第43話 やられ役のもう一つの能力

 いよいよEクラスの勉強会も佳境を迎えようとしている。


「ふう。爆発させたいな~」


「ボ、ボマーちゃん。今は勉強中だから、集中しよ?」


 サチが今度はボマーちゃんを教え始めたが、さすがに苦戦しているようだ。


「でも私、爆破させたくてムラムラするの。集中できないわ。ああ、サチさんが爆発するところを見たいな」


「え? ダ、ダメだよ、ボマーちゃん?」


「サチ……ちょっと、離れておこうか」


 サチの命の危険を感じて、彼女を引っ張って俺の後ろに下げた。

 ダメだ。ボマーちゃんは爆発のことしか考えていない。


「ったく。今度はボマーちゃんか。仕方ない。新しい作戦を考えて……」


「諸君、そろそろ0時だぞ」


 俺が作戦を告げようとした所で、先生の声が聞こえてきた。


「ち、もうそんな時間か」


「ど、どうしよう」


 勉強はうまくいっていた。足りないのは時間だった。

 やはり、たった一日ではどう頑張ってもAクラスに勝てるほどの学力を全員に身に着けさせるのは不可能だ。

 それはクラス全員が感じ取っていたようだ。


「あ、諦めないで! まだテストが終わったわけじゃないんだからさ!」


「アリス様……そうですね」


 アリスの必死の叫びで、なんとか諦めムードではなくなった。

 それでもやはり現段階では、Aクラスに勝つのは不可能だと言っていい。


「かーくん、もうダメなのかな」


「まあ、最後にもう一つだけ作戦がある」


「ほんと!?」


 仕方ない。最後の賭けに出るか。

 実は勉強を教えながらも、クラス全員が勝つ方法を考えていた。

 そして思いついた。

 ただ、うまくいくか分からないので使いたくなかったのだが、もう他に方法が無い。


「なあ、みんな! ちょっと集まってくれ!」


「どうしたの?」


 俺の声を聞いて、Eクラス全員が集まって来る。


「いいか。よく聞け。明日、『ある作戦』を実行する。でも『聞かれたら』まずい。だから小声で話すぞ」


 俺はギリギリ皆に聞こえるような、小さめのボリュームで話し始めた。


「作戦? 何をするの? それに『聞かれる』って誰に?」


「『神』だよ。とりあえず時間が無い。説明に入るぞ」


「神? まあいい、説明してくれたまえ」


 アリスと解説者が不思議な表情を作っているが、無視して説明を始めることにした。


「今回は俺の属性開放で得た能力を使うことにする」


「それって、『不幸を呼び寄せる』ってやつ?」


「いや、もう一つの方だ」


「もう一つ? あったっけ?」


「ああ」


 俺が属性開放で得た能力は『二つ』だった。

 一つは『不幸を呼び寄せる』。これはサチのデート大作戦で活躍した能力だ。

 そして、もう一つは……


「『敵対する相手を最強にしてしまう』って能力だ。そうだよな、解説者?」


「うむ。鎌瀬君がその能力を全開にした場合、たとえ相手が虫でも、それは最強の虫となってしまうのだ」


 『敵を最強にする』。

 これは使いどころがない能力と思われていたが……


「その能力をどう使うの?」


「こう使うんだよ」


 俺は小声で全員に耳打ちをした。 

 今から『やられ役だからこそできる』最後の作戦が始まろうとしている。


―――


☆鎌瀬君の能力については16話を参照にしてくださいませ☆

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