第18話ラグー視点



気に食わない。


そう思いながらパンを頬張っているライアンを見ながら机に肘をかける。



このライアンという人間は、出会ったときから気に食わない。俺たちに用意された甘味を食べたからという理由もあるが、「お荷物だ」と言って僕の職業、闇魔導士を馬鹿にして捨ててきたやつと被るから嫌いだ。


それに僕を馬鹿にしないで闇魔導士を肯定的に見てくれたパーティーまで、そういう風に馬鹿にしたのも許せない。




ライアンと目が合ったためギラッと睨んでやった。


ライアンはなぜ睨まれたのか分からないのか、頭を傾けて?っていう表情をしていたが無視しして食事を続ける。


気に食わない。



それに、あいつは僕にないものを持っている。




「ら…。ラグー!」


「!?」


「どうしたの?ぼーとして、疲れがたまっているの?」と、大地が心配そうに俺の顔を覗きこむ。


「別に…」


僕はそっぽを向いて心配してくれた大地に素っ気なく返事を返す。


「そう。本当に体調が悪くなったら言うんだよ」


「ふん」


なんで僕はいつも素直になれないんだよ。このままじゃパーティーメンバーにも愛想をつかれちゃうと、僕はだんだん余裕を失う。








「はぁ、はぁ」


今日はスタンピードが発生して4日目だ。このダンジョンのスタンピードが落ち着くのは約一週間、6日目とされており、モンスターの中には20階層近くに生息するゴブリンジャネラル、アサシン、マッスルマジックベアー、がちらほら見えてくる。



僕も二次職についているとはいえ、プレイヤーを始めたばかりのプレイヤーと同じくらいの体力しかないのでだんだんきつくなっていく。



それに、目に見えて消耗しているのは僕だけじゃない。ミヤも大地も守りの安定感がなくなり、多少被弾するようになって来た。



「!?」



ミヤがゴブリンアサシンの奇襲を受けて、ダメージを受ける。それを見たゴブリンファイターはここぞとばかりに、ミヤに襲い掛かろうとしていたので、僕は残りわずかな魔力を使い、ファイターの動きをスローモーションにする。


そのおかげか分からないがギリギリ大地の防御が間に合い、ミヤは無事自分に回復魔法を使い戦線に復帰することができた。


だが、僕は魔力不足で倒れこみそうになる。ダメだ。僕が今倒れたら、ミヤも大地も対応できなくなる。そう思うのに体は言うことを聞かずに…。






「はっ」


ここはどこだ?そう思い、周囲を見渡すと、ちょうど大地が部屋に中に入ってくる。


「あっ。良かった目覚めたんだねラグー」


そう言いながら大地は水をコップに注いで俺に渡してくる。



「丸一日、寝込んでいたから心配し…」


「僕が倒れてあれからどうなったの?」


僕は大地の言葉にかぶせながら聞く。




大地は迷いながら僕に告げる。


「なんとか、乗り切ったよ。ライアンが回復魔法で僕たちをフォローしてくれたんだ。」と、リュックをあさりながら答える。


「すごいよね。モンスターをあんなに倒しているのに魔法で僕たちもフォローできるなんて」



ぎりっ。僕は持っていたコップを知らず、知らずに強く握りしめた。




そうして大地が出っていたのを確認した後に僕は外に出て、僕は人の気配がしないところで魔法の練習をする。


本当は魔力を貯めといたほうがいいのに今は魔法をぶっぱなしたい気分だった。





なのに今一番、合いたくないやつが僕に話しかけてくる。


「魔力使いすぎ」と、ライアンは僕の腕をとつかんでくる。



「離せ、離せよ」


僕は無意識に僕とライアンを巻き込みながら魔法を行使する。体に重しをつける魔法を。



僕は体が悲鳴が上がるのを気にせず、魔法を使いつづける。これは役ただずでお荷物の僕の罰なんだと思いながら魔力を使いつぶす勢いで使う。



ライアンは何を思ったのか分からないが、腕をひっぱり僕を抱きしめる。ライアンのほうが背が高いから、僕の体が覆われるようにすっぽり包まれる。すると、魔法は解除され僕から重しが消える。



「な、なんで魔法が」


俺はすぐにライアンが何かやったんだと思い抗議する。



「なんで邪魔するんだ!?僕なんていなくても変わらないだろう!」


ライアンは僕を抱きしめたまま言う。


「悲しむ」


「?」


「紫苑もギャルも大地少年もラグーいなくなったら悲しむ」


「!?お前に僕たちの何が分かるって言うんだよ!」


そう言って抵抗するように腕を振り回すと、たまたま仮面にあたり仮面が取れる。




そこには、はっと目が覚める美少女がいた。


「え、え、ええ」


ライアンは仮面を拾いながら「顔」と言う。


僕がライアンの顔を見過ぎて、指摘されたのかと思い顔を赤くするがライアンは違うことを言う。



「信頼しあっている顔をしてた」


ライアンの瞳が僕をとらえて離さない。


「俺にはない信頼があった」


そう、寂しそうに言う姿はまるで、か弱くて、守ってあげないとガラスのように崩れてしまうようだった。



はっ。

なんで僕より強いやつを守らなくちゃいけないんだ。どうかしている。


僕は誤魔化すようにライアンに「僕はお前が嫌いだ」と威勢を張る。


「知ってる」


「僕はパーティーメンバーをお荷物といったこと許してない」


「そこは強くなってもらわないと困る」とライアンは謝る気はさらさらなかった。



だから、僕は「いつか、お前より強くなって謝ってもらう」と、喧嘩を売るが、「望むところ」だとライアンは返されてしまった。


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