第6話 幸いの草(1)
かなえが家に帰ってみると、おじいちゃんがあの
かなえの家は六人家族です。
お父さんは鉄道線路が
その「金庫」の銀行のような仕事でお母さんがお父さんの会社に何度も行っているうちに二人は仲よくなって結婚したのです。
かなえの家は
もう一人は妹で、赤ちゃんのころは昼でも夜でも大声で泣くのでいやだと思い、少し大きくなってかなえといっしょに歩くようになると妹がいるのは楽しいと思っていたのですが、最近はなまいきになってきたのでまたちょっと憎らしくなってきたところです。
今日は、おじいちゃんは、かなえより早く家を出て田んぼに行っていました。それでもう帰ってきていたのです。
おじいちゃんはお父さんやお母さんからは「気むずかしい」と言われています。
「気むずかしい」というのは、ふだんから不機嫌そうに見えて、何に怒るかわからない、という意味のようです。
でもかなえはそうは思いません。
ただ怒るとこわいのはたしかです。前にかなえが妹とけんかしてご飯を途中でやめて出て行ったとき、おじいちゃんは怒って、かなえと何日も口をきいてくれませんでした。
おじいちゃんはとてももの知りです。お父さんやお母さんは、かなえにいいかげんなことを教えないでください、と言っているみたいなのですが、おじいちゃんのお話はかなえにとってとてもおもしろいのです。おじいちゃんを怒らせるとそのお話をきかせてくれなくなるので、かなえは最近はおじいちゃんを怒らせないようにお
今日も、かなえは、そのおじいちゃんに、
おじいちゃんはすぐに
「ああ。それは「さいぐさ」だな」
と答えました。
「えーっ?」
かなえはじっさいに驚いている以上に驚いて見せました。
「どうして三つの枝でさいぐさって読めるの?」
「漢字を読んだんじゃなぃ。まず、さいぐさ、ってことばがあって、それの意味にあわせて漢字をあとからつけたんだ」
「うん……」
その説明ではまだよくわかりません。
おじいちゃんは、ほうきを二‐三回動かしてから、つづけました。
「さいぐさっていうのは、野山に咲く
「百合?」
百合ならば、知っています。
家の周りにはないので実際に見たことはあまりありません。ときどき仏様に供えるお花のなかに入っているのを見るくらいです。
でも、どんな花かは、だいたいわかります。
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