6. あの日の僕ら2 ㉖~㉚
-㉖ 見え始めた真相-
龍太郎は少し焦りながらも冷静さを取り戻して会話を続ける事にした、本人からすれば署長を通して警視総監である事がばれないと良いのだがとただただ願うばかりであった。
龍太郎「本当に頼むぜ、中華居酒屋をしながらひっそりと過ごしたいんだからよ。」
署長(電話)「悪かったよ、それでどうしたって言うんだい?」
龍太郎が周りに誰もいないかを確認させると再び保留音が鳴った、どうやら署長室に向かったようだ。
署長(電話)「すみません、警視総監。」
龍太郎「良いか?よく聞いてくれ、今俺と母ちゃんは義弘が生前暮らしていたとされている山小屋にいるんだが、そこに何があったと思う?」
署長(電話)「食べカスがあるとはお伺いしておりますが他に何か?」
龍太郎「義弘の遺体だ、しかも死後硬直の様子から1週間は経っている可能性がある。そこでお前に何点か頼みたい事があるんだ。」
署長(電話)「どの様なご用件でも何なりと仰ってください。」
龍太郎「じゃあ一先ずお前が昼に食った天丼を俺にも食わせてくれ。」
署長(電話)「へ?天丼ですか?」
王麗「こんな時に馬鹿な事言ってんじゃないよ。」
電話の向こうにいる署長にも聞こえる位の大きな音を立てて王麗が拳骨した、この夫婦の主従関係はいつでも変わる事はない。
龍太郎「痛ってぇなぁ・・・、母ちゃんは相変わらず強すぎんだよ。」
王麗「あんたが下らない冗談を言うからだろ、美麗が聞いたら呆れるに決まっているね。」
龍太郎「まぁ、一先ずだ。天丼は冗談として取りあえず義弘の遺体を検死と司法解剖してくれるか?出来るだけ正確に死んだ日を知りたい。」
署長(電話)「分かりました、遺体を取りにすぐに向かいます。」
龍太郎「それとだ、義弘の個人口座の入出金履歴を調べてくれ。ここ1カ月の物で構わない。」
署長(電話)「貝塚財閥の結愛社長に頼めば何とかなるでしょう、聞いてみます。」
龍太郎「急いでくれ、頼む。それと、この前の犯人とまた話がしたいんだがいいか?」
署長(電話)「勿論大丈夫です、なるべく早く手配致します。」
王麗「父ちゃん、我原 悟はいつ逮捕するんだい?」
電話をきったばかりの龍太郎に間髪を入れることなく王麗が声をかけた。
龍太郎「証拠が揃い次第だ、これで守と好美ちゃんの無念も晴れるだろう。」
2人が山中で捜査をしていた前日、そう、夫婦が隠しマイクを通して貝塚技巧の従業員と思われる客の会話を聞いていた時だ、守は真帆と隣町の居酒屋で呑み直していた。真帆が帰れなくなってはいけないと考慮した結果だ。
真帆「こんなに呑んだの大学の新歓以来だよ、楽しいね、守兄ちゃん。」
守「楽しいからって呑みすぎるなよ、明日休みなのか?」
真帆「休みじゃなくても関係無いもん、今が楽しかったらいいんだもん!!」
その言葉通り真帆は後先も考えずに呑みすぎたらしく、ふらふらになっていた。守は系に電話で真帆の家の場所を聞いて送っていく事にした。
言われた通りの場所に着くとすぐさまインターホンを鳴らした、すると中から真帆と瓜二つの女の子が出てきた。
女の子「守兄ちゃん、久しぶりだね。」
守「もしかして、真美ちゃんか?」
そう、そこにいたのは真帆の双子の妹である森田真美だった。大人になってもそっくりなのはやはり変わらないようだ、これが一卵性双生児というやつなのだろうか。
真美「うん、真美だよ!!・・・って、お姉ちゃんふらふらじゃん。」
守「かなり呑んじゃったみたいでね、送って来たんだよ。」
真美「ごめんね、迷惑かけたね。今度お礼とお詫びさせるからね。」
守「そこまで気にしなくてもいいよ、俺も学生の時よくあったし。」
そう、今の真帆みたいに何回も好美を自宅まで送って行った事があったのでこういった事には慣れてしまっていた。
守「ははは・・・、そうだったよな・・・。」
不意に好美の事を思い出した守は少し切ない気分になっていた。
-㉗ 一歩を踏み出す-
少し浮かない表情を見せる守の様子を見て自らの言動に気掛かりな事があったのではないかと懸念し始めた真美は一息ついてから守に声を掛けた。
真美「真美、何かまずい事言っちゃった?」
自分の事を名前で呼称するのも姉の真帆と変わらない、これも一卵性双生児だからだろうか(※因みに作者は二卵性双生児です)。
守「いや、そんな事無いよ。ちょっと死んだ昔の彼女の事を思い出しただけさ。」
真帆「また思い出してんの?いい加減にしろ、守!!」
顔を赤くした真帆は酔った勢いで守に怒鳴りつけた、いつも付けている「兄ちゃん」を忘れる位だから相当だ。
真美「お姉ちゃん、呑み過ぎだから!!守兄ちゃん、本当にごめんね。」
守「大丈夫だよ、圭にも言われたから。」
真帆「目の前にいる可愛い女の子がずっと大好きだって言ってんのに、ずっと過去の恋愛を引きずってるからってその気持ちに応えないなんてどうかと思うけどね!!」
真美「お姉ちゃん、家に入ってよ。近所迷惑になるじゃん。」
真帆「真美は黙っててよ!!」
悪くないはずなのに怒鳴りつけられた真美は泣きながら家の中に駆けこんでしまった。
真帆「あのね、守兄ちゃんがどれだけその人を想っててもその人とはもう会えないの!!会えない人の事を想っても付き合えないの、だったら今すぐにでも会える人と新しい一歩を踏み出そうって思わない訳?!」
守「でも俺・・・。」
真帆「でもじゃない!!いい加減にしてよ、ずっと真帆が「大好き」って言ってんのにあやふやにして返事くれて無いじゃん、それに何年守兄ちゃんの事探したと思ってんの?」
確かにそうだ、真帆が守を探し続けた約10年は決して短いとは言えない。
守「それは本当に申し訳ないと思ってる、ただ今は死んだ好美の無念を晴らす事を優先させたいんだ。俺は貝塚技巧の工場長を許すつもりはない、好美を殺したあいつを・・・。」
すると泣いて家に入って来た真美を見て玄関前の様子を見に来た圭が守に声を掛けた、どうやら真帆と真美の両親と晩酌をしていて少し出来上がっているらしい。
圭「守、その間も真帆ちゃんに待たせるつもりなの?さっきから聞いてたけど私も真帆ちゃんがさっき言ってた事は正しいと思うよ。」
圭はビンタをしなかったが、守はされた時の様に何処かに痛みを感じた。きっと「心」だろう、それが故に泣き崩れてしまった。
圭「あんたが泣いてどうすんの、それが真帆ちゃんへの答えな訳?」
何処か冷たい言葉を投げかける圭、あの日駅で密かに告白したのと同一人物とはとても思えない。今の守の事は好きになれないのだろう。
圭「答えてあげなよ、真帆ちゃんはあんたの事だけを一途に想って探していたんだよ。」
守「真帆・・・、ちゃん・・・、ありがとう・・・。」
泣き崩れる守の目の前にしゃがみ込んで頭を優しく撫でながら囁いた、真帆の言葉とそれに対する守の答えを決して聞きたくなかった圭は急いで家の中に逃げ込んだ。中から聞こえて来る声から様子を伺うと、真美が中で呑みまくっているらしく、一緒に呑む事にした様だ。
真帆「一回だけ言うよ、守兄ちゃん。大好きです・・・、一人の女として守兄ちゃん、いや守の力になりたいです。ずっとこの瞬間を待ってた真帆と・・・、付き合って下さい・・・。」
涙を流しながら守は答えた、玄関からこぼれる電灯の光が優しく2人を包んでいた。
守「待たせて悪かった、本当にありがとう。圭や真帆ちゃんの言う通りだ、新たな一歩を踏み出さないといけない。前に進ませて下さい、宜しくお願いします。」
2人は感動の涙を流しながら唇を重ねた、結構な時間の間ずっと・・・。圭がその様子を遠くから眺めていた。
圭「待たせすぎだよ、守。真帆ちゃん、良かったね。私も・・・、一歩踏み出さないとね。」
-㉘ 進展する捜査-
久々の幸せに浸る守はゆっくりと顔を離した、息が荒くなっていたがすぐに落ち着きを取り戻した。2人は遠くから覗き込む圭に気付き少し顔を赤らめていた。
圭「今更何恥ずかしがってんのよ、暗い夜だけど道の真ん中で堂々とキスしてたくせに。見てるこっちが恥ずかしくなったわよ。」
守「良いだろうが、恋人と口づけするのは当たり前の事だろう?一先ず今日は遅いからもう帰るよ。真帆ちゃ・・・、いや真帆、じゃあね。圭もね。」
真帆・圭「うん、バイバイ!!」
守は新しい彼女が出来たが故に笑顔を隠せなかった、真帆の笑顔を思い出すだけで今は顔がにやけついてしまう。今は先程のキスの余韻に浸っていたかった。
次の日、署長から10人前の炒飯を作った直後の龍太郎の下に1本の電話が入った。
署長(電話)「お疲れ様です、警視総監。今お電話大丈夫でしょうか?」
龍太郎「ああ、勿論大丈夫だ。どうした?」
署長(電話)「先日の件なのですが、警察医による司法解剖と検視の結果、義弘の遺体は死後推定2週間との結果が出ました。また、結愛社長に頼んで義弘の口座に死亡する1週間前に7000万円もの預け入れがあったそうです。そこで預け入れに利用した銀行の店長から話を聞いてみたのですが、どうやら行方を眩ませている義弘に直接会った代理人が当時重箱に入った札束を積み上げて預け入れを依頼していたと言っています。」
龍太郎「やはりそうか・・・、分かった。ありがとう。」
署長(電話)「あの・・・、警視総監。犯人にはいつ会われますか?」
龍太郎「そうだったな、いつなら大丈夫そうだ?今から向かっても良いか?」
署長(電話)「勿論、どうぞ。」
真剣な表情で会話をする龍太郎に美麗が声を掛けた。
美麗「パパ、餃子3人前注文入ったよ。」
署長(電話)「餃子焼いてから来られますか?そんなに時間かからないでしょう。」
龍太郎「ああ・・・、焼くだけだからすぐに・・・。あ・・・、すまん。少しだけだが包まなきゃいかんみたいだから少し時間貰って良いか?今日思った以上に餃子が出てたの忘れてたんだよ、美麗に頼んでから行くわ。」
署長(電話)「分かりました、じゃあ到着する寸前位にご連絡頂けますか?」
龍太郎「ああ、分かったよ。」
龍太郎は餃子を急いで包んでいるとその様子を見た美麗が呆れた表情でため息をついていた。
美麗「パパ・・・、今日「餃子半額デー」なのにそれなりの量を準備してなかったの?」
龍太郎「すまん、まさかこんなに売れるとは思わなかったからやらかしたんだよ。実は今から焼く分だけ包んで焼いたら出前と用事に行かなきゃいけないんだ。悪いけどもうすぐ前半の営業が終わるから中休みの間に包んでくれるか?お小遣い奮発するから。」
美麗「嘘でしょ、今日安正とデートなんだけど。あ、迎えに来てもらうついでに手伝って貰おっと。」
龍太郎「あいつ、餃子包めんのか?」
美麗「一応教えたから大丈夫だよ、私とママ直伝。」
龍太郎「ははは・・・、そりゃ頼もしいわ・・・。」
確かに龍太郎の師匠である張朴から直接餃子作りを教わっていたので王麗は龍太郎と一緒に本格中華を作れるし美麗はいつも餃子作りを手伝っているので技術面は大丈夫なのだが、実は人に物を教えるのが得意では無かったのだ。安正にちゃんと技術が伝わっていると良いのだが・・・。
取り敢えず必要分の餃子を用意すると炒飯と一緒に余分に作った1人前の餃子を岡持に入れてバイクへと向かった、それを見た王麗がすぐさま反応した。
王麗「父ちゃん、「出前」かい?」
龍太郎「ああ、「炒飯と餃子」「両面焼き」、「五目」だ。」
王麗「分かった、お客さん待たせたらだめだよ。」
龍太郎がバイクに岡持を固定して警察署に向かうと美麗が不審に思った点を母に尋ねた。
美麗「ママ、今の会話おかしくない?わざわざ「出前」なんて言わないしいつもは餃子をご飯ものの先に呼ぶし、両面焼きなんてうちしてないじゃん。」
すると王麗が美麗を裏庭に連れて行き、秘密なので中国語で説明した。
王麗(中国語)「あれは暗号なんだよ、「出前」は「事件」、「炒飯と餃子」は「取り調べ」、「両面焼き」は「重要案件」、そして「五目」は「父ちゃんが行く」って意味なんだ。」
美麗(中国語)「そうなの?それなら先に言ってよ・・・。」
-㉙ 証言①-
王麗は娘に秘密の暗号について明かした後、辺りをずっと見廻していた。少し焦りの表情を見せているらしく、少し気を遣った美麗は母に声を掛けた。お客にバレてはいけない情報が含まれているかもしれないと思ったので勿論、中国語で。
美麗(中国語)「ママ、どうかした?」
王麗(中国語)「美麗、ここにあった唐揚げ弁当を見なかったかい?守君の所の真希子に頼まれて10人分用意したんだけど、1人前が見当たらないんだよ。」
美麗(中国語)「知らないよ、食べちゃったんじゃないの?」
王麗(中国語)「私はあんたと一緒に賄いの炒飯と父ちゃんが作り過ぎた麻婆豆腐を食べたじゃないか、本当に知らないのかい?」
美麗(中国語)「見て無いよ、さっきからずっと一緒にいたでしょ。」
王麗(中国語)「それもそうだね・・・、悪かったよ・・・。」
丁度その頃、警察署に着いた龍太郎は岡持片手に中に入って行った。そんな店主を美恵と文香が出迎えた。
美恵「あれ?龍さん、今日も出前なの?」
文香「私らは頼んでないけど・・・、誰?」
龍太郎「めっちゃんに頼まれて持って来たんだ、いるかい?」
文香「めっちゃんって・・・、聞いた事が無いけど誰の事かな?」
すると遠くから焦ってやって来た署長、「めっちゃん」こと姪家(めいけ)慎吾が急いで龍太郎を署長室に呼び込んだ。
慎吾「龍さん、やっと来たか・・・。腹減ったよ、早く早く。」
美恵・文香「署長!!」
龍太郎「ほら、こいつの苗字って「姪家」だから「めっちゃん」なんだよ。めっちゃんな、俺は嬉しいがいつも唐揚げ弁当ばっかりじゃバランス悪いぞ。だからそんな体形になるんだろうが・・・、偶には野菜炒め弁当とか頼んでだな・・・。」
慎吾「余計な事言わなくて良いから、早くこっち来て!!」
慎吾は龍太郎の背中を強く押して署長室の中に入って行った、そして中に入った瞬間中での会話を漏らさぬように扉をしっかりと閉めた後に2人は「警視総監」と「署長」の関係に戻った。
龍太郎「よし、誰もいないな?」
慎吾「はい、先程は大変失礼致しました、警視総監。」
龍太郎「構わない、俺達が同級生ってのは本当の事だからな。それにしても唐揚げ弁当を1つ持って来ておいて正解だったよ、やはりあの場で美恵ちゃん達が出て来ると思ったんだよな。」
そう、「松龍・唐揚げ弁当事件」の犯人は龍太郎だった。
龍太郎「あ、「宝田真希子様」って書いてんじゃん。こりゃ母ちゃんに一言言ってかないとまずい事になるし怒られちゃうな・・・。」
時すでに遅し、もう既に王麗はマジギレしている。
龍太郎は一先ず慎吾からの報告を聞く事にした。
龍太郎「さてと、状況を聞こうか。7000万円の入金があったのはいつか分かったか?」
慎吾「はい、こちらをご覧ください。結愛社長と銀行の店長のご協力の元で調べた義弘の口座の入出金履歴を印刷した物です。後例の「手紙」は実行犯以外の指紋無しです。」
龍太郎は慎吾から書類を受け取るとじっくりと目を通していった、特に入出金の日時。
龍太郎「指紋無しか・・・、そう言えばこの日付・・・、何か覚えがあるな。」
慎吾「あの警視総監、宜しいでしょうか。」
慎吾は龍太郎にある映像を見る様に促した、義弘の口座への入出金が行われた当時の銀行の監視カメラの映像だ。
龍太郎「確かお前の話だと代理人が銀行に直接金を持って来たって言っていたな。」
慎吾「はい、銀行の店長からそう聞いてます。」
龍太郎「「窓口」に直接だよな・・・。」
慎吾「大金ですので勿論そうかと、店長の連絡先を聞いてますのでお掛けになられますか?」
龍太郎「そうさせて貰おう、ここで話を聞きたい。」
慎吾は店長から手渡された名刺に書かれていた番号に電話を掛けてスピーカーに設定した、すると2人にとって聞き覚えのある声が響いて来た。
-㉚ 証言②-
2人が署長室の固定電話から銀行の店長に教えて貰った連絡先に電話をかけると2人にとって懐かしい声が聞こえて来た、どうやら店長も2人と同級生だったらしい。
店長(電話)「お電話ありがとうございます、私店長の弥勒(みろく)でございます。」
龍太郎「弥勒?聞き覚えのある名前だな・・・。」
銀行の電話に掛けている事を考慮した慎吾は「同級生モード」に戻った、龍太郎はその対応に安堵の表情を見せた。
弥勒(電話)「龍さんじゃないか、今日は出前なんて頼んでないぞ。」
龍太郎「すまんが別件なんだ、最近お前のいる店舗に警察官が行かなかったか?」
弥勒(電話)「ああ、来たよ。確か署長をしているめっちゃんも一緒に来たはずだぜ。」
慎吾「実はその事で電話したんだ、捜査に協力して欲しいから警察署に来れないか?」
弥勒(電話)「俺は良いけど、どうしてそこに龍さんが?」
龍太郎「長くなるから署で話すよ、すまんが協力してくれ。」
数分後、連絡を受けた弥勒が警察署に到着し、すぐさま慎吾が署長室に迎え入れた。龍太郎の秘密を知った弥勒は驚きを隠せない様子だ。
弥勒「何だって?!龍さんが警視総監だって?!」
龍太郎「みろちゃん、声がでかいよ、内緒にしているんだから。」
弥勒「悪い、でも驚かない奴なんていないはずだぜ。」
龍太郎「そうだな、それが普通か。さてと・・・、本題に入ろう。これはめっちゃんがお前の所から借りた監視カメラの映像で間違いないか?」
弥勒「ああ・・・、俺も出勤していた日だ。間違いないよ。」
龍太郎は預け入れのあった時間まで映像を動かした、窓口と行き交う客達がずっと映っている中で大きな重箱を持つ男性が映りこんだので龍太郎はその男性を指差した。
龍太郎「「義弘の代理人」として金を預け入れたのはこの男で間違いないか?」
弥勒「ああ、そいつだ。あまりにも高額だったので俺も一緒に窓口で対応したから間違いないよ。」
龍太郎「そうか・・・、分かった。そうだ、お前が知っていたらで良いんだがどうして「義弘」名義の口座に金が集まっているんだ?」
弥勒「どうやら、「義弘」派閥の株主たちが使っている口座らしいんだ。俺も結愛社長と協力して敢えて泳がしてる。そうだ、思い出した事があるんだ・・・。」
龍太郎「どうした?」
弥勒「この男ってこの直後に行方不明になったって聞いたけど本当なのか?」
龍太郎「うん・・・、俺達も今探しているんだが全く情報が無い・・・。まさか・・・、この為にあんな事を・・・。」
龍太郎は弥勒から聞いた情報により体を震わせ、拳を握って怒った。
龍太郎「あの野郎・・・、よし、例の実行犯を取り調べるぞ。」
その直後、龍太郎は再び岡持を持って取調室に入った。
犯人「またあんたか、俺から話せる事はもう無いぜ。」
龍太郎「そう言うなって悪かったよ、今日は特別に刻み叉焼を多めに入れておいたから許してくれよ。」
犯人「分かってるね、それで何を聞きたい?」
犯人が炒飯に食らいつくと龍太郎が改めて切り出した。
龍太郎「お前が手紙を受け取ったのはいつだったんだ?」
犯人「車を走らせた2日前だよ、今から丁度1週間くらい前かな。」
龍太郎「例の封筒は本当に直接受け取った訳では無く郵便受けに入ってたんだな?」
犯人「ああ・・・、嘘じゃない。」
犯人の言葉を信じた龍太郎は「あの男」の写真を見せて敢えてもう1度確認した。
龍太郎「「この男」に見覚えはあるか?」
犯人「誰だそれは、何処かのお偉いさんか?」
龍太郎「そうだ・・・、今は言えないが後々分かるだろう。」
犯人は本当に雇われただけで何も知らなかったらしい。
犯人「なぁ・・・、お偉いさん。後は何を聞きたいんだ?」
龍太郎「いや、もう大丈夫だ。正直だったあんたの刑は大分軽くなるだろう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます