第4話 申請者続出

『これ、穴ね、さっきの魔物がちょうど通れる大きさね。行きましょう』


『あ、あ、これがもしかして未開拓領域に繋がってあるのか?』


『んーいや!いや!』

ホワイトが僕の足を引っ張ってその場から離れようとしている。


『ホワイト』

ホワイトの顔を見れば、ここが危険なのはすぐにわかった。


『アキ、俺は帰る。アキは好きなようにしろ』


『先輩、本当に行かなくていいんですか?……』


『ああ、ホワイトが帰りたがっているし僕は足でまといだし、弱いから行くつもりはない』


『先輩、本心で、いいえ。わかりました。私も帰ります。いろいろやる事が出てきましたし。何より1人で行くには不安ですから』


『アキ、行くつもりか?』


『ええ、これでも探検家なので。先輩もそうでしょ?…………あれ?そうきますかふ〜ん』



……帰宅後……


アキと別れて自分の家に帰った。


ホワイトはダンジョンで大人しくしていた分、部屋で勝手にテレビをつけ勝手にポテチの袋を無理やり開けて中身を飛散させて食べている。


『はーーホワイト散らかさないでくれ』

散らかった部屋を片付ける。


ふとアキの言葉を思い出す。

『本心か』

ホワイトは僕が拾ったし責任を持たなくちゃいけない。拾った遺物は拾った本人の物だ。だからホワイトを失うのを不利益だ。だから行かない。そうだ。


”探検家”

久しぶりに聞く言葉だった。まだパーティーを組んでいた頃か。懐かしい。


『よし、寝るか』

考えるのも嫌なので寝ることにした。



……翌朝……


いつも通りに手に入れた戦利品を換金しにいくために家を出た。ホワイトは目立つので留守番させた。家には壊されていいものしか置いてないので大丈夫だろう。



……換金所……


換金所の中はダンジョンで手に入れた物を売るところと、ダンジョン内での依頼を管理するところに別れている。


(ギギギー)

『いらっしゃいませ!……え?』

店員に挨拶されつつ二日前に手に入れた物資を換金しにカウンターまで行く。


『おい、あいつじゃないか?』

『おい、やめとけ』

何だか視線を感じるが、すぐに帰るしいいか。


『いらしゃいませ』

『換金しにきた。頼む』

戦利品をカウンターに置いた。



『あ!佐藤先輩!彼ですよ、彼!』

声の聞こえた方を向けば、そこには休憩用のテーブル席からこっちを指差すアキの姿があった。


『は?』


『佐藤さんですよ、未開拓領域に行ける穴を見つけたのは!』

『おおおお〜!!!やるな佐藤!』

意味がわからない。だか、とてもマズイ。



『どういうことだ!アキ!!』

思わずアキのところまできて胸ぐらを掴んだ


『も〜そんなに興奮しないでください先輩。まだ夜じゃないですよ。積極的なのはいいですけど』


『おおお〜さすが佐藤だ』


『バカにすんな!お前ら!どういう事だ!アキ!』


『だって先輩はこのこと秘密だって言わなかったじゃないですか。それとも察して欲しかったんですか?3人だけの秘密にしたいて』


『は?』


『てか、ホワイトちゃんはどうしたんですか?』


『ホワイトは留守番だ』


『ん?アキちゃんホワイトてもしやあんたたちの子供か?』

同じテーブルに座る70歳ぐらいのジジイが聞いてきた

『は?何言ってるジジイ』


『もー小森さん違いますよ。私たちそこまで進んでませんよ。それにホワイトちゃんは人を襲わないダンジョンで拾った魔物の子ですよ』


『違う!そんな奴いないンーンー』

傍聴していた何人かが僕を押さえてきた。


(ドーン!バキバキバキ)

何かが勢いよく落ちてきた。

すぐにわかった。ホワイトだ。


ホワイトは穴を開けた床から這い出てまっすぐこっちにくる。

『あ!ホワイトちゃんだめ!その人たちは遊んでるだけなの』

アキが突然ホワイトを抱きしめて止めた。かと思ったらすぐにホワイトを離した。ホワイトは大人しくアキを見つめている。


アキはすぐに向き直して

『この子がホワイトちゃんよ!ほら耳でてきた』

アキはホワイトの隠れた耳を摘み持ち上げた。

『マジかよ!スゲー』


『今回、佐藤先輩がこの子を見つけたおかげで未開拓領域への道が開けました。ので!私たちは皆様に未開拓領域探査の協力を依頼したい!応募したい人はここに署名を!』

そう言ってアキは依頼を行う際用紙をテーブルに置いた。


『おれ、やるぜ!』

『俺も!』

次々と人が用紙に群がった。


誰かが気づいた。

『ん?てかこれ佐藤からの許可必要じゃん』


『言い忘れてた。参加するには佐藤先輩の許可必要だから』

アキはとんでもないことを言いやがった。


『おい。佐藤!俺に参加させてくれ。もう同じことのばっかつまらないだよ』

僕を押さえて居た奴が言って来る。

『俺もなんだ佐藤さん!』

次々と聞いて来る。


『あー離せ!』

僕は押さえていた奴らを振り解いて外に出ようとした。


『なあ、頼むて!』

『お願いだよー』

外への扉へ行く間も聞いて来る。鬱陶しい。


『みんな!そんぐらいにして。また明日募集するから』

アキが僕の周りにいた群衆を停めた。

今のうちに外は出ようと走った。

そして換金所の外へでた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る