第48話合宿


___食堂____



「…正直つらい」

「ミナトさんはまだ6日しか体験してないじゃないですか」




「そうですわ。それに健一郎さんを見てください。あんなにやつれて…わたくしたちと再会したのはさっきですわよ。それまでずーーっと2週間、ダンジョンにこもりぱなっし。毎日夕方と夜にはライアンがこちらに戻ってくるからその時間は一人で行動していたことになりますわ」



「…。」



そんな話を聞きながら、俺は蓋をした大きな鍋を持って中に入る。




「し、幸せな時間は睡眠時間と入浴の時間と朝食、夕飯の時間ですわ…」


「今回の夕食は何かしらね」

「テレサさんはあの鍋に何が入っていると思いますか?」

「うーーん。私的にはビーフシチューがいいわね」


俺は鍋の蓋を開ける。



「はずれ。カレー」



俺は人数分のカレーライスとサラダを渡す。




「カレーもおいしいわね」

「アイスも冷凍庫にある」


俺の分もよそい終わると俺も机に座り手を合わせ食べ始める。




「ぐすっ。ぼ、僕こんなに美味しいカレーはじめて食べました」


眼鏡は大げさに泣きながら食べる。そんな様子をザドがドン引きしたように俺を見て言う。




「…ダンジョンでこいつは何を食べてたんだ」



確か、眼鏡はダンジョン内では缶詰や保存食しか食べさせてなかったな。それに俺がいないときはダンジョン内で何を食べてたんだろう?




「分かんない」



ここにいるほとんどメンツが俺を冷たい目で見て、眼鏡を暖かい目で見る。




「眼鏡さん。まだ、お代りはありますからたくさん食べてくださいね」

「僕の名前は眼鏡じゃなくて、健一郎です…ぐすっ」



と選手団欒と夕食を食べているとそん中、ずかずか入ってくるやつが一人。





「ここにいたんすっね。どこ探してもいないからみんな参加してないかと思ったすよ。それにしてもうまそう匂いっすね~。おれっち、まだ夕飯食べてな…」




「ギル。今まで何してたクマ?」

「ん?いつもど~り町で女の子ナンパしてたっすよ~」




そう言いながらニット帽はカレーをよそおうとしたのを眼鏡が土魔法で鍋を囲って止めた。




「なんのつもりすっか~?おれっち腹減ってんすよ」

「何もしてないナンパ野郎がこの至高のカレーを食べる権利はない」



「はっ。低レベルが吠えるじゃないすっか」


そう言いニット帽は眼鏡に殴りかかろうとしたが、その攻撃は…




突如として出現した石の壁に防がれる。そして、部屋には次々とこなごなとなった夢の世界が現れるではないか。




「僕の夢は曖昧だ。ただ好きだけじゃ本物を作り上げることは出来なかった。だってそこには監督が言ったとおりに守る…がいないから」


壊れた建物が隆起していく。




それを見たニット帽は眼鏡の雰囲気に飲まれる。




「でも、必ず作り上げて見せる」


眼鏡がドリームハウスの発動しようとするので…




「ドリームハ…もごもご」


俺は瞬間移動し、口封じの魔法を眼鏡にかけるそれを止めた。そしたら出現しようとした夢の世界は消えたのである。




「建物壊れる」


俺はそう言い、ニット帽を殴り気絶させてこの騒動を収める。




「個別訓練2週間分」


ニット帽を引きずり俺は訓練所に連行する。






_______________



「あはは…連れてかれちゃったね」

「自業自得ですわ」

「そうね」


わたくしたちはナンパ野郎のこれからの受ける地獄のしごきを想像しながらそう言う。



「クマも3日遅れてやってきただけで地獄だったクマ。ギルは2週間も遅れてやってきたクマ。どんなしごきが待ってるか分からないクマ」



「うちも何度打ちのめされたか、わからないんですけど」


クマはとアヤは震えながら、そう言う。



「そうだな」

「そういえば、あと来てないのはデビデビだよね」



「いや…デビは2日前に見たクマ」



「そうなのですか?」


「わ、我もクマさんと見ました。合宿場所前で、ライアン氏に気絶させられ、何処かに連れてかれた現場を」




「マジ?」

「ま、マジです」


デビも地獄の特訓を受けていることを知り、これで全員揃ったことが確認できましたわ。わたくしは合宿に全員参加したことに安堵しながら、食器を片付ける。




「そう言えば、あいつが冷凍庫にアイスあるって言ってなかった?」

「そういえばそうでしたわ」


わたくしは冷凍庫を開いき、アイスを見つける。





「アヤさん、人数分のアイスがありましたわ。そちらに持っていくのを手伝ってくださいまし」


「あいよ〜」


わたくしたちはいろんな種類のアイスを並べる。




「いろんな種類ありますね。取り合いが発生しそうですわ」

「なら、今日トーナメント行ったし勝った順でいいんじゃないかな」



「そうですわね。でも眼鏡さんは参加してませんし…」


「そ、それなら、ダンジョンで眼鏡さんは碌なもの食べてなかったらしいので、一番最初にえ、選んでもらえれば…」



「一位だった陰キャがそう言うならいいんじゃね」

「皆さんいいのですか…?」




「いいわよ。私もあなたのこと見捨ててしまったし」


「テレサさん…分かりました。私はこれにします」



眼鏡さんはブルーベリー味を選んだ。その後は陰キャはチョコ味、ザドは抹茶味。紫苑は焼き芋味、クマさんは、はちみつ味。テレサはカスタード味、わたくしはイチゴ味、ミナトはミント味、アヤは栗味、アンナはバニラ味。



わたくしは弱いですわ。




この二週間、陰キャとザドと紫苑、危機察知を使わない状態でテレサと戦ってほぼ負けてますわ。そしてライアンにはそれは心が折れそうになるくらいぼこぼこにされましたわ。




一番、つらいと思うことは、わたくしが倒れても倒しても、直ぐにアンナの回復魔法が飛んできて復活するため、ずっと戦い続けなくてはならないこと。ライアンが気まぐれにくれる休み時間がない限り、休むことが出来ないんですわ。




そう思いながらアイスを選ぶ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る