第3話 未開拓領域への入り口
『あ、開いた開いた。先輩、私が力強いの覚えて無いんですか?もーちゃんと私のこと知っといてくださいよー』
アキは引き剥がした金属のドアを片手で持って立っている。
『あ、そうだ』
『先輩!さ!部屋に入れてもらいますよ!』
『あ、わかった……』
『じゃお邪魔しまーす』
アキはさっきの暴れっぷりから一転、きちんと靴を並べて入ってきた。
『で、この子供なんですか?』
アキは来て早々痛いことを聞いてくる。ホワイトは勝手にテレビをつけ始めているしで、疲れる。
『あ、いやこいつは親戚の子だよ』
『嘘……嘘ですよね?』
アキは僕の嘘に真顔で否定してきた。
『で、本当は?』
『嘘じゃないよ、僕の再従兄弟が旅行にいくから』
『見苦しいですよ先輩。先輩の親戚にこのぐらいの子供はいませんよ』
『な、何でそんなこと知っているんだよ』
『あ、本当にいないんですね。ま、私知り合い多いんで、そうだと聞いていたけど。本当だったんですね』
やらかした。いつもアキは口が上手くて敵わない。
『で、本当は?』
『それは……』
どう説明していいかわからない。
『ホワイト!』
テレビを見ていたホワイトが急にこっちを向いて喋った。
『へーホワイトちゃんて言うのね?』
『ホワイト』
アキの質問に答えるように繰り返した。
『ああホワイトて名前だよ』
『へーホワイトねーすごい安直な名前ね。誰がつけたんでしょうね〜』
アキはこっちを向いてわかっているくせに聞いてくる。
『ああ、そうだよ、僕だよ』
『あ、つまりこの子は先輩の隠し子か拾った子なんですね』
くそ、アキのやつどんどん核心に迫ってくる。
『ホワイトは隠し子じゃない』
『ふ〜ん、じゃなんですか?』
『拾った』
『ヘー先輩てこういう感じの女の子がタイプなんですね』
『いや、そうじゃ……』
どうしよう。もうきつい
『ダンジョン!』
またホワイトが喋ってきた。
『ダンジョン?』
『生まれた!』
『え』
珍しくアキが困っている。
(ピョコン)
ホワイトが白い髪の下から耳を出した。
『え、なにこの子!?』
アキは目を丸くしている。
もういいや。
『ホワイトはダンジョンの中で見つけた』
『は!?何それ?』
そこからはホワイトについて知っていることを全て話した。
……数分後……
『なるほどね〜密林地帯で、偶然ね〜 ん〜全然情報が足りないわ。そうだ!今日もう一度同じところに行きましょう!そのホワイトちゃんのおかげで見つけた良く切れる刀も使いたいですし』
なんかアキに勝手に話を進められている。
『ん〜』
ホワイトはアキの膝の上に座って頭を撫でられている。完全に子分に成り下がりやがった。
もう、仕方がないのでアキの提案どうりにダンジョンへ行くことにした。
……ダンジョンの入り口……
『じゃ入りましょうか』
『待ってくれ。そのまま入るのは危険だ』
アキがダンジョンの境界に入ろうとしているのを僕は引き止めた。
『え、何で?』
『このまま密林地帯に入るのは危険だ。ここら辺の魔物は目が悪いが鼻はいいんだ。だからここら辺の虫の汁を体に塗ると見つかりにくいいんだ』
『へーそうなんですか。初めて知りました。やっぱり先輩はすごいですね』
『ま、やって見せるから。やってくれ』
僕はいつも通りにダンジョンの虫の汁を体全体に塗る。匂いは何だか鉄っぽい感じのだ。
『へーわかりました。じゃ早速』
アキは僕のを見てやり方がわかったのか虫の汁を体に塗り始めた。
その間に僕はホワイトにも塗っておく。
ホワイトに塗っているとやたらとアキがこっちを見ている気がする。まだ何か隠しているのだと疑われているのだろう。
『よし、塗り終えた。アキさんはおわりました?』
『え?あ。まだ出来てないの。手伝ってくれる?えーとね背中の方塗って』
『はい?』
『いいから早く』
仕方が無いのでアキの背中を塗り始めた。
『あ!冷た!。なんか背中だとヌメヌメした感じが気持ち悪い』
『あ、ごめん』
急にアキが変な声出すからビビった。
しかも何だか都会でランニングする女性みたいな格好をしている。露出が多くで近くにいるのが気まずい。
一通り塗り終えたのでダンジョンの中に進むことにする。
……ダンジョン密林地帯の一角……
『ここだよ、ホワイトを見つけた場所は』
『ふーん、そうなんだ。そんなに他と変わらないわね』
(ブルブル)
気づくとホワイトは僕にしがみつきながら震えている。襲われた場所だから怖いのだろう。
『本当にここ?』
アキはそこらへんを散策している。
(バン、ガシャシャシャー、ドドドーーー!!!)
突然周囲に大きな土砂崩れのような音がした。と同時に地面が大きく揺れた。
『なんだ!?』
(ブウウンーン)
どこかから動物の息遣いがきこえた。
『何?』
アキは既に遺物を使って戦闘体制に入っていた。アキの周りからは白いモヤが出ている。この状態のアキは最強だ。
(ガーーー!!!)
魔物らしき鳴き声が聞こえた時にはアキに向かって見覚えのない魔物が突っ込んできていた。
(バーン!!!)
アキがその魔物の突進が当たる寸前で魔物の牙を掴んで押さえていた。
アキの持つ遺物は身体の能力を大体数倍にしてくれる遺物で強力だ。制限時間約20秒の制限があれど、殆どを瞬殺するので問題ない。アキがいて安心だ。
『何なのコイツ!力強すぎ!』
アキが力比べで押されている。よく見ると、いつもの魔物より一回り大きい。
『無理!』
アキは魔物を流した。
(ドーン!)
魔物はそのまま木に突っ込んだ。
(バキバキ)
すぐに魔物はこっちを向き直す。そして直ぐに僕の方へと走ってきた。
『先輩!!』
ビビって目を瞑って後ろに転んでしまった。
『先輩!!!』
すぐに目を開くとアキがすぐ目の前で魔物を押さえていた。
『先輩!!早くその剣で。ん!』
アキは限界そうだ。
『んー、あ!』
ホワイトが勝手に僕が持ってきていた遺物の刀を抜いていた。
『くそ!』
僕はホワイトから刀を取り、勢いよく魔物の懐へ入った。
(スパ)
前足の一本を切り落とした。
(ガーーー!!!!)
魔物が鳴く。
(スパ)
そのままの勢いで後ろ足の一本を落とした。
(ガーーーーーー!!!!)
魔物が倒れた。
(ドス、パシャ)
倒れた魔物の頭をアキが拳を突き下ろして潰した。
『終わった』
『アキありがとう。助けてくれて』
『え、えへへへ。もう!当然でしょ!先輩は力無いんだから』
思い出すと、ソロでダンジョン探索する前はアキなどとチームで探索していた。昔からアキは力もちで僕は非力で足でまといだった。
『ホワイトちゃんもありがとね』
『うい』
何だかアキはホワイトと仲が僕より良くなっている。
『で、これ何か知っているか?アキ』
『知らない。新種ね』
新種なんてここ数十年見つかっていない。おかしい。
『新種なんて、そんなわけないだろ。アキ』
『新種ね、私、記憶力はいいから』
『じゃあ、どうしているんだよ』
『あの崖を上がってきたのよ』
『は?崖?』
ダンジョンは奈良県の中心として半径40キロの円状に広がっている。円から中心に向かって約10キロ進むと底の見えないほど深い崖になっている。そこから下へ行けた者は生きて帰ってこなかったので未開拓領域となっている。
『もしかしたらあそこら辺にヒントがあるかも』
僕たちは魔物が現れたとこに向かった。
(ヒューーーーーヒューーーー)
すぐに気づいた。
『何だこれ』
魔物が出てきたところにはさっきの魔物がギリギリ入れるぐらいの穴が下に向かって空いていた。
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