第46話自己紹介②
「私のハンター名はミナト。職業は精霊の巫女よ。まぁ水の精霊としか契約していないから水魔法がちょっと強い魔法師くらいの実力しかないけど…」
「そんなことないですよ。ミナトさんは大手ギルド、ブレイブ海賊団をまとめ上げる団長じゃないですか」
「団長じゃなくて船長って言ってよアンナ」
「ふふ」
アンナは口に手をあてて、可憐に笑う。
…似てる。
「ライアン?」
「…。」
アンナの仕草や雰囲気に懐かしさを感じている俺の視線に気づいたアンナは頭を傾けて言う。
「どうかなさいましたか?」
「なんでもない」
「そ、そうですか」
少し見つめすぎたな思いつつ、視線を逸らす。
「では、次は私の番ですね。私のハンター名はアンナと申します。職業は聖女です。この戦争では皆さんのサポートが出来ればいいなと思ってます。では次、アヤさんお願いします」
「…うちのハンター名はアヤ。職業は舞姫以上」
むすっとした表情で和風ギャルは職業を教える。
「次は私よね?私はテレサ。職業は秘密よ」
テレサは口に人差し指をあて、流し目で言う。
「それずるくない?」
「ずるくないわ。次クマさんどうぞ」
「クマのハンター名は、はちみつ大好きクマ。職業は魔拳士。今回監督がご飯をおごってくれる話だから、はちみつカフェではちみつたっぷりパンケーキ、はちみつカフェオレ、はちみつクッキー食べたいクマ」
気が早い奴だ。
「つ、次は…我。い、陰キャです。魔王やって…ます」
前髪は顔を真っ赤にして言う。
そして、次の自己紹介の番はデビだが…絶対自己紹介とかやらないだろうな。
「そいつはリトルデビル。見ての通り癇癪持ちの人形を操る人形師だ」
「ザド、マジ何処行ってたん?」
ザドは穴の開いた天井を指さし言う。
「…外」
和風ギャルはザドの正気を疑う目で見るがザドはそれを気にしない様子。
「俺はザド。職業はベルセルク」
「あのザドが積極的に自己紹介しているだと…クマ」
「本当にザドなの?」
クマと海賊眼帯がザドに近づき顔を覗き込む。
「…うっとしい。最後はそこで縮こまっている眼鏡お前だぞ。さっさとしろ」
「すみません。僕は…なぜここにいるのでしょうか?」
ひょろがりの眼鏡が俺たちに疑問を投げかける。
「はぁ?眼鏡あんた何言ってるわけ?」
「ひっ。殺さないで…」
「…。」
和風ギャルは本当に怯えている眼鏡に戸惑う。
「そう言えば、監督にぼこぼこにされる前に気絶していた人がいたような…まさか」
「す、すみません。僕です」
他の選手は眼鏡の軟弱さを知り、なぜこいつを選手に入れたか俺に視線で訴えかける。
「そこのめが…いえ、健一郎さんはLv.16の設計士ですわ」
「弱くない?」
「えぇ。ものすごく弱いです。この方、アピール試験と技術試験だけしか受けてないですから」
「うっ」
眼鏡は向けられる視線に耐えられなかったらしい。
「よくそれでOKされたね」
「説得するの大変でしたわ」
リリーはげっそりしながら言う。
「でも、それだけのことをする価値があるのよね?」
「そうですわ。眼鏡さん、試験で披露したものを見せてくださいまし」
「すみません。ここでは…」
「あっ。そうでしたわね。森にいかないと出来ませんでしたわね…陰キャさん!あなたの施設の敷地を使わせてもらえませか?」
「?」
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「あははは…嘘でしょ。これでLv.16?魔力量半端なくない?」
俺たちの前には大きく石や土でできた城がそびえる。
「…いえ。僕の魔力量は125です」
「噓です。だってそんな魔力量でこんな立派な建物が作れるはず…」
「それは…僕のスキルのドリームハウスと称号の土地神の加護の効果です」
「…それどんな効果聞いてもいい?」
「ミナトさん!スキルを聞くのはマナー違反ですよ!」
「いえ。いいですよ。僕のスキルハウスは僕自身の夢を具現化します」
眼鏡は石や土でできた城を触れながら言う。
「僕は歴史のある城や古墳、町が好きなんです」
俺たちに振り返り、眼鏡ははにかみながら城への思いを告げる。
「だけどその建物で暮らしてきた人の痕跡も作った人の思いは僕は知りません。だから…」
悔しそうの顔で城を見ながら「土や石などありふれ素材でできた偽物の城しかできないんです」と言う。
「…使われてないからそう思う」
「えっ」
「外敵からの攻撃を防ぐことも暮らす人もいない城…お前はなんのために作る?」
俺は眼鏡を見ながら言う。
「そ、それは…」
「観賞用の城は必要ない」
俺は冷たくそう言い、城の壁を殴り壊す。
「こんなもろい城を作らせるために選らんだんじゃない」
「あ、あ」
眼鏡は膝から崩れ落ちて絶望の表情を顔に浮かべる。
「ひゅーーう。さすが鬼畜監督っす!そこに痺れる」
「さすがにやりすぎでは…」
ニット帽は楽しそうにアンナは悲しそうに言う。
「僕もそんな城いらない」
「デビデビ。もう少しオブラートに包みなよ」
「事実だろう。そんなもろい城作れるやつ、少しは戦えるやつ入れたほうがいい」
…。
他の選手たちは何も言わないが何も言わないことが答えだ。
「はははは…そうですよね僕なんか…」
眼鏡はこの場の空気に耐えられずどこかに行こうとしたがそれをリリーが止める。
「…作ればいいんですわ」
「なにを言って…」
「最初から理想の城を作れる人なんていませんわ」
リリーは眼鏡に向き合いながら言う。
「わたくしは2か月間にライアンの指導の下、今の自分より強くなることを決意しましたわ」
そう言い、リリーは選手たちを見る。
「あなたは今のままでいいですの?自分の理想も体現できずにバカにされたままでいいですの?」
「それは…」
「今から3日後わたくしは堀川総理が提供してくれた場所で強制合宿を開きますわ」
そう言いリリーは資料を選手たちに配る。
「強制と言ってますが参加は自由とします。来たいと思ったときに来ていただいて結構ですわ」
俺たちの取り決めではそんな話はなかったが…。
「他の選手に実力で置いてかれてもわたくしは知りませんが。覚えていてほしいですわ。この場にいる全員が協力する仲間ではなくライバルということを」
煽るなぁ。
「この場はもう解散していただいていいですわ」
リリーはそう言い、背を見せて前に進む。
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