第7話 やられ役はクソゲーが好きなのです

 まとめよう。俺が生き残るには『三つのゲーム』のどれかをクリアーする必要がある。


 一つ目は『やられ役の俺が勝つ』

 二つ目は『負けヒロインの恋を成功させる』

 三つめは『やられ役ポイントを百万貯める』


「って、こんなもん、クリアー不可能じゃねーか! クソゲーだな!」


「むう、確かに。言われてみれば、これではクソゲーですね」


「だが、まあ俺くらいになると、クソゲーや難関ゲームほど愛してしまうんだ。これがな」


「ええ~?」


 代理ちゃんが『この人何言ってんの? 頭おかしくなっちゃった?』みたいな目で見て来やがった。失礼な奴め。

 さては簡単操作の無双ゲームばかりやるタイプだな? 

 まあ、それも楽しいし、否定はせんが……。


 確かに俺はキャラの好みだけに限らず、ゲームの好みも変わっている。それは認めよう。

 良ゲーや名作と言われたゲームはやらずについ『クソゲー』ばかりを好んでプレイしちまう。


 操作が最悪だったり、クリアーが不可能と言われるほどやりたくなってしまうんだ。

 今回のゲームは俺やサチの属性を考えたら、その類のクソゲーとなる。

 ということは、逆に考えると、クソゲーが大好きである俺の十八番でもあるのだ。


 そう思ったら燃えてきた。かつてクソゲーマスターと言われた俺の腕の見せ所だな。


「あ、ちなみにあなたの未来のことは誰にも話してはいけません。内緒にしておいてください」


「ち、話せないのか。説明すれば、誰か協力してくれそうなんだけどな」


 全てを話して土下座でもすれば、一人くらいはわざと負けてくれそうなのだが、その方法は使えないようだ。


「さっきも言った通り、私が未来を予知できるというのは、本来は人間に知られてはいけない事なのです。もし、うっかり誰かに話してしまったら、神様の力で封印されてしまいますよ」


「封印って、そんな事されるのかよ」


「はい。神様が危険と判断されたら、本当に封印されます。前例もあります」


 恐ろしい話である。やはり、この町の神は油断ならない。


「おっと。そろそろ天界に帰らねばならない時間です。では、私はこれで。あなたの成功を祈っていますよ」


 そう言って、代理ちゃんは空へと羽ばたいていった。


「ったく、とんでもない事になっちまったな」


 やられ役の俺が勝つ。

 負けヒロインのサチを勝たせる。

 やられ役ポイントを百万稼ぐ。


これら三つは達成不可能な極悪ゲームである。


 人生はクソゲーという言葉がある。やられ役の俺はそのクソゲーでもさらにハードモード状態だ。


 そしてたった今、それがナイトメアモードへと変化してしまった。


 ただ、クソゲー愛好家としてはこのナイトメアモードはクリアーしておかなければなるまい。

 このゲームをクリアーした時、俺は真のクソゲーマスターとなるのだ。


 俺にはやられ役として数々の敗北経験と最強のスペックがある。

 例え勝てなかったとしても、俺自身が培ってきた経験値は健在なのだ。


 普通なら『負け』とは自信を失うマイナス要素だ。

 だが、やられ役である俺からすると、負ける事こそ最大の勉強だ。

 これらは強力な経験値となっているはずだ。それを思い知らせてやる。


 それに『負け』ってのは、うまく使えば戦略に組み込めることもできるんだぜ。


 いいだろう。死の因果とやらには、俺の『やられ役流のやり方』を見せてやる。

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