでもかと言わんばかりに手にこすりつけていた。


その時の店員さんの表情は普段は見られない表情だったとだけ言っておこう。

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