第71話 あかるいひるま(2)
前に十一時まで寝ていて、お母さんやおじいちゃんにあきれられたことがあります。もう昼ご飯の時間なのにまだ寝ている、と。
いまは二時です。「二」は「十一」より小さいのだから、十一時よりも前のはずです。だから、「おはようなもんですか」なんて言われなくても……。
えっ?
二時って、十一時よりも前?
それとも?
「お母さん」
お堂のなかから首を突き出して、お母さんにわざとのんびりと声をかけます。
「この二時って、どの二時?」
「何をばかなことを言ってるの?」
たしかに。
午後二時に決まっています。十一時より前の二時は午前二時で、それはまだ真夜中のはずで、昼間のはずがありません。
いまは、十一時よりはあと、いつも家にいるときにお昼ご飯を食べる時間よりもあとなのです。かなえはあわててききました。
「お昼ご飯はっ?」
「かなえの、いちおうとってあるけどね」
お母さんは怒ったように言って、でも、そのあと、すぐに笑い出しました。
「それよりあと二時間とかで夕方よ。日が暮れるのよ。そんな時間まで、よく、一度も目を覚ましもしないで……」
「あーっ……」
それ以外に、どう声を立てればいいでしょう?
お母さんも苦々しく笑いました。
「ともかく、きちんとお手洗いに行って、歯をみがいて、顔も洗って、それでごはんを食べなさい!」
で、意地悪くつけ加えます。
「食べ終わらないうちにおやつの時間でしょうけど?」
「あーっ……!」
かなえは声をあげました。お母さんがすかさず言います。
「あーっ、とかじゃなくて、はい、でしょ? もう五年生にもなって!」
「あ、ああ、いや……はいっ!」
でも、さっきの「あーっ!」は、「妹にばかにされる。どうしよう?」という意味だったので……。
まあ、どっちでもいいか。
お堂の扉を閉め、着たまま寝たのでくしゃくしゃになった服をちゃっちゃっと引っぱって整え、段を下りてから、かなえはお母さんのほうを振り向いてききました。
「そういえば、のぶ
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