第22話地主


「昼のプレイヤーは下がらせて、夜の連中を叩き起こした。防衛ラインも第2まで下げさせてある」


そう言って支部長は防具を身に着けながら俺たちの横に立つ。



俺たちの後ろには多くのハンターがいる。今は支部長がハンターに地主のイノシシがこちらに向かってくることを説明している。



「地主っていったら40階層の階層主だろ勝てんのかそれ」

「いや、こっちには数がある。数で押し込めば何とか」


ざわざわ。



へー。思ったより好戦的な意見があるな。これなら前もって言っても逃げる人は少なかったんじゃないか。


「聞け!作戦は今からいう通りだ」

そう言って作戦内容を伝えると反発が起きる。



「なんで、俺たちが闇魔法使いなんかに命を預ける真似しなくちゃいけないんだよ」

「そうだ。そうだ」



「じゃあなんだ?地主の攻撃を止められる奴がいんのか?」


支部長が凄むと、反発していたやつは黙り込む。それに乗っかるようにラグーの助けられてきた人達が追い打ちをかける。



「ラグーくんの闇魔法なめているわけ?」


「ラグーは今回の戦い、自分のパーティーで戦う相手だけではなく、全体で魔法かけてた。そのおかげで俺たちのパーティーは負担が減って、この5日乗り越えられた言うのに…」



と反発していた人のパーティーメンバーはラグーの魔法に助けられたことを理解している人がいてその反発したパーティーメンバーを糾弾する。



「プギーーーーー!!」

そんな話をしていると地主がこちらに向かって走り出していた。



「ここを抜かれれば地主は町に被害を出すだろう。今、なにがこの状況に最良か考えて行動しろ!盾役前に出ろ。逃げることは許さん。逃げたやつはハンター資格剝奪だ!」



「「「「「横暴だ!!!」」」」」

そう言いながら盾役は前に出る。



「頼むよ。ラグー」

その中には大地少年もいた。



俺はラグーを見る。ラグーは杖に魔力を注ぎ込み、宝玉が大量の魔力で深い吸い込まれそうな紫の光を放つ。盾役と地主が衝突する瞬間を見極め、ラグーはその魔法を開放する。



「ゼログラビティー!」

地主に紫のオーラがまとう。その瞬間、盾役と地主が衝突するが地主の突進を受けても盾役は吹き飛ばされず、逆に地主を押し返す勢いだ。



「「「おー」」」

何人かの魔法使いは感心した様子だが攻撃はしないのかと思った?



「魔法使い部隊働け!魔法攻撃はどうした!?」と良識のある人が言うと、慌てて魔法を使い始める。だが土鎧の硬い装甲に弾かれて大したダメージは入らない。



そして一気に魔力を使い果たしたラグーが瓶を開けてMPポーションをがぶ飲みし、次の魔法を準備をする。


また、杖に魔力が集まり光を放っていると膨大な魔力を感じたんだろう地主が地面から土の針をラグーに向けて放った。



俺はそれをラグーの前に立って弾く。他にもラグーを狙おうとしてきたモンスターを切り刻んでいく。そうこしているうちにまた、魔力が杖にたまったようで次の魔法を放たれた。



それが地主にかかると先ほど魔法のダメージがたいして入ってなかったのに目に見えて入りはじめる。今、ラグーが使った闇魔法は魔法に対しての抵抗力下げる魔法だ。



地主の土壁を完全に崩すことは出来なかったが一部皮膚を露出することが出来たのでそこに魔法を集中的にぶっぱなしている。俺も一応魔法を打ち込んでおく。



あと、魔法適正オールの俺も闇魔法を使えるじゃないかと思うかと思うが、魔法制御力がなく、もしも前にいる盾役にぶつけるようなら俺に非難が殺到するだろう。



そうしているうちに地主が怒りだしたように前足をあげる。これは地震を発生させる地主のモーションだ。


「下がれ!踏みつぶされるぞ!」


盾役が下がっていくが一部、装備が重くて逃げきれない人がいた。そいつは先ほど闇魔導士を馬鹿にしていたやつで足をもつれさせ転んでいた。



「…チェイン」

ラグーは自分の判断でここで使うはずがない魔力を使い、魔力収縮を無理やり行ったため、よろける。



俺は思う。魔力が極端に増えたり減ったりする状態はつらいはずなのにめげずに、負けん気と人を守りたい、その思いで魔法を発動する姿は若かりし頃の俺たちみたいだなと。



ラグーは地主が突進してくるなら、地主を軽くし、地主に攻撃を入れる時は防御力を下げるそれを繰り返していくうちにMPポーションがあと一つになる。


それを合図に魔法系の大技をつぎつぎとハンターたちは打つ。紫苑もシャイニングセイバーと呼ばれる大技を放っていた。



その攻撃を受け、地主の土鎧は完全にはがれ皮膚が露出する。ラグーは最後のMPポーションをあおり、チェインで敵の動きを止める。それを見た接近戦を得意とするプレイヤーは、今までのうっ憤を晴らすように突撃し攻撃していく。



数分後、地主は灰と大きな魔石に変わった。

「か、勝ったぞーーーー!!」

その光景を見たプレイヤーは一斉に歓声を上げる。



「うっ頭痛い」

ラグーは二日酔いのようにふらふらしているとプレイヤーがラグーの姿を発見する。


「今回のMVPだー!!囲め!」

「持ち上げるぞーー!」

「よいしょ!よいしょ!」

「なんか掛け声違くない?」

ラグーはプレイヤーに囲まれ持ち上げられ胴上げをさせられる。



「ちょっま…うっ」

俺はそんな様子を離れたところから見ているとそんな俺に誰かが近づいてくる。



「紫苑…いかなくていいの?」

そう言って囲まれているラグーを見る。



「いや。今は近づけそうにないからな。今のうちライアンにお礼を言おうと思って」

紫苑は俺に頭を下げる。



「お礼されることなにもない」

「ライアンが考えてくれた作戦のおかげで多くの人が助かった」

「…ただ、ムカついたから提示しただけ」



そう、人任せのテレサや少数を犠牲にして大勢を助けようとした支部長にムカついたから。ただそれだけの理由だ。そう言って俺はその場を後にする。

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