第44話リリーの力


「なぜですの?」

「何が?」

「なぜこの力を使ってはいけないですの?」

「力に意識が飲まれるから」

「うっ。そ、それは…」

リリーは心当たりがあったらしい。



「…それに使い続けてたらリリー死ぬよ」

「…。」

「約束する」

俺は指をリリーの指に絡ませて言う。



「命の危険があるだけ使う」

「…分かりましたわ」


__________________




リリーは咲き誇る。

黒いユリの影がリリーを包み、リリーの存在が変わった。



「カースドウインドウ!!」


ザドの剣は黒い強風に押し出され止まる。そのままリリーは空気を蹴りザドの腹に拳をめり込ませ、


「ぐっ」


ドン!

ザドは天井にぶち当たり天井に穴を開けて飛んでいった。



「嘘だろ…」

口封じの呪いが解けたデビが驚いたように言葉を発する。




「…憎い。憎い、憎い憎い憎い!!」


床に着地したリリーの体は黒いユリが侵食しており、瞳の色も黒く変わっている。



「あれ、やばくなくないっすか」

いつまにか起き上がって俺たちに近づいたニット帽がそう言う。



「あの程度問題ない」


俺は呪いを噴き出しているリリーに向かって歩き出す。この呪いにあたったものはリリーと同じく錯乱状態にし、憎しみを倍増させる。


それにリリーのあの姿の原因は俺だ。あの憎しみは俺のものだ。



俺とリリーは魔法でパスが繋がり、リリーが俺と共鳴できるようになった。



だが俺の憎しみも力もリリーには耐えられない。だから一部の能力が発現出来る代わりに暴走する危険があるので俺はリリーに枷をかした。



正気に戻る呪文を…

「カザニア」

リリーの母の名前だ。



ぴっく。


俺はリリーが反応したのを確認し両手を胸当て子守歌を奏でる。

「ララ~♪… 母は見守りましょう~♪」



ポタポタ。

「おかぁ…さん…」

俺はリリーの抱きしめて頭を撫でる。



俺はリリーの瞳や紋様が戻ったのを確認し、両頬をつまんで引っ張る。

「いだいです…わ」

「罰」

リリーは抵抗せずになすがままにされる。



そんな中、俺たちに近づく足音が響く。

「きれいな歌声ね」

「!?いつの間に」「…テレサ」


「私は戦わないわ。だって勝てるビジョンが浮かばないから」

「別にいい。だいたい分かるから」


リリーは疑問を俺に投げかける。



「なら、なぜ試験を行いましたの?」

「…憂さ晴らし」

「えっ」


選手監督に任命されて早起きまでさせられたのに俺に剣を向けて襲い掛かってきたからむっとなってやった。



それをリリーに言うと…。



「俺っち、とばっちりじゃないすっか!」

ニット帽はチェインで拘束のデビに向かっていき訴える。



それに対してデビは「器小さいんじゃないの」と言う。


「拘束5分追加」

「はぁあ!?ふざけ…もごもご」



「ぷっ。ザマーないっすね」

そうニット帽が言うとデビは人を殺せそうな目でニット帽を睨みつける。



「同じこと言ってますわ」

「そうだね」



キーーー


「遅れたクマ。もう自己紹介始まって…。部屋間違えたクマ」



パタン


クマの着ぐるみがドアを開けたと思ったら中の状況を見て直ぐに扉を閉めるではないか。


「いや全然間違ってないっすから戻って来るっす」

直ぐにニット帽が扉を開けクマを引っ張る。



「…まじクマ?」

「マジっす」

クマはガックリしながら、こちらに歩いてくる。



「本当にここが選手集合場所クマ?」

「そうですわね。ここがイベント参加者の集合場所となっておりますわ」

「…一つ聞いてもいいクマ?」

「何でしょうか」



「なんとなく分かるクマけど…ここで何があったクマ?」

とクマは俺たちに疑問を投げかける。



「…あちらに拘束されている方がこちらにいるライアンに手を出したため、ライアンがこの部屋にいる方々をぼこぼこにしましたの」



「まじクマか…」


クマの着ぐるみで目は見えないが俺のことを「こいつまじか」という目で見ていることは何となくわかる。



「それにしても、なぜ集合時間に遅れましたの?」


「ハンター協会の通知書を受け取り忘れて、さっき支部長に言われて選手になったこと知ったクマ」


「そ、そうですの。分かりましたわ。今回はちゃんと理由があっため不問としますが、次回からは遅れないでくださいまし」



ボソッ

「えっ。自分も遅れてたっすよね?」



ギラッ

「自分、何も知らないっす」



「はぁぁー」

俺はそれを見ながら寝ているメンツに回復魔法をかけ、叩き起こす。



__________________



「で、その人はそんなに強いから選手兼監督なんだ」

「えぇ。そうですわミナトさん」

「ミナトでいいよ。今回、リリーさんがこのチームのキャプテンだからね」

「わたくしのこともリリーさんではなくリリーでいいですわ」

「分かったよ」


そう言ってリリーは俺の紹介などをしていく。



「では、全員揃いましたので自己紹介でもしましょうか」

「?ザドさんがいませんけど…」

「あ、あの方はちょっとお手洗いに言ってますのよ!」



「あいつはそいつに殴り飛ばされてどっか行ったよ(嘲笑)」

デビはリリーを見ながらザドをバカにする発言をとった。



「マジありえないんですけど。もう少しまともな嘘つけないわけ?」

「はぁ?僕が親切に教えてやったのに…これだからバカは嫌いなんだ」


「てめぇ」


和風ギャルが武器に手をかけてデビの戦闘人形も戦闘態勢をとる。一触即発だ。



「まぁまぁ。アヤもデビデビも落ち着きなよ。私たちはこれから同じチームに所属するんだから」


海賊眼帯が収めようとするが逆に矛先は俺たちに向けられる。



「そう、それだよ。なんで僕がこいつらなんかと選手として戦争なんかに出ないといけないわけ?」





そう聞かれた俺はやる気がないデビ、いや選手たちにやる気を出させるためにデビを激怒させることにした。


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