第26話 危険なEクラスチーム、出動!
「属性犯罪者が現れました! 危険なので、学生は外を出歩かないでください!」
校内に広がる代理ちゃんの緊迫したアナウンス。
「む? どうやら『属性犯罪者』が出たみたいだね」
「属性犯罪者か……」
属性犯罪者とは何か?
それは自らの属性で犯罪をしている奴のことである。
属性の能力は強力なものが多い。
それを悪用しようとする奴がいても不思議ではない。
本来ならあまり関わり合いになりたくない奴らだ。
クラス全員がそう思っているだろう。
「よーし! 諸君、出番だぞ! 我々Eクラスが解決してやろうではないか!」
しかし、ここで先生が空気の読まない発言をする。
「……また、始まったよ」
警察とかに任せておけばいいのに、この変人教師はなぜか自分たちのクラスで解決しようとするのだ。
「まあ、先生も鬼ではない。いつも通り、自由参加で構わんぞ」
微妙に教師としての良心が残っているのか、参加するかは生徒の意志に任せている。
当然ながら俺はいつも参加していない。
『やられ役』の俺が戦いに出ても役立たずなだけだ。
しかも下手をすれば大怪我をする可能性もある。
つーか、死んでもおかしくない。
「よし、私が行くよ!」
アリスが意気揚々と挙手をした。
彼女は主役だ。
人を助け、悪を懲らしめることを喜びとするアリスにとって、犯罪を解決するのは苦でもなんでもない。
おまけに人助けと悪の成敗で大量のポイントも貰えるだろうし、稼ぎ時だと言える。
まあ、アリスは金になんて興味無いかもしれないが……
「来るのはアリス君だけかね?」
アリス一人でも十分すぎる戦力であるが、酔狂な人物はアリスだけではない。
「ああ、爆破したい。爆破したいよぉぉ~! ねえ、私も行っていいでしょう?」
次に手を上げたのは、クラス一の危険人物で問題児のボマーちゃんだ。
彼女は触れたものを爆弾に変えてしまう『ボマー』属性を持っている。
「相手は犯罪者だから、別に爆破してもいいんだよね?」
ボマーちゃんの赤い目が光る。
それを見た何人かは後ずさっていた。
彼女は普段から、何かをを爆発させたいという欲求が異常に強い。
犯罪者相手なら、その欲求をぶつけてしまってもいいと思っているようだ。
「うむ。よかろう。君も一緒に来たまえ。ただし、味方は爆破せんようにな」
「うん。『できるだけ』気を付けるね」
いや、そこは『絶対に』だろう。間違えて爆破されたらたまったもんじゃねーぞ。
まあ、何でも爆発させることのできる彼女は、戦闘力という面においては非常に強力な存在だ。間違いなく戦力になる。
「ふふふ、思う存分いじめても罪にならないのよね。いいわ。ちょうど欲求不満だったの。ちょっとやりすぎてしまうかもしれないけどね」
次に手を上げたのは『ドS』の属性を持つ紫苑だ。
人をいじめることが快感の彼女にとっても、これはいい機会らしい。
「はい! 私も参加させてください!」
続いて『ドM』の属性を持つミミも参加の意思を表明する。
「ああ、属性犯罪者。犯罪者というからには、とんでもなく酷いことをされるんですよね。私、一体どんな目にあわされるのでしょう。はあはあ……ゴクリ」
普段から熱っぽい顔がさらに赤くなっている。
彼女の目的は『酷い目にあわされたい』らしい。
実はこのクラスで一番やばいのはミミなんじゃないだろうか。
「もちろん、私も行くぞ。たくさん解説をさせてくれ!」
最後に解説者がチームに加わった。
ってか、こいつら。もはや町の平和とかでなく、自分の欲望のことしか考えていないよな。
まあ、Eクラスらしいか。
「優斗は行かないの?」
「行かないよ。僕はデートがあるからね」
「そっか。じゃあ、私も行かない!」
優斗は参加しないようだ。
奴は主人公だが、『ハーレム』主人公だからな。戦闘には向かないのだろう。
後は同じく戦闘が苦手なコミュ障ちゃんや、やる気のないひねくれ女子なども参加しないようだ。
これもいつものことである。
「ふむ。ではこのメンバーで犯罪者を討伐に行くという事でいいか?」
「待て。俺も行く」
先生が締めようとしているところで、俺が手を上げた。
「え? 鎌瀬君も行くの!?」
周りが驚きの声を上げる。
今まで全く討伐には参加していなかったので、当然か。
「へえ、意外だね。ふふ、いいんじゃない」
アリスは嬉しそうな顔をしている。
この前盾にしたことで恨まれていると思ったが、そうでもないらしい。
「珍しいな。鎌瀬君よ、君は興味無いと思っていたがな。ようやく試練に立ち向かう美しさに目覚めたか!?」
「まあ、そんなところです」
もちろん嘘だ。
本当の目的は『敵』と戦えるという部分である。
『勝利』という目的を達成するには、このイベントはちょうどいい機会だ。
罪もない人たちに喧嘩を売っては問題となるが、相手が犯罪者だった場合はむしろ善行となる。
もちろん危険はあるが、このままではどっちにせよ一年以内に死んでしまうので、攻めていく必要があるだろう。
負けてもポイントが貯まるし、参加するメリットは多い。
今までのアリスとの戦いは、言わば練習だな。
今回はアリスに比べると、遥かに勝利するのが容易な相手のはずだ。
狙いどころは敵の部下にあたる相手だ。
属性犯罪者にはだいたい部下がいる。
『雑兵』という名の属性を持った奴らだ。
その名のごとく大した力も持っていない雑魚である。
そいつらを狙ってみよう。
雑兵なら勝利の望みはある。
「かーくんが行くなら、私も行くよ!」
いきなりサチも参加の意を表した。
「いやいや、お前が来る意味は無いだろう」
「でも同盟だし。私も手伝うよ」
俺を手伝いたいのか、一緒にいたいのか。
とにかく、ついてくるつもりらしい。
まあ、味方が増えるのはありがたい。
「ふふふ、面白くなってきたな。まあ、頑張りたまえ。応援しているぞ、鎌瀬君」
無責任なことを言って引率を始める先生。
これから現場まで移動するらしい。
「かーくん。勝てるかな?」
「どうだろうな。まあ、作戦は色々と考えてある」
「ふふ、相変わらず小細工が好きだね。一応、危なくなったら言ってよね。私が守るから……さ」
今回もアリスは俺のことを守るつもりだ。
まあ、人助けが生きがいみたいな奴だからな。
とにかく、今回は全力で『勝ち』を狙っていこう。
やられ役の俺は、普段なら負けるだけの役割。
だが、そこをひっくり返すのも俺の夢だ。
やられ役の逆襲を見せてやろう。
「ああ、嬉しいよ。たくさん爆発させられる」
「ふふふ、どんな奴をいじめられるのか、楽しみだわ」
「はあ、はあ、どんな目にあわされるのか楽しみです」
「解説だ! とにかく、解説させろ!」
属性犯罪者討伐の為に結成された皆さんは、物騒な台詞を発していた。
……なんだこの面子。やられ役の逆襲とか言っている場合じゃないかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます