第21話地主対策


「なんか、あれから紫苑ピリピリしてるね」

「しょうがないじゃん。大地も怒っていたのに今は落ち着いてるんだね~」



「1時から僕たちの番だしそっちに集中しないといけないと思って」


「そうだね~。紫苑、もし昼間地主が出たとしても、あーし達も戦闘に参加するんだから今からそんなに気、張ってないほうがいいよ」


「…分かってる」

紫苑は全然わかってないように気がたった返事をする。



その様子を見ていた俺は今まで銀翼の騎士団にお世話になったお礼だと思い少し嘘混ぜながら言う。


「地主出現前、感知できる」

「えっ。それまじ」

俺は頷く。

「俺のスキル」



紫苑ばッと顔を上げて、俺を見つめる。

「それが本当なら事前にプレイヤー初心者を下がらせることができる」


「でも、ライアンよかったの?スキルはプレイヤーにとってあんまり知られたくないでしょ」


そう、アドバンテージがなくなってしまうから持っているスキルは言わないのが主流だ。



「別にばれても構わない」

そう言うと紫苑の雰囲気が若干和らぐ。

「ありがとう」



そんな様子を面白くなさそうにラグーは見ていたが俺の視線に気づくとそっぽをむく。



「あと、地主の特徴を教える」

そう言って俺は地主のスキル。土壁、地震、とっしんの予備動作を徹底的に教え込む。



「うわー。下層の階層主の攻略内容は高く売られているのにライアンふっとぱら~」


ギャルは俺を持ち上げるが逆にラグーは「何で知ってんだ?」と疑問符を浮かべていた。



それには俺は指を口に当てて「秘密」と答えるとラグーは顔を真っ赤にしてギャルにからかわれていた。



俺は感知の範囲を拡大し、ダンジョンの中まで範囲を広げる。これをすると、膨大な情報量で後から寝込むがスタンピードがあと2日なら問題ないだろう。



「いた」


地主は5~4階層を歩き回っており、モンスターを次々と踏み潰すしていた。この勢いだと地上に現れるのは朝と昼間の間だと考えられる。



なら、今回の夜は銀翼のメンバーには体力や魔力を温存してもらわないといけないな。


今回、最も頑張ってもらいたいのはラグーなのだから。それに伴い、支部長には協力してもらおう。



ラグーは魔力温存のため、深夜の戦いには参加しない。

そのことにラグーは初めはもう反対していたが、なんとか紫苑が説得してもらい了承を得た。



支部長にもラグーが深夜の戦いに参戦しないことは了承を得ている。もし文句を言われたとしても「昨夜の猛攻を防ぐために限界まで魔力を使っため」と答えるだけだ。



そう思いながらモンスターを切りながら、ギャルと大地少年に回復魔法と防御力上昇の付与魔法をかける。俺が一度に魔法が使えるのは2つまでなどで今状況に適している魔法を使う。



それにしてもこれを機に思ったが魔法の練習をちゃんとしたほうがいいなと思った。独学で適当に発動しているから範囲の指定や効果がバラバラになって、発動された人がその感覚に困るから。



あぁ~。いい先生いないかな?紫苑に相談してみよう。



「ゲゲッ」

ゴブリンキングとゴブリンジャネラルとその他が出てきたので、モンスターの数が数だからうっとうしいと思いながら、キングの周りにいる雑魚を倒す。



ゴブリンキングは大地少年と紫苑が連携して仕留めていた。

大地少年にギャルが補助魔法をかけ、大地少年がキングの攻撃を受け止め、そのすきに紫苑がダメージを与えてる。それを繰り返し仕留めたという感じだ。



「魔力を温存しながら戦うからいつもより倒すのに時間がかかってしまったな」と、汗をぬぐいながら紫苑が言う。


「しょーがないじゃん。本番はこれからなんだから」

「そうだね」



そうこうしているうちに交代時間となり俺たちは交代する。テントに向かうとむすっとした表情のラグーが俺たちを出迎えた。



「ただいま~。ラグー大人しく待ってて偉かったね」

ギャルがそう言って煽るとラグーは拗ねた。



____________________




「うわー。見てよテレビ局の人がいるんだけど」


そうなのだ。10人くらいのテレビ局の人たちがテントの周りをうろついていたのだ。



「早く支部長に会いに行こう」そう言って、大地少年はギャルの背中を押す。



「やっと来たか」

「で、例のものは?」


紫苑は支部長に冷たく言う。まぁ昨夜あんなことがあったばかりで仲良くご対面とはならないか。



「準備できている。柳橋」


秘書が貴重なものが入ってそうな箱から水色の液体が入った瓶を取り出し、ラグーに渡す。



「MPポーション6本だ。至急、用意できたのはそれだけだ」


MPポーションは稀に低確率でモンスターが落とすか、宝箱からしか手に入らない貴重品だ。



「ちょっと少なくなーい?」

ギャルが抗議を言うが俺も肯定する。


「大手ギルドがスタンピードが始まる前に買占めして量が少ないんだ。それと闇魔法の威力増強の杖だ有効活用しろよ」


と、深みのある紫色の宝玉が特徴的な杖を渡す。



「ありがと」

ラグーはMPポーションよりこちらのほうが嬉しそうに受け取る。



「それにしてもなんで、テレビ局のやつらが現地入りしてんだよ。断れよ」



「ここを含めない全国で発生している5か所のスタンピードが発生しているところが条件付きで撮影OKしたんだ。ここも許可しないわけにはいかない。それに誓約書でスタンピードで現場のスタッフが亡くなったとしてもこちらを責めないとしている」



「頭おかしいんじゃねぇーの。自分の命よりネタが大切なんて」

と、言い合いをしていたが俺が地主が一階層に到達したのを感知したので「地主来る」と言うと直ぐに戦場に行く準備をする。



突如としてスタンピードが発生した時より大きな地響きが起きた。

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