第36話50階層



「はぁはぁ」


〖試練は終了となります。試練者は10秒後に転送されます〗


最後にあいつらを殴らなきゃ気が済まさない。そう思い、突き動かされるように俺は立ち上がり歩き出す。


「…ぁ」


俺は路地裏を抜け出すと噴水前で話しているあいつらを見つける。



「あ、ライ!」

と俺に気づいたように手を振るあいつらに遠くから俺は手を伸ばすがその手は最後まであいつらに届くことなく、現実世界に俺は戻される。



_______________



「ちょっと大丈夫ですの!?この傷」

俺は現実世界でリリーが慌てて俺に回復魔法をかけているのを見て、意識を失った。




「ん」

ここはどこだ。


「あっ。目覚めましたのね」


俺の顔上からリリーが覗き込むように言う。この状態はいわゆる膝枕というものか。



「…なにしてる」

「膝枕ですわ。この地べた硬くて寝ずらいですもの」



「…。」

俺は何も言わず起き上がる。


モンスターの気配がしないということはここはセーフティーゾーンか。



「ぐーー」

俺は顔を真っ赤にしてお腹を鳴らして、言い訳をするリリーを見る。



「ち、違うのですわ。ただ、ライアンのリュックの中に入っている物はすべて食材で調理ができませんでしたの」



こいつ。俺のリュックの中をあさったのに、料理が出来なくてお腹を空かせていたのか。だがライターの使い方はなんとなく分かったのか焚火を起こすことには成功している。



俺は缶詰の中身をフライパンで熱を通すように温めて、皿に移す。

「五目飯」

「五目飯?」

「米に味付けたもの」

五目飯の缶詰は通販しか、売ってないあまり個数がないものだ。



「はふっはふっ」

リリーはそれに口を付けると感想を言う。

「なにか変わった味ですのね。健康的な味というのかしら」



リリーの口には日本の炊き込みご飯の文化は通用しないらしい。



「ふぅーー。落ち着きますわ」

俺たちは食後の緑茶を飲んでいる。リリーもすっかり緑茶の味の虜だ。



「リリー、休憩終了」

「…分かりましたわ。次は何をしますの?」

「この先に行く」

そう言って俺は、目の前にそびえ立つ大きな扉を見る。


「もうですの!?わたくしまだLv.35しかないのですけど」

ん?リリーのレベルが上がっている。



「あら?もう一体召喚できるのではなくて!」

「召喚しなくていい」

「なぜですの?」

「Lv.1。居ても邪魔…肉壁にしかならない」

「うっ。それなら上の階でパワーレベリング?とやらをやればいいじゃないですの!」

「やらない」



俺は無性に今、家族に会いたいのだ。だから、寄り道はしない。



「召喚する」

「分かりましたわ」

そう言ってリリーが召喚獣を呼び出したのを確認してから俺は扉に触れる。


「キー」

と扉が音を立てて、開く。





扉の先には、円形のデカい部屋には赤色のドラゴンがいた。色からして火魔法を使ってきそうだな。


「Gyaoooooo!」


「う、うるさいですの!」


耳を抑えてるところ悪いがドラゴンが空に飛び俺たちに向かって火炎弾を飛ばしてくる。


「リリー散開!」


すぐにリリーは召喚獣の背に乗って次々と襲い掛かる火炎弾を避けるが…。


「追尾してきますの!」


そうなのだ。ドラゴンは壁や地面にあたらないよう避ける俺たちに向けて火炎弾を操る。


俺は避け続けることも、火炎弾を切ることも魔法で当てて、消滅さることは出来るがリリーはどうなのだろうとリリーの方を見ると。



なんと、リリーは火炎弾を避けながらドラゴンに盲目の呪いをかけ、ルーに光魔法の攻撃を指示し、攻撃をしているではないか。


もうそこにはモンスター相手に怯える少女はいない。強者相手に食らいつく戦士がそこにはいた。



これは…

「負けてられない」


盲目は5秒くらいしか効果は発揮しなかったが、火炎弾は制御を失い、あらぬところに飛んで行った。



そのため、火炎弾を対処しなくてよくなった俺は結界魔法を使用し、空中に結界の足場を作り盲目の敵に近づき、気を纏った刀で敵の片翼を切り飛ばす。



敵は片翼を失っため、飛行が困難になり落下する。落下した敵は片翼を失った痛みでそれはそれは暴れ出した。



俺たちに向かってしっぽを振り回してくるので俺はジャンプして一旦距離を開ける。



リリーは召喚獣に乗って俺に近づいてくる。

「どうしますの?近づけなくなりましたけど」



非難した目で見てくるので問題ないと言う。

「遠距離から倒す」

「それがいいですわね」

「リリー、召喚獣に魔法を打たせる」

「分かりましたわ」



俺は今回、魔法でリリーのサポートをするつもりだ。俺は敵に向かって防御力低下と呪術をかける。


すると、魔法をかけられたことに気づいたドラゴンは口から火炎放射器のようなものを俺に放ってくるので俺も風魔法の空気砲で対抗する。


俺と敵の魔法同士の衝突は互角だ。だが、俺には有り余る魔力がある。そう思い、魔力でごり押し、炎を押しのけ敵の体に空気砲を命中させる。



敵は空気法をくらい壁にめり込むが、まだ息はある。



「リリー!」

リリーと召喚獣の魔力が混ざりあい、リリーと召喚獣は光り輝く。


「ライトニングシャワー!」


空中に出現した光の矢が次々と敵に向かって放たれたが、

「Gyaoooooo!」

それでもドラゴンは倒れず、命を振り絞り、リリーに迫る。



リリーは乗っていた召喚獣から下りて、ウルフ型の召喚獣の背を押す。ウルフ型の召喚獣はリリーが乗っていた時よりもスピードを上げて、敵向かって駆けていった。



「Gyaooooo!」

「ガウッ!!」


ドラゴンは鋭い爪をウルフ型の召喚獣に振りかざすが、ウルフはそれを敵に向かって飛び、空中で避ける。そしてその勢いのまま、敵の喉元に食らいつく。



満身創痍だったドラゴンはその攻撃を受け、灰となって消え、

「ワオォォォォン」

中央には勝者が勝鬨を上げるのであった。

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