第31話49階層


リリーは召喚獣を呼び出すと、闇魔法や呪魔法をモグラにかける。



闇魔法は防御力抵抗を下げるもの、呪魔法はかかった対象を立ち上がりにくくするものだが、込める魔力が少なかったため、全然モグラは立ち続けているし、防御力も誤差だなと思いながらリリーに向かっていった蔦を切る。



まぁ。魔力の量は人によって量が違うからな。魔力量が100ぐらい有ればいいほうだから、魔力量96あるリリーはいいスタートラインに立ててるだろう。



ん?俺の最初の魔力量が知りたい?魔力量1000近くあったな。通常の10倍だ。



「リリー、鳥に魔法を打たす準備する」

「分かりましたわ」

「俺が合図送ったら打たせる」


俺は言いたいことを言ってモグラに向かって走り出す。モグラは蔦を切りながら自身に向かって来ている俺を見て、蔦を密集させて俺の体より太い蔦をいくつも作り上げる。



それを俺を潰すかのように上から下に振り下ろすので避ける。



「キャー」

だがリリーは巻き込まれるように下敷きになるが「あれ?わたくし生きてますわ」とぴんぴんしている。



事前に俺がリリーの周りに結界魔法を張っといたのでモンスターに攻撃が通ることないだろう。



俺はモグラの背中に向かい、火魔法をありったけ打ち続ける。すると、花畑が燃えつくされただれた皮膚が露出する。


こいつは…。


俺は直ぐにリリーの元に向かう。リリーは俺がダッシュで戻ってきていることに疑問を抱く。


「えっなんですの?」


「真後ろに魔法打て!!」

「えっえ、え」とリリーが振り返る。



すると、真後ろにはスライムくらいの蔦の塊のモンスターが空中にいるではないか。だがリリーにそれ以上近づけないのか、結界を壊そうと、蔦がうねうねしている。



「イヤーーー、こっちに来ないで!!」


リリーが悲鳴を上げると、その主人を守るため召喚獣は光魔法を使う。使用した魔法はインパクトと呼ばれる魔法で発動すると衝撃と光が起こる魔法だ。



その攻撃を受けた蔦のモンスターは弾け、灰となる。



「あれは一体なんでしたの…」

リリーは座り込みながらそう言う。



「本体」

「えっ?」

「モグラ寄生されてた」


そうなのだ。モグラの背中の花畑を焼き尽くすと腐った背中の中に大量の蔦が張っていたのだ。


モグラのモンスターは灰になっていないから生きたまま蔦のモンスターに操られていたのだろう。


蔦のモンスターを倒すとモグラのモンスターも灰になり、消えていく。


「…なんとむごいことを」

リリーはその事実を知ると口に手をあて、気持ち悪そうにする。


ダンジョンでは強者だけが生きる。弱者に尊厳もくそもない。



それにしても、今のモンスター49階層なのに低レベルなリリーの召喚獣でも倒せるんだな。まぁ、今のモンスターは強さのベクトルが違うのだろう。



今のモンスターならリリーでも倒せることが分かったのでリリーに相手させるか。



サモナーは召喚したモンスターとパーティーを組むため経験値が自分と召喚獣に分散されるため、リリーは職業柄レベルが上がりづらい。


だが、この階層に要るモンスターなら倒せば経験値ばんばん入ってレベルも早く上がるからどんどんリリーに倒させよう。



実戦経験あるのみ。Lv.30になったら結界魔法を解いて前線で戦ってもらうつもりだ。そのぐらいになれば身体能力もHPも増えて、一撃くらい攻撃貰っても死なないだろう。






そうして花畑を見つけるたび俺は攻撃し、モンスターを相手にする。俺がモグラのモンスターを相手する間リリーは悲鳴を上げながら蔦のモンスターを攻撃すること6回目。



やっと、リリーはLv.20になり、3体目のモンスターウルフ型を召喚することとなった。2体目ではリリーは可愛いと理由でホーンラビットを選ぼうとしてたが俺は止めた。



なぜなら、2体目のモンスターはスライムだと相場が決まっている。スライムは進化すると水魔法を使えるようになるからだ。



サモナーはモンスターを召喚するとパーティー枠を埋ってしまうため基本、人とパーティーを組まないソロだ。そのため、水魔法を適性に持っていない場合はスライムを選んで水をダンジョンで確保する。


これをリリーに伝えると納得して2体目のモンスターをスライムにしていた。



で3体目のモンスターが召喚され、戦力増加が期待されたがこいつは役に立たない。



花の匂いを辿って蔦モンスターがいる位置がわかると思ったのにウルフは花の匂いを嫌がるわ嫌がるわで、蔦のモンスターから遠い場所に案内する。



俺はこいつ殺してやろうかと思ったが、ウルフが案内したところには土台と宝箱がある場所だった。それも、その宝箱は装飾が豪華で中に入っているものはさぞ、いいものだろうと感じさせるほど。



「宝箱ですわよ!」


リリーはきゃっきゃとはしゃいで宝箱を開けようと近づいてそれに触れると宝箱は開き、リリーの上半身は食べる。



そう、こいつはミミックだ。俺は感知でこいつがモンスターだと知っていた。



まぁ、感知以外でも分かっていたけど。プレイヤーの間では装飾が豪華な宝箱はミミックだと知られているため、それらには触わるな危険とされている。



「た、助けてください!急に視界が暗くなりましたの!」と、リリーは元気くくぐもった声で俺に助けを求める。



ミミックは消化に時間がかかるため、それまでに脱出すれば死なない。


「それになんかべたべたして気持ち悪いのですの!!」

わーわー。



俺はしょうがないと思いながら、リリーの足をつかみ引き抜く。


すると、リリーは泣きだす。

「ぐすぐす。わたくし汚されていしまいましたの」



なんと大げさに言う。



「リリー、あれ倒す」

「もうちょっと!わたくしの心配をしてくれていいのではなくて!」


「早く」

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