第40話シーフードグラタン


「はぁぁぁあ!?」

「ラグー、うるさい」

「だってライアンが師匠の孫だなんて…」



今の発言からラグーが爺さんの道場の門下生なことが分かった。俺は道場には稽古で行くが、それは門下生がいない早い時間や遅い時間なため今まで合わなかったんだろう。



それに爺さんの道場の門下生は少ない。それに道場は家の隣だが、門下生を家に入れることはない。俺が極端に人に会うのを拒否してるから。



なのに爺さんはラグーを家に入れた。なにか訳があったんだろう。



「雪君。なぜアイリのことをライアンって呼ぶんだ?テレビでもライアンと名乗っていたし…」


ラグーの名前、雪なんだ。



「えっと。アイリさん?のハンター名がライアンなんです」

おっと。ラグーからさん付けで呼ばれるとぞっとする。



「えぇーー。なんか武骨で全然かわいくない!」

「可愛さ求めてない」

「まぁ。ハンターらしい名前じゃないか」


と、兄が未来ねぇを落ち着かせる。



「それにしてもお前、巻き込まれて災難だったな…ってすごいげっそりした顔してるけどお前でもさすがに50階層は疲れるんだな」



俺は机に突っ伏しながら思う。

「テレビ全国放送…注目」



「あぁ~。アイリちゃん、注目されるの嫌いだもんね。もう全国と言わず、世界にその名が広がったんじゃないの?だって階層記録保持者だもんねアイリちゃん!」


「ぐっ」



未来ねぇが喜んでいるのをわきに爺さんと兄の顔は暗い。

「アイリ…階層主を挑む前に入った扉で何かあったか?」

「…。」


「俺は50階層の階層主にあっさり勝ったアイリが49階層で苦戦すると思わない。それに扉から出てきたお前の顔があまりにも…」



「…今は何も言えない」

俺は家族にまだ前世のことを打ち明ける勇気がない。




「でも、必ず話す」

「…分かった。話したくなったら話せ」

そう言って兄は俺の髪をくしゃくしゃにする。



その間、ラグーは「えっ、僕ここにいていいの?」みたいな発言をしていた。



「それにしても、アイリに友達ができるとは…これは赤飯じゃな」

「友達?誰…?」

「ん?雪君に決まっておるじゃろ。素顔を見せてこんなにも話せてるんじゃからそうじゃろ」



そうかも。

銀翼メンバーとは一週間も共に戦った仲だからそうかも。




ボソッ

「えっ?友達の基準なんか違う」となんか聞こえた気がする。



「ん。友達」


俺が思わず微笑をこぼしながら言うとラグーは顔を赤くして「そ、そうだな。僕たちは友達だ」と言う。



「おやおや」

なんか未来ねぇが俺たちの顔を交互に見てにやにやし始める。



「!?お、俺は許さんからな!」

兄は、逆に顔をこわばらせながらラグーに向けて言う。兄は何を言ってるのか分からないので無視する。



「あっ。そうだ雪くん!家で夕ご飯食べていかない?」

「なっ。ダメダメだ」

「ちょっと、陽くんは黙ってて」


未来ねぇが兄を見たことないくらい冷たい表情で言う。冷たく言われた兄は動揺して黙ってしまった。



「お兄さんが嫌がっているから…」

「おに…」

兄が言葉を発しようとすると、未来ねぇが割り込んで言う。


「こっちの人は気にしなくていいよ。久しぶりに家族以外の人とご飯食べるから緊張しているみたい。それにアイリちゃんが雪くんのために手料理を振る舞いたいって!」



「俺、そんこと言ってない…」

未来ねぇが急に俺を巻き込みだした。



「ライアン料理できるのか?」

ラグーは頭を傾けて疑問を発する。



「アイリちゃんの作るご飯は美味しいよ!だから食べてみて」


「そうだな雪くんも食べていくといいじゃろう」

「師匠…分かりました。ご相伴にあずかります」




「なんか、ラグー俺と話しているときと言葉遣い違う」

「き、気のせいだ」

「ふーん」





俺はさっそく夕飯を作るために台所に立つ。牛乳が賞味期限近いから使いたいな。


あっそうだ。


俺は冷凍庫から冷凍のシーフードミックスをお皿に移し、レンジで解凍する。レンジで解凍している間、玉ねぎをみじん切りにし、マカロニを鍋で表記時間まで茹でる。



それから、フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、玉ねぎを入れてしんなりとするまで炒め、シーフードミックスを入れて色が変わるまで炒めて取り出す。



フライパンにバターを入れて弱火で熱し、溶けたら薄力粉を適量加えて粉っぽさがなくなるまで炒める。牛乳を少しずつ加えて、塩、こしょう、コンソメを加えて中火混ぜながらとろみをつける。とろみがついたらマカロニをその中に加える。



耐熱容器にホワイトソースを入れて粉チーズをふり、レンジで温める。



そうすることで本格的シーフードグラタンが完成だ。




あとは、トースターで焼いたフランスパンとサラダを皿に盛りつけたら今日の夕飯のできあがり。




「おいしそ~。さすがアイリちゃん!」

俺はそれに対して、「簡素」と答える。



「いや。アイリの作るグラタンはいつも美味しからな。じゃあ食べるか」



「「「「いただきます」」」」


「い、いただきます」

ラグーも遅れながら食べ始める。


「!?うまい」


俺もラグーの反応を確認して食べ始める。



______________



ガラーー。



「ご飯うまかった。ありがと」

俺はラグーに玄関前でそう言われる。



「よかった」

そう、俺がそう言うとラグーは振りかえずに家を後にする。




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