第34話試練の間



わたくしは呆然とその場に居続けると微かに声が聞こえた。

「…ぃ…」



お母様が息絶えたいに何かを言っているのを見て、わたくしは倒れているお母様に近づき、声を聞く。



「愛して…ますわ…リリー」

「!?」



「い…生きて…し…しあ…わせに…」

そう言い、お母様の目から光が失われる。



誰が誰を愛してますの?


「…。」


分かっている。お母様が発した言葉で誰を愛したなんて。それでもわたくしは認められない。認めてしまえば…



そう考えながら瞬きをすると、お母様はいなくなりわたくしは白い空間にカマキリのモンスターとそこにいた。


カマキリのモンスターはわたくしが見えてるかのように刃をわたくしに振うがわたくしはそれを横に転がり避ける。そして顔を上げてお母様の殺した敵を見たのだ。


「よくも…よくも」


わたくしはお母様が亡くなって心にぽっかり穴が開いた感覚はあったが、それ以上の感情はなかった。だが、今はわたくし自身とカマキリのモンスターに怒りを憎しみを覚える。



「殺したなぁぁ!!」


唯一、わたくしを愛してくれたお母様を見殺しにした自身も殺したカマキリも許さない…許すことができない。そう思いわたくしは召喚獣を呼ぶ。



お母様に振るわれた刃は早かった。まずは、カマキリのモンスターに速度低下させる魔法をかける。



わたくしが先ほどの攻撃を避けられたのは危機察知で事前に分かったからだ。また、カマキリは瞬時にわたくしに近づき刃を振るうが危機察知が教えてくれる攻撃の軌道を召喚したポチにまたがりながら避ける。



腕の刃はカマキリの移動速度より早いので、カマキリの刃が届かない距離ぐらい距離を開けながら、カマキリの周りをポチに走らせる。



そして、わたくしはルーの視覚を共有し、カマキリの届かない位置で光魔法を打ち続ける。時折カマキリはジャンプしてルーに攻撃をあてようとするので危機察知でルーがあたりそうな攻撃をルーに指示を送りながら避けさせる。



この戦いで分かったことは召喚獣とわたくしにはなにか太いパスが繋がっているため、召喚獣はわたくしの危機察知スキルで攻撃軌道が分かることだ。


そのため自然と指示をしなくてもルーもポチも避けてくれるようになってくれた。



これは、もしやわたくしが元から持っていたスキル、共鳴ですの?




わたくしはルーから流れてくる力を感じながら魔法を発動させる。


「ライトニングセイバー!」


わたくしが本来使えるはずもない魔法。光魔法をありったけこめの魔力をこめて放つ。



その攻撃をくらったカマキリのモンスターは光の剣が胸に貫かれ、カマキリは砂となって消えていった。



「はぁはぁ」

頭が割れるように痛い。わたくしは視界がせばまっていく感覚を感じながら幻覚を見る。



「リリー」

うっすらと光るお母様がのわたくしの目の前にいるではないか。


「わたくしはリリーが元気で生きてくれれば十分です」

「…。」

「どんな姿となってもわたくしはあなたを愛しつづけます」


「お…かぁさ…ま」

涙で視界がぼやける。



〖試練は終了となります。試練者は10秒後に転送されます〗



もう少しだけ、お母様の顔を姿をこの目に焼き付けたい。


「いってらしゃい。リリー」

「ぐっす、ぐっす」

最後のお別れは笑顔でいたい。わたくしは無理やり口角を上げ、お母様に向かって言う。



「行ってきます。お母様」






俺はリリーが試練の間に入ったのを確認しもう一度、俺も扉の中に入る。



リリーが5日間サバイバルしている間、俺はこの中にいた。だが、俺は試練に打ち勝つことは出来ず、爺さんから貰った脱出用の転移羽で抜け出したのが真実だ。



「おーい!ライ、早くこっち来いよ!」

「そうですよ!終わってしまいますよ!」

「ライアンー!」



俺は山の頂上で手を振っているパーティーメンバー見る。パーティーメンバーは夕日の光で姿が見えるが、まだ山を登っている前世の俺は木の陰に隠されて見えてない。



結局、俺が登りきった頃には夕日は見えなくなっていた。パーティーメンバーは、どんな顔で俺を見ているのは分からないが、俺と一緒に夕日を見れなかったことを残念がっていた。



「せっかく、願いが叶う夕日を見にこんな僻地まで来たのに…お前がのんきに歩くから終わっちまったじゃないか!」


「お前たちは見れただろう」

「みんなで見なきゃ意味ねーよ!」

そう言ってリオンは俺を責め続ける。


「今回は私も庇護できないな」

「…ユリウス」



「そうですよ。昨日の夜ちゃんと約束しましたよねライアン」

俺は、ビアに助けを求めるように視線を送るがビアは助けてくれなかった逆にこいつらと一緒に俺を責める。



しょうがないので俺は頭をかきながら叶わなかった約束する。

「まぁ、なんだ。この旅が終わって落ち着いたら、また見にくればいいだろう」


「絶対だぞ」

「分かった。分かった」

「約束破ったら、お前を呪ってやるからな」

「リオン。もしライアンを呪ったら私が許しませんから」

「ひ、比喩だろう。そんなマジになるのよ」



そうして、俺たちは山を下りて冒険を続ける。



いろんなことがあった。海でユリウスが溺れかけたり、リオンが娼婦と寝て身ぐるみをはがされたり、ビアがナンパされて俺が止めに入って、ナンパを半殺しにしかけたり…くだらないけど充実した日々だった。



そんな日々を送り俺たちは6年後、魔王を打ち破り英雄となった。


栄光が約束されたはずだった。だが、俺は仲間の手によって殺される。



もう過去だ。もうどうすることもできない。この光景を何回も見せられるたび、俺の仲間だった者たちへの憎しみは膨大に膨れ上がる。


なのに俺の試練は…。



 ______〖大切な人達と向き合え〗______

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