第20話テレサ
「で、いつまで隠れている?」
ラグーがこの場をにあとにした後、俺は感知にひっかかっている人物に声をかける。
「あら、バレてたの?」
「盗み見聞き、趣味を悪い」
「気づかないほうが悪いんじゃないの」
と、黒いバトルドレスに身をつつんだ黒髪紫目の美女が話しかけてくる。
「監視?」
この女はスタンピード1日目からモンスターの相手をせず、俺たちを見ていた。最初は銀翼のメンバーを見ていたんだと思ったが、何回か銀翼のメンバーと離れたときに俺のほうについてきていたので俺が狙いということ直ぐ分かった。
「支部長命令?」
「どうかしら」
で、相手の狙いはわかったが動機はなんだろうと考えたとき、二つ考えられた。前に俺を鑑定した犯罪者とつながっていた男、井山健次郎が逆恨みして暗殺者を送り込んだのが説。
もうひとつは支部長が、他人の目から俺の実力を見極めようとしている説。あの決闘では俺のそこを見れなかったんだろう。
それに俺を監視するこの女からは殺意を感じられない。だから逆恨みで暗殺者を送った説は薄い。
「あなた。やさしいのね。あんなに敵意むきだしの子にアドバイスしてあげるなんて」
俺に近づき髪を触ろうとしていたので、避ける。
「女、俺に魅了は効かない」
「どうして、いつも気に入った子にかからないのかしら」
と、女は手を頬にあて、首を傾げる。
幻影魔法という魔法に魅了をかけられる術があったのを思い出す。前世からなにかと、娼婦の女や俺を暗殺しよとしたサキュバスが使っていた魔法で発動の際、目が赤色に光るのが特徴な魔法だ。
「あと、私は女っていう名前じゃないわ。テレサよ、覚えといてね。それにしてもここにジギルが今の発言を聞いていたら性別差別と言って、怒りかねないから言動には気を付けたほうがいいわ」
黙ってその忠告に頷いとく。面倒ごとには絡まれたくないから。
「素直なのね。素直な子は好きだわ。じゃあ、いいこと教えてあげる。」と、テレサは顔を俺に近づける。
「私がスタンピードのダンジョンの中層で確認したモンスターには40階層のボス、地主の猪がいたわ」
「!?」
「スタンピードの期間はあと、2日。それまでには外に出てくるんじゃないかしら」
それを言った後、テレサは俺から離れ闇に消えていった。
「40階層の階層主…」
俺は56レべなどで、40階層は適性レベルだがまだ、挑んだことのない相手だ。
なぜなら地主は相性が悪い。前世で戦った際には相手が起こす地震で動きづらいし、何より土の鎧が硬くて一度剣が折れた経験がある。
それから、苦手意識をもって挑んだことはない。
「はぁー。なんで俺にこのことを教えたんだろう」
分かっている。テレサは地主の相手を俺にしてほしいんだろう。
「一旦戻るか」
これを銀翼メンバーに伝えるかどうか。支部長が俺たちに伝えなかったのは事前に知っていたら逃げ出す奴が出てくるから伝えなかったんだろう。
「あのおっさん。まじありえな~」
「昼間に地主がダンジョンから出てきたらプレイヤー初心者はそのまま死んでしまう。「なにがそのまま死ねと言っているわけではない」だ!?」
結局、話しました。
そのことに銀翼のメンバーは怒って、支部長に突撃したが返されたは「町に地主が行ったら膨大な被害が受ける。ここで食い止めないでどうする」という言葉だった。
「ハンター達に話さないのはなぜだ?地主の存在も知らずに地主によって殺されるかもしれないんだぞ!」と、いつもたんぱくな紫苑が感情をあらわにする。
「プレイヤーになってダンジョンに潜っている時点で死ぬ覚悟は出来ているだろう。それに報酬につられて喜んでいる連中もいる」
スタンピードで倒して出る素材や魔石は膨大だ。それをすぐに買い取ってくれるハンター協会もあり、みんな張り切っているのも事実だ。
「くっ」
紫苑は顔をゆがめどこかに行こうとしたがそれを支部長が止める。
「ハンター支部長としてこのことを外にもらすなら、紫苑お前にはハンターをやめてもらう。それに市民や町を本当に思うなら言わないのがためだ」と、支部長が冷たく言う。
紫苑はそれをどう受け取ったのか分からないがテントから出ていく。
「紫苑待てよ!」
ラグーが銀翼のメンバーが追いかける。
その場に残ったのは、俺と支部長だけだ。
「少を殺して大勢を生かす」
俺は思ったことを言う。
「やりかた間違ってるけど正しい」だけど、「けど、気に食わない」そう言って俺もテントを後にする。
____________________
「気に食わないか」
俺が一番今、思っている感情だ。
「俺は俺が気に食わない」
紫苑には冷たく返したがハンターのプレイヤーの命を軽く見ている俺自身に吐きけがする。
「まるで、俺が嫌っているあいつらじゃないか」
国や自治体は謎の力を持つプレイヤーの命を軽く見て市民を大事にする。同じ国に所属する国民なのに同じ人類なのにこの差はなんだんだ?
俺はプレイヤーの地位向上を目指してハンター協会の支部長という席に座ったというのに今はこのざまだ。
そんな風に苦しみに耐えている俺を誰かが見ていることに俺は気づかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます