第48話

「うむ、首尾よく行ったな」


 朝。

 ご飯を食べているといちごが急に私の向かいで頷いた。


「何の話?」

「いや、雪乃と上山君の話だ。うまく行ったのだろう?」

「だ、だとしてもそれがいちごになんの関係があるのよ」 

「大アリだ。二人が結婚したら私は義理の姉になるのだから。義理の姉……ふふっ、いい響きだ」

「?」

「こっちの話だ。では、先に学校へ行く。遅刻するなよ」


 先に食器を持っていちごが席を立つ。


 そして洗い物をして部屋を出て行くとき、いちごの席に一冊の本が落ちていることに気づく。


「これ、いちごの? なんだろう……ん?」


 ライトノベルだ。

 あのいちごにこんな趣味があったなんて意外……んん?


「義理の姉との禁断の恋はやめられない?」


 とんでもないタイトルだった。

 そして裏表紙のあらすじを見ると、なんと妹の結婚相手と同居する主人公が織りなすドキドキ三角関係ラブコメだとか。


 それに義理の姉とはつまり……え? 


「ま、まさかいちご……」


 上山君のこと狙ってる? 

 うそ、なんで?

 

「なんだ、まだいたのか雪乃」


 混乱している私に対して、さっさと制服に着替えたいちごが戻ってきて声をかける。


「い、いちご、これ」

「ああ、見つかったか。いやなに、敵は身内にありなんて言葉は知っているだろう。うかうかすることなく、精進することだな」

「そ、そんな」

「ではいってきます」


 不適な笑みを浮かべながら、いちごは先に家を出た。


 私は、しばらく血の気がひいて動けなかった。


 いちごに、上山君がとられちゃう。

 やだ、絶対やだ。

 でも……いちごになんか負けたくない。


 何もかも私にないものを持ってるいちごに、大好きな人まで取られてたまるもんか。


「が、頑張らないと!」


 私は急いで着替えて家を出た。


 もしいちごが上山君に接触なんかしてたらそれこそ大事件だ。

 絶対、譲らない。


 上山君からは絶対目を離さない。


 やっぱり……監禁しよっかな。


⭐︎


 生徒会室にて。


「というわけだ副会長。私もなかなか頭が切れるだろう」

「その前に妹さんがキレると思うけど……」

「何を言うか。いくら両思いになれたからと言っても、油断して気を抜いて相手を雑に扱って後悔をするなと、私はそう言いたいのだ。今頃、私が雪乃の彼氏を狙ってると思って焦りまわってるだろうな、ははは」

「素直に応援してあげたらいいのに……」



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