第35話大切な人達
なぜ俺はこのくだらない光景を見せられているのだろう。
なぜ俺はこの試練にもう一度挑んだろう。一度は逃げたというのに。
リリーを試練を受けさせた以上、俺も試練を受けなければ俺のプライドが許さないからか?
違う。俺はただ…
「ライ」
「「ライアン」」
目の前にいるこいつらを忘れたくないんだ。
憎い。憎い。憎い。憎い。
俺を殺したくせに俺を裏切ったくせに、まだ俺の中にこいつらが居続ける。
俺は前世を断ち切ったと思ってが、断ち切れてなかった。
「消えてくれ、俺の前からきえろ!」
そう言っても、過去の記憶だ。
俺は刀をもって、こいつらを斬ろうと刀を振り下ろす。だが、刀は寸前で止められる。
「どうして…どうして止めるんだ!」
前世の俺がパーティーメンバーの前に立ち、俺の刀を受け止める。
そう、この試練の敵は前世の俺自身。
「!?」
俺はライアンに蹴られ、吹き飛ばされる。
「がっは」
建物を巻き込みながら、俺はパーティーメンバーがいる位置から離され止まった。
俺は先ほどの攻撃の衝撃で口から血を流す。
どんな蹴りの威力してるんだと思いながら回復魔法を使うが、ライアンが気を使い、俺に向かって斬撃を飛ばすのを感知し、すぐに回復魔法を中断し避ける。
俺とライアンの間にあった建物は横に切られ倒壊したため、砂埃がおき、視界が悪くなるが、俺は感知があるために俺に近づく気配を感じ取ることができた。
砂埃の中、俺の後ろからに剣を振り上げるライアンの殺気を感じ、後ろに向けて火球を飛ばす。
だが、それは簡単に避けられ俺の首にかすかに傷をつけられてしまう。
「くっ」
押されてばかりではいけないと、俺もライアンに攻撃を仕掛けるが剣で受け止められる。そのまま力で刀を弾かれ、俺は体勢を崩してしまった。
そんな俺に大剣が迫るが俺は瞬時に結界魔法を使用し、時間を稼ごうと動く。
が一瞬で結界は破られてしまい時間を稼げずに俺は肩に深い傷を負ったのだ。
これでは、両手で刀を振ることが不可能だろう。刀をもって俺を斬ること難しい。
俺は前世の俺に向かって攻撃魔法を打ち続け回復魔法をかける。だが、十字に斬撃を飛ばされ、斬撃が間近に迫まりくる。
それを目にした俺は一か八かで全力で転移魔法を使用することを決断することにした。
その結果、賭けには俺が勝った。
…俺は転移に成功したのだ。だが、すぐに俺がやってくるだろう。
それに、俺は転移の代償に魔力がほとんど空になり、回復魔法がかけられない状態になってしまった。俺は肩を抑え、建物に寄りかかる。
「はぁ、はぁ」
俺はこんなにも弱くなったのか。俺は爺さんの下で修行し、強くなった気でいたが、今のこの体では勝てない。
「前世の俺が今世の俺を殺すのか…皮肉だな」
俺は前世を打ち勝つことすら、超えることも出来ないんだな。
「ごめん爺さん…」
俺は目をつぶり、ここで死ぬことを爺さんと兄、未来ねぇに謝る。
そんな俺は、意識を失ったのか爺さんと今世の俺が話している場面を見る。
「アイリ約束せい、簡単に生を諦めないことを」
俺は見る。兄さんが必死に俺を説得しているの姿を。
「アイリ、ダンジョンに潜るのはもうやめろ!俺はもう家族は失いたくないんだ!」
俺は見る。未来ねぇが幼いころの俺を抱きしめている姿を。
「アイリスの花言葉は希望、信じる心、知恵、吉報。アイリちゃんにはきっと幸福の未来があるね!」
俺は見る。銀翼のパーティーメンバーと俺が楽しそうに食事をしている姿を。
「ライアン!それ僕が楽しみに残してた肉だったんぞ!」
「約束。朝食譲る」
「ぐぬぬぬ」
「あはは。しょうがないよ、ラグー」
「負けたラグーが悪いね~」
「そうだな」
俺は見る。病室で俺が記憶にある母よりいくらか若い母と父と兄と思われる幼児が話していることを。
「ままー。この子はげんきに生まれてきてくれる?」
「陽翔…。」
なんの話をしているんだ?
兄と思われる幼児は泣きながら言葉を発する。
「ランは僕にかおをみせてくれなかった…僕とあうのがいやだったんだ。」
「…。」
「それは違うぞ。陽翔。ただランはママを守りたかったんだ」
「そうなの?」
「ランはママを命がけで守ったんだ。だから、自分を責めるんじゃないぞ」
「ぐすっ。分かった」
兄は母のお腹に近づき願う。
「げんきで生まれて、僕にかおをみせてねアイリス」
__________________
こつ、こつ。
俺は大切な人達を守るために少女に向かって刃を振りかざす。
「がはっ」
だが、俺は腹部に次の瞬間痛みを感じた。なにが起こったんだそう思い腹部を見ると、緑色の刃が俺を貫いていた。
目の前には仲間に手をかけようとした少女がいるというのに、どうやって俺に気配を悟られず後ろから刺したんだ。
そう思って刀を引き抜くと、刀の柄の部分に黒い布のようなものが巻きついていた。布が刀の柄から滑り落ちると、緑色の刃をした刀は存在感を放つ。
落ちた布は今、目の前の少女が羽織っている外套と同じ色だった。
「…。」
「こんな小細工で勝っても全然うれしくない」
俺は静かに言葉を発した少女を見る。
「それでも、生きたかった」
目の前の少女は、俺を睨みつける。
「生きて、もう一度みんなに…私を大切に思ってくれる人達に会いたかった」
俺はその言葉を聞き、満足したようで体が崩れていく。
今のこいつの状態では、俺の仲間のところには時間内にはいけないだろう。仲間を守れたことと、俺が大切に思った人達に巡り合えたことをうれしく思いながら俺は消えて…
「ありがとう。あいつらを守ってくれて」
最後にそんな言葉を聞こえた気がした。
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