第51話


「やったじゃん雪乃! おめでとう!」


 昼休み。

 私はもちろん上山くんとご飯に行くつもりだったのだけど、さくらに捕まった。


「う、うん。ありがとうさくら」

「でも、本当に付き合ったのって昨日からなの? 普通、手繋いだりってもっと先じゃない?」

「そ、そうなの? えと、なんか、独占欲が出ちゃって」

「あはは、雪乃らしいわね。でも、どうせ行くならぐいぐい行かないと。今日のうちにキスくらいしちゃうー?」

「そ、そんなの……無理だよ絶対。上山君、真面目そうだし」

「あはは、照れてる雪乃可愛い。でも、なかなか雪乃と遊べなくなると思うと寂しいな」

「べ、別にさくらと遊ばないわけじゃないもん」

「ほんと? じゃあ今日の放課後は私も一緒に遊んでいい?」

「な、なんで?」

「あはは、別に上山君をとろうなんて思ってないから。いや、二人の様子も見たいし」

「……いいけど、先に帰ってくれる?」

「はいはい、わかりました。じゃあそういうことで、放課後よろしくね」


 ついついそんな話が盛り上がってしまい、気が付いた時には上山君は席にはいなかった。


 私は結局一人でおにぎりを食べながら上山君の帰りを待った。


 彼が戻ってきたのは、昼休みが終わる直前だった。



「冬咲、あの」

「……ぷい」

「……」


 放課後。

 冬咲に声をかけたがなぜか無視された。


 昼休みは富永さんと仲良さそうに話してたからそっとしておいたんだけど。


 戻ってきてからずっと不機嫌そうなのは俺のせいなのか?

 

「あのさ」

「……昼休みどこ行ってたの?」

「え? いや、拓真とパン買ってその辺で食べてたんだけど」

「拓真って誰? 女の子?」

「はあ? いや、斎藤だよ」

「……わかった」


 やっぱり俺に対して怒っていたようだ。

 まさか浮気でも疑ってるのか?

 ……やっぱり出ていく前に一声かけたらよかったな。


「ごめん何も言わずに出てって。ええと、明日からは一緒に昼ごはん食べよ」

「うん。私こそごめんなさい」

「?」

「ううん……それより今日、さくらが一緒に遊ぼって。ご飯いこ?」

「あ、そうなんだ。いいよ」

「いいの?」

「え、だめなの?」

「……なんでもない。でも、さくらは可愛いから近づいたらダメだからね」

「わ、わかってるよ」


 どうやら冬咲はヤキモチ妬きな性格のようだ。

 ちょっとめんどくさいと思う人もいるのかもしれない。


 でも俺は嬉しい。

 こんな俺にヤキモチ妬いてくれるなんて、冬咲も俺のことを好きでいてくれるんだと実感できる。


 不安にさせないように、頑張らないとな。


「冬咲、富永さんとご飯食べたら二人で帰ろっか。送るからさ」

「うん。嬉しい」


 この子を幸せにするんだと、決心してちょっとだけ男らしくあれるようにと頑張ると、ようやく冬咲が笑ってくれた。


 そして二人で荷物をまとめていると、「お待たせー、アンドお邪魔しまーす」なんておだけながら富永さんがやってきた。

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