6. あの日の僕ら2 ㊻~㊿


-㊻ しっかりと見ていた友人-


 守も胸をドキドキさせながら耳を塞いだ、周囲にいる数人も守と同様にしていたのだが事情を知らない真帆や真美は訳が分からなくなっていた。


真帆「どうして聞こうとしないの?」

真美「お姉ちゃんの言う通りだよ、裕孝さんが可哀想じゃん。」


 しかし理由はすぐに分かった、裕孝を擁護しようとした双子まで耳を塞ぐ程の理由。


真美「何これ・・・。」

真帆「流石にこれは酷い・・・。」


 そう、裕孝は重度の音痴だった。この事が発覚したのは中学時代の遠足での事だったかと守は思った。

 当時、遠足の目的地へと向かう観光バスの車内、人工衛星を利用した最新式のカラオケで盛り上がっていた時の事。


友人(当時)「次は裕孝が行けよ。」

裕孝(当時)「俺か?俺は歌が苦手なんだよ。」

守(当時)「そう言う奴に限って上手かったりするんだよ。」

裕孝(当時)「仕方ねぇな・・・。」


 渋々分厚い本を開いて曲を探す裕孝、お気に入りの「あの曲」を見つけるとすぐさまリモコンで番号を入力した。

 数秒後、前奏が流れ始めた。友人たちが皆笑顔を見せた。


友人(当時)「お前、これ好きだよな。皆これ好きだから良いと思うぜ。」


 シンセサイザーで奏でられた聞き心地の良い前奏、そして深く息を吸い込んだ裕孝。

 次の瞬間、バスの車内が地獄へと化した。


友人(当時)「だ・・・、誰か!!曲を止めろ!!」


 運転手も動揺したのか、バスが安定性を失いかけているのでこのまま行くとその場にいた全員が死にかねなかった。ただ、やっとの思いで守が曲を止めるまでは。


守(当時)「こう言う事だったんだな・・・。」

裕孝(当時)「だから言っただろうが・・・。」


 それから目的地に到着するまで車内にはずっと静寂が広がっていた、この遠足以来ずっと、裕孝は人前で歌う事に抵抗していた。守も含めて誰一人ずっと裕孝の歌を聞いた者はいなかったと言う。

 しかし、今日は人生の大きな門出の日。裕孝は意を決して歌う事を決めたのだ、それを察したのか香奈子がもう一方のマイクを手にした。


裕孝「な、何やってんだよ。」

香奈子「良いじゃない、丁度デュエットの曲なんだから。」


 確かに香奈子は間違ってはいない、歌詞が色分けされて表示されているのだから。一応ケーキ入刀という形で夫婦初めての共同作業は行ったが香奈子は自ら進んで裕孝と何かを行いたかったのだ。

 その意を知った守は耳を塞ぐのをやめた、しっかりと「聞こう」と思ったからだ。ただそれを、何故か裕孝達が許さなかった。新郎新婦の手にはマイクが2本ずつ。


守「な・・・、何だよ・・・。」

裕孝「お前と真帆ちゃんも参加してくれないか?」


 間奏が終わった瞬間、裕孝からマイクを受け取った守は共に歌い始めた。


香奈子「真帆ちゃんも、ほら。」

真帆「いいの?」

香奈子「早く、色が変わっちゃう。」


 テレビに表示された歌詞の色が変わった瞬間、女子2人も楽しそうに歌った。どうやらこれが新郎新婦の目的だったらしい、裕孝たちは松戸夫婦と同じ事を考えていた様だ。守の行動により涙する真帆を見かけたが故の行動だった。間違いなく、今の恋人は真帆。新郎新婦は守に真帆の笑顔を守るべきだと伝えたかったのだ。


龍太郎「あいつらめ・・・。」

王麗「やってくれるじゃないの・・・。」


-㊼ 来ると思わなかった文-


 2次会の宴もたけなわとなり、参加した面々が各々の家路につき始めた頃、守は体を小刻みに震わせながらさり気なく帰ろうとする結愛と光明を呼び止めた。


守「待てよお前ら、俺に言わないといけない事があるんじゃないのか?」


 守の言葉に惚けたふりをする結愛、どうやら何事も無かったかのようにその場を離れたかったらしい。


結愛「何だよ、俺がお前に隠し事をした事があるか?」

守「お前らの事、龍さんに聞いたんだぞ。ちょっとこっちに来いよ!!」


 守は自らの気持ちを表すかのように強く結愛と光明の腕を引いた。


結愛「痛ぇよ、スーツが破れるだろうが!!これ新調したばっかりなんだぞ!!」

光明「守、お前何興奮してんだよ、ちょっと落ち着け!!」


 守は至って冷静だった、しかし以前龍太郎から聞いた事が本当に事実なのか確かめたかったのだ。


守「お前ら、幽霊なのか?竜巻で一度死んだって聞いたぞ。」

真帆「守、どういう事?真帆、初めて聞いたよ!!」

守「今から全てが分かるよ、ちょっと待ってて。」


 恋人を怯えさせる訳には行かないと優しく声をかける守。


光明「守には嘘つけないな。結愛、この際ハッキリと言ってしまおうぜ。」

結愛「仕方ねぇな・・・、全て話すよ・・・。」


 結愛は先日、原因不明の竜巻で自らを含めた貝塚財閥の人間数人が亡くなった事、そして異世界に転生を果たして魔法使いになった事を話した。


結愛「死んだって実感が無いんだよ、それに「転生」って言っても姿はこのままだから「転移」って言った方が良いかも知れん。ただ「神様」ってやつのお陰で色々と便利な生活をしているのは確かなんだ。」


 話の次元が違い過ぎるので頭が追いつかない守、その横で真帆も頭を悩ませていた。


真帆「結愛さんは「あの世」から蘇ったって事?」

結愛「そうでは無いんだな・・・、向こうの世界の人間だけどこっちの世界を訪問したって考えてくれた方が良いかも知れんな。」


 守は挙式の時に受け取った結愛からの手紙の事について問いただした。


守「「好美に会ったら」ってどういう事だよ、お前あいつと面識ねぇだろ。」

結愛「えっとな・・・、ダルランさんを通して知り合ったんだよ。」

守「ダルラン?俺の知り合いにそんな名前の人いねぇぞ。」

結愛「悪い、光さんだよ、吉村 光さん。あっちの世界で結婚して苗字がダルランになったんだ。その光さんから紹介されたのが好美ちゃんって訳さ、まさかお前の恋人とは知らなかったぜ。」

真帆「「元恋人」ね!!今は真帆が彼女だもん!!」

結愛「悪かったよ、そうだよな、今は真帆ちゃんが守の恋人だもんな。そうだ、好美ちゃんで思い出した。今日は守にこれを渡しに来たんだった、忘れてたよ。」


 結愛は胸ポケットをごそごそとし始め、一通の手紙を取り出した。目の前の社長が言うにはこっちの世界と異世界とでは時間にかなりのズレが生じているらしく、あっちの世界に光や結愛が行ってから十数年後に好美が転生したと言うらしい。ただ転生者は歳を取らないと言うので亡くなった時からずっと姿は同じなんだそうだ。そんな中で好美が異世界で毎日忙しくしている事を伝えられ、遠くにいる恋人の手紙からもその事が伺えた。


守へ

 あの日ドジしちゃった所為でこっちの世界に来てからどれだけ経ってるか忘れちゃったけど今でも守の事を忘れた事は無いよ、元気でやっていたら嬉しいな。ただ結愛さんから新しい彼女が出来たって聞いて驚いた、少し嫉妬しちゃうけど「あの時」からずっと話せないままだったしこっちの世界に来ちゃったから仕方ないよね。それに私、今恋愛どころじゃないんだ、夜勤をしたりマンションや拉麵屋、コンビニのオーナーをしたりで忙しいから会えそうにもないので敢えてそっちの世界に戻ろうとは思わない様にしてるの。

 守、間違ってもこっちの世界に来ようとしないでね。じゃあ、お元気で。   好美


守「嘘じゃなかったんだ・・・、奇跡って・・・、あるんだな・・・。」


-㊽ 漏洩-


 結愛に渡された手紙にずっと感動の涙を流す守、行き方も分からない遠い世界でだが好美が生きている事を心から喜んだ。手紙に書かれている好美の意志に反してしまう思考だが、正直、「会いたい・・・。」

 真帆は体を小刻みに震わせて大粒の涙を流す守の肩に手をやった。


真帆「守、良かったね。」

結愛「お前充実してんな、いっぱいの女の子に囲まれてよ。」

龍太郎「お・・・、お前遂に二股か?」

守「そんな訳ねぇだろ、今の彼女は真帆だぞ!!」


 守の言葉に少し顔を赤らめる真帆。


真帆「それ、守の方から言うのは反則だよ。真帆がその言葉で守を煽るのが楽しいのに!!」

結愛「良いぞ真帆ちゃん、どんどん言ってやれ!!」


 すると調理場から後片付けを全て終わらせた王麗が出て来た。


王麗「さっきから見ないと思ったら父ちゃんもここにいたんだね?皆で楽しそうじゃないか、何の話だい?」

結愛「守がリア充の癖に彼女の目の前で別の女に発情してるって話だよ。」

守「ば・・・、馬鹿!!何言ってんだよ!!」

王麗「守、あんたも悪い子だね、真帆ちゃん泣いてるじゃないか。」


 よく見ると真帆の目からは雫が、そして王麗の手には目薬が。


守「やられた・・・、女将さんもやってくれんな・・・。」

真帆「えへへ、真帆の前で好美さんの事考えているからだよ!!」

王麗「女の涙は何よりも強いのよ、分かった?」


 裏庭で数人が談笑していると、店内から女性の大声が聞こえた。中国語で話されている事から察するに、声の主は美麗。


美麗(中国語)「何これ、どういう事?!」

龍太郎「何だアイツは、いきなり何言ってんだ。」

王麗「私が行ってみるよ、皆ちょっと待ってな。」


 王麗は声の方向へと歩き美麗に声を掛けた。


王麗(中国語)「何だい、大きな声出して、近所迷惑になっちゃうだろう。」

美麗(中国語)「ママ、これ・・・。」


 王麗は美麗が指差した方向に目をやった。


王麗(中国語)「これは・・・、騒動だね・・・。」


 意外と冷静だった王麗は裏庭に急いだ。


王麗(日本語)「結愛ちゃん、まずい事になったよ。皆もちょっと来てくれるかい?」


 裏庭のメンバーは王麗に連れられ美麗の座る回転テーブル席へと向かった、そして言われたままに店内のテレビを見た。


結愛「どうなってやがる・・・。」


 テレビに映っていたのは結愛含む貝塚財閥の数名の死亡が発覚したという報道だった、しかも原因不明の竜巻での事故だったとも伝えられていた。


結愛「まずいな、騒ぎにしたくなかったからこういう時の為に備えで遺書に俺が亡くなっても隠匿する様にと書いておいたんだがな・・・。誰だよ、こんな事したやつ。」

守「茂手木じゃないか、この前逮捕された腹いせに報道に圧力をかけて流したんだ。」


 ただ2人以上に驚く者が1人。


美麗「じゃ、じゃあ・・・、今目の前にいる結愛さんって幽・・・霊・・・?」

結愛「お、おい!!大丈夫かよ!!」


 その場に倒れた美麗は意識不明で病院に運ばれた後、周囲の人間の迅速の対応と医師による懸命な治療のお陰で一命を取り留めた。かかりつけ医によるときっと元の心臓だと助かってはいなかっただろう、移植された秀斗の心臓のお陰だとの事。


-㊾ 早すぎる再訪と突然の知らせ-


 大学病院の救急治療室の前の廊下で美麗の復帰を今か今かと待っていた一同は、美麗の意識が戻ったという知らせを受けて治療室内へと向かったが結愛と光明はその場で足を止めた。


守「おい、何やってんだよ。」

結愛「俺達の所為で意識不明にしちゃったからやめておくよ、テレビのニュースで流れちまった事は間違いなく真実だからな。」

光明「折角意識を取り戻したのにまた迷惑を掛ける訳にも行かんだろう。」

守「そうか、取り敢えず様子見て来るよ。」


 自動ドアの向こうで数台のベッドが並べられ精密な医療機器に囲まれた室内、そこで美麗は呼吸器等の機器を外してテレビのニュースを見ていた、どうやら未だに結愛が死者である事を受け止める事が出来ていないらしい。


美麗(日本語)「パパ、これ本当なの?結愛さん昨日店にいたじゃない、訳が分からないよ。全国ニュースが嘘ついているんじゃないの?」

龍太郎「美麗(みれい)・・・。」


 残念ながら報道されているニュースが嘘ではない事、そして結愛に聞いた通りの話を全て話した。


守「なぁ、美麗(メイリー)。今結愛に会えるなら会うか?」

美麗「うん、知らなかったとは言っても結愛さん達に失礼な事しちゃったもん。会って謝りたい、よいしょっと・・・。」


 無理くりにベッドから降りて歩き出そうとする美麗、しかし治療に耐えた体には余り体力が残っていなかった。


守「今は動かない方が良いんじゃないのか?俺、連れて来てやるよ。」

美麗「ごめん、助かるよ。」


 美麗を気遣い結愛達を呼びに廊下へと向かう守、本当に気遣いの出来る奴だ。

守は自動ドアを開けて廊下に出てはみたがそこに結愛達の姿は無かった、思い出したかのように催したので化粧室を探そうと歩き出すとある看護師が守に手紙を渡した。裕孝の母、小比類巻光江だ。息子の結婚式の翌日だと言うのにバリバリ仕事をしていた様だ。


光江「あ、守君!!ナースセンターに結愛ちゃんに似た子がこれを置いていったって聞いて持って来たんだよ。あんた宛だってさ。」

守「俺に?」


 手紙の封筒の表麺には「守へ」と、そして裏面に「貝塚結愛」と書かれていた。守は早速封筒を開いて中を確認した。


守へ

 美麗ちゃんには驚かせて悪かったって謝っておいてくれ、俺らは急な呼び出しがあったから帰るぜ。次はいつ来るか分からんが元気にしてろよな。あ、叔母様によろしく。

結愛


守「あいつ最近手紙にハマっているよな。」

光江「あの子は何だったんだい?」

守「ああ・・・、そっくりさんって奴じゃないのか?アイツ、読モもしてたじゃん。」

光江「ふーん・・・、なるほどね。」


 数日後、美麗が無事に退院して既に会社での仕事や店の手伝いを普段通りこなしている中、守は腰を痛めた真希子の為に給料から毎月地道に貯金して家のトイレを改装した。


真希子「悪いね、もう和式がキツかったんだよ。少し狭くなっちゃったけどありがとう。」

守「文句付きかよ、それより今から買い物行くんでしょ。暇だから俺も行くよ。」

真希子「じゃあ先にスルサーティーの所にいてくれないか?トイレに行ってから行くから。」

守「あれで行くのかよ、流石に目立つぞ。卒業式の時の事を忘れたのかよ。」

真希子「良いじゃないか、今日は気分が良いんだよ。」


 母に言われた通りに未だに周囲から目立つ愛車の横で待つ守、しかし20分以上待っていても母は出てこず、真希子の代わりに守に近付いて来たのはまさかの結愛だった。スーツ姿が相も変わらずの社長は何故か焼酎のロック片手に突然守の胸ぐらを掴んだ。


守「結愛お前、いきなり何だよ!!放せって!!」

結愛「何だって聞きたいのはこっちだよ!!何でおばさ・・・、お前の母ちゃんがあっちの世界にいるんだよ!!」


-㊿ 信じたくない-


 結愛の発言に驚きの表情を隠せない守、急ぎ家へと戻りトイレの扉を叩いた。ドアノブを見てみると扉の鍵は閉まっていた、まぁ、当然の事か。


守「母ちゃん!!母ちゃん!!中にいるんだろ!!開けろって!!」


 まさか「トイレに行ってくる」が母の最期の言葉になるとは思いたくない守はドアノブを必死に動かしていた、しかしドアはピクリとも動かなかった、これも当然の事。


結愛「守待てよ、落ち着けって。もしドアが開いて、お前の母ちゃんが生きてたとしてもしも脱いでたらどうするつもりだよ。俺がやるからどかんかい。」


 自らも死者だからか、やたらと落ち着いていた結愛は守と交代して中にいると思われる筆頭株主に声をかけた。しかし・・・。


結愛「おば様、いるんでしょう!!返事して下さい!!」


 一瞬にして落ち着きを無くした結愛、やはり恩人を亡くしたくないが故に心中は息子以上に必死になっていた様だ。ただ、扉の向こうからの反応は全くない。


結愛「守、悪い。ぶち破るぜ!!」


 結愛が勢いよく扉に体をぶつけると中から真希子が倒れ込んできたので守が下から受け止めた、社長によるとどうやら用を済ませた後でちゃんと服は着ている様だ。

 守は母をすぐそばに寝かせて救急車と警察署にいる美恵に電話をした。


美恵(電話)「守君、落ち着いて。すぐに文香と行くから現場をそのままキープしておいて。」


 電話を受ける守の声は何処か暗かった、母を亡くしたかもしれないので当然だ。


守「分かった・・・、外に出ておいた方が良い?」

美恵(電話)「うん、その方が良いかも。すぐに行くからね。」


 5分後、数名の警官と共に美恵と文香が駆けつけた。家の周辺に規制線が張られ警官達が家の中に流れ込む様に入って行った、結愛はいつの間にか消えてしまっていた。


文香「それで・・・、守君が外で待ってた時に中々出てこなかったから様子を見に行ったって訳ね。」


 流石に亡くなった事が報道された社長に知らされたなんて言えない。


守「うん、そこにある母さんのくる・・・、あれ?」


 守は自らが立っていた場所を指差した、何故か真希子のスルサーティーが消えていた。


美恵「どうしたの?」

守「そこにあったはずの母ちゃんの車が無くなってて。」

美恵「真希子さんの車って確か「紫武者」のスルサーティーだよね。守君が乗って行った訳では無く?」

守「俺は別に車があるもん、ほら。」


 守は母に買い与えられた車の方向を指差した、本人の車はちゃんと残っていた。

 そんな中、真希子が救急車で運ばれた。母はやはりピクリとも動かなかった。


守「俺も一緒に行ってくる・・・。」

文香「そうね、それが良いかも。後で病院に行くからお話、聞かせてね。」


 救急車の車内で救急救命士が心臓マッサージを続ける中、守は祈り続けた。先程結愛に言われた言葉はきっといつもの悪い冗談だろう、そう思いたかった。


守「母ちゃん、母ちゃん・・・。」


救急車が病院に到着し、真希子は救急治療室に運ばれた。ただ医師は守をすぐに呼び出し、号泣しながら告げた。


医師「宝田 守さんですね、残念ですがお母様は既に息を引き取っておられます。」


 結愛の言葉は冗談ではなかったらしい、その事を知った守は初めて泣き崩れた。虚しく鳴り響く心電図の電子音、恋人に続き母までも守の側からいなくなってしまった。

 守は、再び孤独になった。

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