第3話 庚申(3)
かなえが早く寝なさいといつも言われるのはまだ子どもだからです。大人だったら、好きなように夜更かしをしてもいいはずなのに、どうしてわざわざ「寝てはいけない日」なんかを作らないといけないのでしょう。それに、寝てはいけない日をつくるにしても、それはただ「寝てはいけない日」にしておけばいいのに、どうして、体のなかに虫が住んでいて、それが抜け出して、天の神様にその人間のやった悪いことを報告する、なんていう話をくっつけなければいけないのでしょう。
それに、大人の人も、「六十日のあいだに悪いことはしただろう?」と言われれば「してない」とは言えないのでしょうか?
よくわかりません。
おじいちゃんに、迷信だ、と言ってもらっても、かなえは、それからというもの、やっぱりほんとうに体のなかにはそのサンシの虫が住んでいて、それが六十日に一度抜け出して神様にかなえのやった悪いことをぜんぶ報告しているんじゃないか、と心配になるようになりました。
おじいちゃんは、かなえがそのサンシという虫を
もしほんとうに迷信だったなら、ばちなんか当たるはずもありません。
だから、やっぱり何かほんとうのことがあるのだ、と、かなえは思ってしまうのです。
夜、寝つけないでいると、そのサンシの虫のことをふと思い出して、いま寝つけないでいて、夜更かししていることもこの虫たちが神様に報告してしまうのかな、と気味が悪くなりました。そして、そういう夜は、その夜が、その六十日に一度来るという「
そしてそのうちふっと眠ってしまうのでした。
それが春のことです。
それから夏休みが来て、夏休みが終わり、五年生の二学期が始まりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます