第17話スタンピード



「ふぁ~。眠い」


「あたりまえだろ。俺が寝た後まで、盛り上がっていたんだろう」



そう、あの後も紫苑以外は朝食を食べながらゲームしていたため俺も眠い。



俺たちはテント内で装備や剣の手入れをしている。



「すみません~。1時からのパーティーは早めに現場に入ってもらえませんか?」

と、ギルド職員が外で大声をあげなから言う。



「どうしたんだろう?」


そう思ったラグーがギルド職員に話しかける。



「モンスターの狂化が思ったより厄介でして、第一防衛線が突破されそうなんですよね」


「えっ。それ、ちょーやばいじゃん」


「そうだな。俺たちも急いで向かったほうが良さそうだ」

と、装備を急いで着込み、防衛線に参加する。



「うわー。夜なのに昼間みたいに明るいね」


そうなのだ、いたる所に魔石が動力源の明かりの魔道具があり、モンスターがよく見える。



その光を嫌がってかフクロウ型の魔物はあまりいず、オオカミ型やゴブリン、ポーンラビット、スライムが多かった。



「まぁ、一日目だし、雑魚ばっかりだよな」


「ラグー。あまり侮るな」


「分かっているよ。雑魚でも集まれば厄介だしね」


そう言って、ラグーは弱体化のデバフを敵にかけていく。




「闇魔導士…」


「はっ。そんなに闇魔導士が珍しいか」と、蔑んでくる。



闇魔導士はあまり攻撃系の魔法がなく、パーティーでは、サポート中心の役回りとなるため、取る人は少ないし、闇属性以外の適性があれば発現しない、珍しい役職だ。



「ごめんね。ラグーは自分の役職を馬鹿にされたことがあるから過敏になっているんだ」


「大地!余計なこと言うな」


「まぁ。あーしはラグーが闇魔導士で助かってるけどね~」と言って、ギャルはメイスを振り回す。



「あーしは僧兵で、神官よりちょっと戦えるだけだから弱体化のデバフとは相性がいいし」


「僕も助かっているよ。盾役として受ける攻撃が半減するんだもん」


と、ラグーをほめながら自分の役職を紹介していく。




「うるさい。モンスターそっち行ったよ」



ラグーは耳を真っ赤にして言う。このパーティーではラグーが末っ子みたいなものなんだと思いながら、向かって切るモンスターを切り裂く。



このパーティーの陣形は盾役の大地少年が魔法使いのラグーと僧兵のギャルを守りながら、ギャルが大盾に攻撃するモンスターを攻撃をする。



紫苑はラグーが弱体化させたモンスターを次々と倒すがそんなに前に出過ぎないように気を配って、大地少年が対処しきれなかった魔物から、自分がフォローできるギリギリの位置にいる。



俺は遊撃隊として行動している。感知を活用して、フクロウ型の相手や逃げ出そうとしているモンスターに攻撃を仕掛ける。フクロウ型はいるのは少ないだけでいることは間違いない。



そうこうしているうちに朝日が登り、モンスターの凶暴化は少し和らいで周りのハンターが攻防は余裕をもって行えるようになった。



「はぁ~。疲れた」


ラグーが拠点に戻ると座り込んでしまう。


「ぶっ通しで約4時間半、防衛とかまじ疲れる」


「いいじゃん、あーしらは昼の連中と違って30分早くあがれるんだから。てか、お風呂入りたい」



「シャワーなら昨日、設備されたらしいからギルド職員にいえば、浴びられるよ」


「はぁー。あーしはシャワーもだけど、熱いお風呂に長時間つかりたいわけ」



ギャルが愚痴っていたが内心俺も同意する。前世では風呂なんかは貴族しか縁がなかったが、今世では水もお金も困っていない恵まれた環境に生まれてきたため、風呂につかったときのあの疲れが吹き飛ぶ極楽さに、はまり毎日つかるほど気に入っている。



「ん?紫苑、急に立ち上がってどうしたの」


「あぁ。大地、ライアンに手合わせを申し込もうと思ってな」




「はぁぁ!?まだ、動くわけ?」


俺もちょうど雑魚ばかりで物足りないと思っていたので同意する。


「ハンタ協会の物資の中に木剣とかあったはずだから取ってくる」


「俺も行く」と、朝の稽古にしゃれ込む。





「得物は本当にそれでいいのか?木刀じゃないが…」


そう、俺が手に持っているのは紫苑と同じ木剣だ。



「刀以外も使える」


そう、爺さんからは体術や槍、弓も習っている。それに西洋の剣は前世から使っており、なじみ深い。



「それならいいが…」


刀は素早さのランクが高い俺にあった得物だが、紫苑より力が低く、刀より重い木剣は木刀より俺の適性にややおとると言いたいのだろう。



「大地、審判頼む」


結局、なんやかんだ言って銀翼の騎士のメンツはこの試合を見についてきた。


「はじめっ」




「はぁはぁ。やっぱりライアンは強いな」


と、地面に伏している紫苑の姿があった。あれから俺たちは1時間近く剣を打ちあい、構えの癖などお互い指摘しあった。



もちろん、相手は魔法の使用禁止で俺も素早さのステータスを相手のステータスに合わせて、戦ったため技のみの戦いとなった。




「もーふたりともやりすぎ~。」


そう言ってギャルは俺たちに水を渡してくる。


「ありがと」


俺はお礼を言って水を飲む。




「ふわぁ~。終わったー?僕お腹すいたんだけど」


ラグーは先ほどまで木に寄りかかり寝ていたため、寝ぼけている。俺は思った。こいつ体力なさすぎだろうと。



まぁ、俺もお腹すいたことは事実なので朝食を受け取りに配給場に行く。








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