第6話階層主
「うーん」
よく寝たわ。そう思いながら腕を伸ばし、それから顔を水魔法で生み出した水で洗ってさっぱりさせる。
「今日の朝食はっと」
なんと、食パンを持ってきたのでサンドイッチでも作ろうと思っている。昨日、凍らせといた肉は氷が溶けて冷たくなっているので、それをキッチンペーパーで水を拭きとり、油の入った鍋の中に入れる。
じゅわーっと油が踊り、肉はきつね色に揚がっていく。
朝から揚げ物はきついと思われる方は多いと思うがこの体は燃費が悪く、たくさん食べないと体に力が入らなないのでたくさん食べる。
「できた」
朝食のメニューはカツサンドとツナマヨサンドだ。
ツナはツナの缶詰で。ソースやマヨネーズ、マスタードはダンジョンに入る時には常備している。他にも醤油、塩、砂糖など基本調味料はリックに入れている。
「はむっ」
衣がさくさくで肉を分厚く切っていたため食べ応えがある。ツナサンドもマヨネーズがまろやかな味を出していて美味しい。
「ふぅーー。食べた、食べた」
俺はお湯を沸かし、食後の緑茶を飲む。
「食後の後はやっぱり緑茶が一番」
そういうところは、日本人の血筋が色濃く出ているなと思う。
それから食休憩をしてから、簡単な運動を始める。運動と言ってもただ素振りと剣舞をするだけだ。
刀は重さがなく命を預けるのにはやや不安だと、前世の俺が言っている。前世の俺は重みがある長剣を愛用していたから余計にそう思うなんだろう。だから刀の手入れは毎日欠かさず行っている。
10階層主程度なら苦戦もせず勝てるが、緊張感を持って挑む。
キーと扉に触れると扉が音を立てて開く。
扉の先には円形のデカい部屋に大型の熊型モンスターがいた。こいつはマッスルベアーと言って名前の通り、力押しの攻撃をしてくる。掌の爪は普通の熊と違って、大きくてする鋭い。ひっかかれただけで致命傷となるだろう。
俺は階層主部屋に一歩踏み出すと、後ろの扉はバタンと閉じられた。階層主部屋は階層主を倒すか、特定のアイテムを使わない限り出ることは不可能とされている。
アイテム名は転移の羽。俺はその特定のアイテムを一つ持っている。爺さんがダンジョンに入る16歳の時にプレゼントしてくれたアイテムで今も首飾りとして装着している。
まぁ、このアイテムは使う気はないけど。俺のために爺さんが自分の資産と伝手を使ってやっと手に入れたものだと知っているから触るとこう、心がぽかぽかして安心する。
そんなことを考えていると熊が侵入者の威嚇するためか、吠える。
「グアァーーー!!」
うるさっ。
でも、威嚇は馬鹿にならないくらい戦闘に影響するんだよなぁ。鼓膜が破れたり、平衡感覚をくるわせたりするから初めて階層主に挑む際は耳栓をするハンターもいるほどだ。
まぁ俺の場合、慣れているしステータスが高いから全然影響しないが。
そうこうしているうちにマッスルベアーは俺に近づき、腕を振るう。俺はその攻撃を後ろに下がり避ける。刀で受けるとマッスルベアーの腕力ですぐに得物が壊れてしまうから基本、俺は避けて攻撃することが多い。
マッスルベアーの攻撃は大きく腕を振るうため、腕を戻すのに時間がかかり次の攻撃へのタイムロスが生まれる。そこで俺は戻そうとしていた腕から顔を切り裂く。
マッスルベアーは痛みか切られた反動か、思わずのけぞり、隙を生んだ。それを見た瞬間、俺は走り飛びそのままマッスルベアーの首を横に一刀両断する。
すると、マッスルベアーは灰になって消えていく。その場に残ったのは灰の山と魔石と熊の毛皮だ。
この毛皮、雪山地形のダンジョンに潜るハンターに需要があり、よく売れるらしいのだが、荷物になるので置いてく。俺は基本的に魔石かレアドロップしか拾わん。
魔石は最近、アイテムづくりにハマっている兄にプレゼントするつもりだ。
ワープポータルが二つ光り輝いているので、俺は赤く輝いているほうのワープポータルに触れる。階層主を倒すと、ワープポータルが青と赤に光り輝く。
青は現実世界のゲート前にワープ出来て、赤は次の階層にワープ出来る品物となっている。ワープポータルは原理は不明で動かすことは不可能とされているがハンターは意識せず利用している。
そうして俺は11階層に到達した。11階層からは1~10階層のモンスターが魔法を使ったり体型が進化しているので盾役必須とされている。
まぁ、魔法と言っても俺には効かない。というか、モンスターの火球を受けたことあるが全然痛くないし、攻撃系の害ある魔法はおれに触れると一定時間で消えてしまうのも実証積みだ。
もちろん、この実験はダンジョンで家族に内緒でやったことなのでバレたら説教どころの話じゃない。
おっと、さっそくゴブリンに遭遇した。一体は貧弱で進化もしていないがボロボロの剣を持っているゴブリン。もう一匹は骨格と体格がよくなった接近戦メインのゴブリンファイターだ。
ゴブリンファイターが前に出て、そのファイター後ろにつかず離れずボロボロの剣をもったゴブリンが構えもなってない適当な攻撃態勢をとる。
ゴブリンファイターは俺が刃物を構えているため、なかなか攻撃してこないのでこちらから仕掛けることにする。刀の決先を地面につきそうなぐらい下に構える。そして地面を勢いよく蹴り、下から上に切る。
その挙動が目に追えていなかった剣を持つゴブリンは仲間が灰になってやっと、仲間が切られたことを察知する。その出来事に恐れをなしたゴブリンは剣を落として、俺に背中を向けて逃げていった。
俺はその逃げたゴブリンは追撃はせずに後を追う。
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