6. あの日の僕ら2 ㊱~㊵


-㊱ 事故の理由-


 守は訳が分からなくなっていた、何処からどう見ても目の前にいるのは先程まで鍋を振っていた中華料理屋の店主だからだ。


守「待ってくれよ、今までそんな素振りしてなかったじゃねぇか。」

龍太郎「のほほんと暮らしたかったからずっと隠してたんだ、悪いな。俺は警視総監で母ちゃんは警視、ずっと義弘に関する事件を調べているんだ。」

王麗「あんたの母ちゃんと情報交換しながらね。」


 王麗が警察手帳片手に裏庭に出て来た、龍太郎も同様に警察手帳を出している。


王麗「実はあんたの母ちゃんに貝塚財閥の筆頭株主になってくれって言ったのは私なんだよ、ずっと義弘を監視出来る様にね。」

守「話がデカすぎる・・・、頭がおかしくなりそうだ。」

結愛「それにおば様が筆頭株主になっている理由が警察絡みだったなんて驚きだぜ。」

守「え・・・、結愛も知らなかったのか。」

結愛「龍さん達が警察の人間だってことを知ったのが今日だからな。」


 大企業の社長は会社の株主の事を全て知り尽くしている物だと思っていた守、それに走り屋である自らの母も警察に協力していたとは想像もしていなかった。


結愛「それでよ、光明から聞いたんだけど暴走車事件があった日に貝塚技巧の工場長室に仕掛けた隠しカメラに茂手木の姿が映っていたらしいんだ。」

守「茂手木って確か古文の・・・。」

結愛「そう、ほら昔俺ん所の株主総会にいただろ?義弘派閥の人間として。」

守「確か投資家だって言ってたっけ、それで茂手木がどうしたってんだよ。」


 結愛は守の言葉を聞いてため息をついた。


結愛「それがな、悟が茂手木に呼び出されて一緒に出ていったって言うんだよ。悟の手には大きな風呂敷があったらしいんだ。」

龍太郎「今風呂敷って言ったか、どれ位の大きさだ?」

結愛「やたらと食らいついてくるな、確か花見や運動会の弁当位の大きさって言ってたよ。」

龍太郎「花見や運動会の弁当・・・、って事は重箱だよな。母ちゃん、確かあの山小屋のそばに捨てられてたよな。」

王麗「ああ、それに風呂敷も一緒だったよ。」

龍太郎「その風呂敷って何処にあるんだ?」

王麗「確かあそこに・・・。」


 王麗は店内からフリーザーパックを出して来た、中には押収したと思われる黄緑色の風呂敷が入っている。


結愛「それだよ、光明も黄緑だって言ってたもん。」

龍太郎「という事は・・・。」

王麗「だろうね、父ちゃん。そろそろやるかい?」

龍太郎「待ってくれ、1つ確認しないといけない事がある。」


 慎吾に電話をしようとした王麗を引き止めた龍太郎。


王麗「何を確認するんだい?」

龍太郎「結愛ちゃん、知ってたらで良いんだが安全装置の売却額は大体いくらだ?」

結愛「確か200万って言ってた様な・・・、そういう事か!!」

龍太郎「母ちゃん、茂手木と悟を逮捕だ!!」

王麗「もう電話したよ、父ちゃん。」


 王麗はスピーカーホンにして携帯を渡した。


慎吾(電話)「警視総監、茂手木も逮捕ってどういうことですか?」

龍太郎「贈収賄以外に何があるってんだ、めっちゃん。」

慎吾(電話)「分かりました、裁判所に連絡してすぐに逮捕状を出して貰います。」


 慎吾が急いで電話を切ると龍太郎は煙草を深く吸った。


王麗「これで一件落着だね、父ちゃん。」

龍太郎「いやまだだ、重岡が義弘の時みたいに保釈金を支払う可能性がある。重岡の事も調べておかないと。」

結愛「それは無いよ、うちの株を売って義弘の保釈金を払ってから重岡は無一文になったって光明に聞いたからな。」

龍太郎「何で光明がそこまで知っているんだ?」

結愛「念の為に光明が2人の家にも隠しカメラを仕掛けていたからな。」


-㊲ 取り調べ開始-


 翌日、本人に知らされる事なく裁判所から我原 悟の逮捕状が出された。それが故に龍太郎が自ら取り調べを行う事となった、悟は貝塚技巧に入社してから週に幾度も松龍に通っていたので誰よりも龍太郎が相手した方が話しやすいと思われたからだ。

 いつも通り岡持を片手に警察署に到着した龍太郎は一先ず慎吾に確認する事にした。


龍太郎「めっちゃん、悟は取調室にいるんだよな?」


 すぐそばに他の署員がいるのでただの友人として対応する慎吾。


慎吾「勿論だよ、それよりちゃんと料理作って来たのか?」

龍太郎「当たり前だろ、俺が忘れて来た事があるか?」


 念の為に岡持の中身を確認させる龍太郎、そこには悟が昔から好きだった麻婆豆腐丼と油淋鶏が入っていた。


慎吾「龍さん、俺の唐揚げは?女将さんに頼んでいたんだけど。」

龍太郎「母ちゃんに?今日は美麗(みれい)と出かけているぞ。」


 慎吾の言葉を聞いて携帯を確認する龍太郎、確かに王麗からメッセージが入っていた。


王麗(メッセージ・中国語)「姪家さんが唐揚げ丼を注文してたよ、今日の取り調べの時に持って行ってやんな。」

龍太郎「分かるか!!」


 龍太郎は中国語が全くダメなので分かる訳が無い、中国で料理修業をしていた時も張朴が日本語で丁寧に教えていたので余計だった。

 龍太郎はその場で王麗に電話を掛けた。


龍太郎「母ちゃん、中国語でメッセージ送るなって何度も言っただろう?」


 そう、このような件は今回が初めてではない。


王麗(電話)「悪かったよ、直前まで美麗(メイリー)と中国語で話していたから許しておくれ。」

龍太郎「仕方ねぇな・・・、それにしても何であいつは中国語が達者なんだ?」

王麗(電話)「そりゃあたしと父さんが教え込んだからね、当然だよ。」


 電話を切った龍太郎は後で美麗が唐揚げ丼を持って来ると告げて悟の待つ取調室に入った、悟はパイプ椅子に深く腰を掛けてうなだれていた。


悟「何で・・・、龍さんがここにいるんだよ・・・。」

龍太郎「お前が好きだったものを持って来たんじゃねぇか、ほら食えよ。」


 岡持から持参した2品を取り出した龍太郎、料理を見た悟は涙を流した。


悟「食って良いのかよ。」

龍太郎「当たり前だろう、ダメなら持って来ねぇよ。」


 店主の言葉を聞いて涙ながらに蓮華を手にする犯人。


悟「頂きます・・・。」


 ゆっくりと両手を合わせて感謝する悟、きっと最近までろくに食事を摂っていなかったんだろう。

 悟は龍太郎が松龍を開店させて以来初めてだという位に美味そうな表情をしながら麻婆豆腐丼に食らいついた、正直悪い人間には見えない。


龍太郎「相変わらず美味そうに食うな、今日は特別だ。」

悟「何言ってんだよ、美味い物を不味そうに食う事の方が難しいだろうが。」


 最近何処かで聞いた台詞だったが何よりも嬉しい言葉だった。


悟「それでどうした、ただ食い物を持って来てくれた訳じゃないんだろ?」


 何かを察した悟は龍太郎に質問した、どうやら勘が冴える人間らしい。


龍太郎「お前、この写真の人を覚えているか?」


 警視総監はやんわりと会話を始める為にある男性の写真を見せた。


-㊳ 怒りの取り調べ-


 警視総監がある男性の写真を見せた時の犯人の反応は正直言って薄かった、あまり印象に残っていなかったのだろうか。


悟「確か・・・、そうだ。工場見学に来た五味光明さんだよ!!」

龍太郎「そうだな、でも本当にそれだけか?」

悟「どういう意味だよ。」


 龍太郎は悟が自分の工場を支える親会社の事をちゃんと把握しているか改めて把握したかったのだ。


龍太郎「仕方のない奴だな・・・、お前は親会社の社長夫婦の事を忘れたってのか?」

悟「忘れている訳が無いだろう、貝塚結愛社長と貝塚光あ・・・、あ!!」

龍太郎「そうだよ、お前の工場の見学に行ったのは副社長の貝塚光明さんだ。お前には言ってなかったが工場見学に紛れて隠しカメラを仕掛けて貰っていたんだ。」

悟「何だって?!どうしてただの中華料理屋の龍さんがそんな事を!!」


 龍太郎は警察手帳を取り出した、「警視総監 松戸龍太郎」と書いてある。


龍太郎「これで分かっただろう、俺が今ここにいる理由が。」

悟「十分だ、それで何が聞きたい?」

龍太郎「レンタカー屋からの盗まれた車で犯行が行われた暴走車事件の時、お前は何処にいた?」

悟「職場だよ、取引先の方と仕事の話をしていたんだ。」

龍太郎「本当か?」

悟「な・・・、何だよ。」


 龍太郎は光明が工場長室に仕掛けていた隠しカメラの映像を出した。


悟「これは何だよ、俺は知らねぇぞ!!」

龍太郎「それもそうだな、副工場長の島木さんしか知らない事だったんだからな。」

悟「島木め・・・、後で覚えていやがれ、とっちめてやる・・・。」

龍太郎「それはどうかな?」

悟「何だって?!」

龍太郎「まぁ、見てみろって。」


 龍太郎は映像を少し早送りした、そこには悟と茂手木の2人が映っていた。悟が両手に重箱を抱えていた。


悟「ほら、取引先の人と話していただろうが。」

龍太郎「取引先との会話で重箱なんて必要なのか?」

悟「誰だって腹が減るだろうがよ。」

龍太郎「時計を見てみろ、運動会でも花見でも無いのにあんながっつりとした弁当を食う奴がいるか?」

悟「食いしん坊だったんだよ、俺も茂手木さんも。」

龍太郎「お前今、「茂手木」って言ったな?」

悟「な・・・、何だよ・・・。」


 龍太郎は悟の言葉を聞き逃さなかった、そして街中に設置された監視カメラやオービスの映像を出した。


龍太郎「お前は警察の人間の目が暴走車事件で街中に集中している中で貝塚財閥の大株主である茂手木と車で山小屋へ行き重箱の中に入っていた200万円を賄賂として茂手木に渡したんだ、マスメディアに圧力をかけて工場で起こった事件を全て隠蔽してもらう様に仕向ける為に。」

悟「げっ・・・。」

龍太郎「その200万円を用意するのに貝塚社長が設置していた安全装置を全て売却したんだな?」

悟「くっ・・・。」

龍太郎「それが故に好美ちゃんは死んだんだぞ、俺の娘とも言って良い好美ちゃんを皆からお前が奪ったんだ!!それでもまだ、言い逃れするつもりか?!」

悟「待てよ、倉下の両親は徳島にいるじゃねぇか!!お前の娘じゃないだろう!!」

龍太郎「あの子は学生時代に俺の店でアルバイトをしていたんだ、美麗と同様に自分の娘として可愛がって何が悪い!!」

悟「ふん・・・、たかがアルバイトに何でそこまで感情移入出来んだよ。」

龍太郎「「たかがアルバイト」だと?!俺は店に来る皆を家族として迎え入れるって決めているんだ、お前みたいに「たかが」って言葉は一切出さない!!それだからお前は従業員の安全や業務を二の次にして得意先との交友に経費を使いまくった挙句にトラックや安全装置を売ったんだろうが!!守君に聞いたぞ、好美ちゃんの葬式でご両親に言ったそうだな、「好美ちゃんが死んだのは監督不行き届きが故」だって?!ふざけんな!!」


-㊴ 事件の終末-


 龍太郎は今までに無い位に感情的になっていた、茂手木に賄賂を渡し自分の身を守ろうとして「大切な娘」を奪った男の前で大粒の涙を流していた。


龍太郎「返せよ!!俺や守君、そして皆に好美ちゃんを返してくれよ!!「たかがアルバイト」じゃねぇんだぞ!!いい加減にしろよ!!」

悟「・・・。」

龍太郎「何とか言えよ!!無言のまま逃げれるとでも思ってんのか?!」

悟「待てよ・・・。俺は義弘に言われてやっただけだよ、証拠もあるだろうがよ。」


 龍太郎は悟のデスクや実行犯の持っていた手紙について思い出した、しかしそれらについても調べが付いている。

 龍太郎は押収した手紙を取り出して告げた。


龍太郎「これの事か?」

悟「それだよ、ほら「貝塚義弘」って書いてあるだろう。」

龍太郎「嘘を言うな、これを見てみろ。」


 龍太郎は再び監視カメラの映像を見せた。


龍太郎「その手紙は両方共お前がパソコンで作成して「貝塚義弘」と名前を付けたんだ、全ての罪を既に亡くなっている義弘に擦り付けて逃げる為にな。」

悟「指紋は無かったんだろう、何処に証拠があるってんだよ。」

龍太郎「おい、俺は1度も「指紋は無かった」と言ってねぇぞ。何で知っているんだ。」

悟「いや・・・、えっと・・・。」

龍太郎「知っているには理由があるんだろ、作成した文書や封筒を扱う時に手袋をして指紋が残らない様にしていたからなんだろ!!」

悟「じゃ、じゃあトラックはどうなる!!俺は被害者なんだぞ!!それにどうやって14台も一気に売却したって言うんだ!!」

龍太郎「馬鹿野郎!!しらばっくれるのもいい加減にしろ、従業員が帰った後に中古車買い取り業者の人間を工場に呼び出して査定と運転をさせたんだろうが!!今お前が言った「売却した」って言葉が何よりの証拠だよ!!お前が工場長になってから貝塚技巧が経営難に陥っていたのも調べがついてんだよ、俺のバックには誰がいると思っているんだ!!それに中古車買い取り業者にお前個人の名義でトラック14台が売却されたって記録も残っているんだぞ、貝塚社長に協力をお願いして調べて貰ったんだ!!幸か不幸か、お前がトラックを売った業者は貝塚技巧と同じで貝塚財閥の子会社だったんだからな!!」

悟「何だって・・・、あの女(あま)・・・。」

龍太郎「あの女だと、親会社の重役の顔もろくに覚えていないお前がよく言うよ!!経営難に陥って経費の足しにするって売ったらしいが実際は茂手木に借りていた金を返す為に全て使ったんだろうが!!自己中心的な理由で好き勝手しやがって、もう逃がさんぞ!!」

悟「畜生!!」


 その後のニュースで我原 悟と茂手木は贈収賄を中心とした罪で逮捕されたと全国に伝えられた、特に悟は殺人罪もあるので暫くの間表を歩く事が無いだろうと報道された。

 逆に贈収賄のみの茂手木は秘書が本人の代わりに保釈金を払ったのですぐに外に出て来たという、テレビ画面の茂手木は何も無かったかのような無表情をしていた。その顔は美麗からひき逃げで秀斗を奪った連続殺人犯に似ていた。


龍太郎「そう言えばあいつの名前聞いてなかったな、後でめっちゃんに聞くか。くれぐれも美麗には言わない様にしないとな。」


 そう呟きながら龍太郎は警察署を後にした。

 数日後、裕孝と香奈子の結婚式が行われた。教会の一番前には好美と佳代子の笑った顔が描かれた大きなイラストが飾られていた、どうやら香奈子のリクエストで美麗が描いたらしい。美麗の才能に限界は無いのだろうか・・・。


美麗「香奈子、裕孝君、本当におめでとう!!」

桃「ドレス、似合ってんじゃない。あたしも正に我儘言ってみようかな。」


 香奈子が着ているドレスはレンタルだが裕孝のボーナスが一気に飛んで行ったと言う。


香奈子「2人共ありがとう、好美がここにいてくれたら良かったのにね。」

桃「本当だよ、あの子もドジしなかったらこの場にいるのにね。」

美麗「桃、私が描いたイラストって意味が無いの?この音楽も好美が作ったDTMじゃん。」


 新郎新婦入場時に流れているオルゴール調の音楽は昔好美が趣味で作成した物だった様だ、折角なので利用させて貰う事にした。


桃「そう言えばあんた、何か忘れてない?」

香奈子「本当だ、あの時のお金払ってないや・・・。」


-㊵ 死者からの手紙-


 女子2人が新郎新婦を祝福する中、守は辺りを見廻していた。その様子を見て不審に思った桃が香奈子に分からない様に小声で尋ねた。


桃(小声で)「さっきから何やってんのよ、お祝いする気ある訳?」

守(小声で)「結愛がいないんだよ、招待状はちゃんと渡したはずなのにな・・・。」


 ずっと社長を探す守の下に式場の従業員が近づいて来た。


従業員「あの・・・、恐れ入りますが宝田 守様で宜しいでしょうか。」

守「はい、そうですが何か・・・。」

従業員「貝塚財閥の社長様からお手紙を預かっているのですが。」

守「結愛から俺に?分かりました、受け取ります。」


 守が白い封筒を2通受け取ると従業員はその場を去った、手紙を見てみると1通は香奈子宛でもう1通は守宛らしい。


守「これは祝電で読んでもらった方が良いんじゃないかな・・・。」


 そう思った守は先程の従業員を探した、しかしどこに行っても見つからなかったので受付に手渡した。


受付「お預かりいたします、宝田様のお名前でお預かりすれば宜しいでしょうか?」

守「「貝塚結愛」でお願いします。」

受付「あの貝塚財閥の結愛社長の事でしょうか?」

守「そうですけど、何かありましたか?」

受付「失礼ですが、貝塚社長は先日竜巻に巻き込まれて亡くなったとお伺いしたのですが勘違いでしたかね?」

守「いや・・・、初めて聞きましたけど。」

受付「そうですか・・・、ではお預かり致します。」


 守は自分宛の手紙を懐にしまって式場に戻った、教会では新郎新婦が誓いの言葉を牧師の後に復唱しようとする直前だった。

 一番の見せ場に間に合った守は音を立てる事無く桃の横に座った、一息ついて親族の席の方を見ると光江と隆彦が涙を流して震えていた。


牧師「今この2人は神の下で夫婦となろうとしています、新郎小比類巻裕孝、貴方は目の前の女性を妻とし、病める時も健やかなる時も愛する事を誓いますか?」


 どうやらこの日は光江に気遣って母方の姓を名乗っている様だ。


裕孝「はい、誓います。」

牧師「宜しい、新婦吉馬香奈子、貴女は目の前の男性を夫とし、病める時も健やかなる時も愛する事を誓いますか?」


 香奈子は産みの父である隆彦と再会して以来ずっと「吉馬」の姓を名乗っている。


牧師「さぁ、皆さんシャッターチャンスですよ!!Then, you kiss to the bride!!」


何故かここだけ英語と言う何処かで聞いた様な件だが気にしないでおこう、カメラを構えた者達を集めた牧師の言葉の後、2人はキスをした。

 新郎新婦がキスを交わした瞬間、シャッターの音が鳴り響いた。


桃「香奈子、おめでとう!!」

美麗「この景色を好美にも見せたかったよ」


 桃と美麗は涙を流していた、その間に守は携帯にその光景を収めていた。


美麗「守君、後で皆に送ってね。」

桃「約束だからね。」

守「当たり前だろう。」


 式が終わり、披露宴会場に移動する間に守は結愛からの手紙を読んだ。


結愛(手紙)「宝田 守様 すまんな守、折角の招待だが俺は急用が出来て出席できない。待たせている人がいて遠い所に行くので急いで出発する必要があったから許してくれ。」


 ただ守は最後の言葉が気がかりで仕方がなかった。


結愛(手紙)「P.S. 好美ちゃんに会ったら守は元気でやってるって伝えておくな。貝塚結愛」

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