第10話 幸いの草(5)
それはそうです。
かなえの家の庭には、昔、田んぼを作るのに使っていた機械というのが置いてあって、もうかなえが小さいときからそのまま置いてあって、それがいちめん茶色に
手でさわるときたない
たしかにあの錆のようなものが土のなかに交じっていてもなかなか見つけられないでしょう。
おじいちゃんが言います。
「鉄だって、長ぃあいだ土に埋めていたら錆びる。まして、そのレアアースなんか、地球っていうのができたときから、ずっと石のなかに隠れていたり土のなかに埋もれていたりしたんだろ? もう錆びきって、土のなかに
ううーん。
地球ができたときから土のなか、って、それはそれですごいと思います。
地球ができたっていうのはどれぐらい前のことでしょう? かなえには見当もつきません。
それで、かなえはなまいきに言い返しました。
「だったら、どうやって探すのさ?」
「それは、おまぇ、理科の実験とかあるだろう? やったことあるだろ?」
「ああ。あの、ぶくぶくってやったら白く
そういうのと違うのもやったと思いますが。
「そうだ。そういうのを、何百何千と繰り返して見つけるんだ」
「ふぅん」
かなえは、理科の実験は好きですが、そればっかり何百回何千回と繰り返すというのはどんな気もちなんでしょう?
楽しそうだとも思いましたが、そのうちに
「でも、そんなことをして探し出して、意味あるの、それ?」
ふと思いついたことに、かなえもぽっと頬が温かくなります。
「金とか銀とかダイヤモンドとかより、もっと宝石? もっとずっと宝石?」
それだったら、何度理科実験を繰り返してもつらいとは思わないでしょう。
でも、おじいちゃんはそっけなく答えました。
「いいや。それは安くはなぃけれど、それほど高くもなぃ。ダイヤモンドなんかとは較べものにならないなぁ」
「むうっ」
わくわくして損したとちょっとだけ思います。
「でも、貴重なものだぞ、かなえ」
おじいちゃんはかなえから目を離しました。上を向いてあの大きなひともと
木の葉のあいだからちらちら漏れてくる日の光がまぶしいのか、目を細めました。
ひともと樫はいまもさやさやと音を立てています。強くもならず、でも止まりもせずに、です。
「そのレアアースっていうのがなかったら、スマホとか、あとパソコンとか、そういうのはいっさぃ動かなぃんだ。いまの時代、いまの時代のものはな、かなえ、そういうのが動かなぃと、なんにも動かなくなる。それぐらいだぃじなものなんだ」
「へえ……」
いきなりそう言われてもかなえにはよくわかりません。おじいちゃんはつづけます。
「ところが、いまこの国はな、そのだぃじなものをよその国から買っておる。でも、そのよその国にしても、レアアースってのはだぃじなものだからな、もしかすると売ってくれんようになるかも知れなぃ。だから、自分の国でどこかに採れるところがなぃか探すのは、だぃじなことなんだ。その
そう言って、おじいちゃんは、かなえの顔を見下ろしました。
「うん」
かなえは、そのおじいちゃんの顔がとても頼りになるひとの顔に見えたので、いま言われたことをぜんぶ信じることにしました。
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