第47話

「え?」


 驚いた様子で、上山君が止まった。


 もう、私の頭の中は真っ白。

 顔は多分真っ赤。

 帰ったらきっと真っ青。

 でも、それでも。


「わ、私は上山君が好き!」


 その言葉と共に魂まで飛び出してしまいそうなほど胸が苦しくて息をするのも忘れていて吐きそうだったけど。


 とにかく、言えた。

 そして、恐る恐る目を開けると。


「あ」


 上山君と目が合った。

 向こうも顔が真っ赤だ。


「……ええと、聞き間違いじゃないよな?」

「う、うん」

「う、うれしい。俺、冬咲のこと絶対大切にするから!」

「か、上山君!?」


 前のめりな彼に両手をギュッと握られた。

 私は、ただでさえ限界だったのにそれを通り越してしまって。


 また、気絶した。



「う、うう……ん、ここどこ?」


 目が覚めると、なぜか見覚えのある天井を見つめていた。


「あら、目が覚めたんだ」

「い、いちご? あれ、上山君は?」


 部屋の入り口にはなぜかいちごが立っていた。

 

「なに、たまたま二人が食事をしているところを見かけてな。声をかけようと思ったら雪乃が気絶していたから、上山君とやらに断って私が連れて帰ってやっただけのことさ」

「……そう」


 一瞬だけ、上山君との出来事が全部夢だったんじゃないかなと思ってしまっていたけど。


 やっぱりあれは現実。

 それに、私ったら二回も上山君の前で気絶を……


「あうあうあう……嫌われる! こんな女絶対嫌いだー」

「何を言ってるんだ雪乃?」

「だ、だって私ったら」

「上山君とやらと、正式に交際を始めたのだろう?」

「……へ?」

「これからもよろしくお願いしますと、きちんと挨拶をされたよ。律儀な子じゃないか、よかったな」


 ポカンとする私にいちごは、ポイっと何かをゆっくり放り投げる。


「あっ、私のスマホ」

「心配だから、目が覚めたら連絡くれと言っていた。ただの友人ならともかく交際相手ならそれくらいはきちんとやっておくべきだ。早く連絡してあげなさい」


 そう言って、いちごはそっと部屋を出て行った。


 私は、すぐにスマホを見る。

 早く連絡しないとって、ラインを開く。


 すると、ラインが入っていた。



「目が覚めたら連絡もらえる? 心配だからさ」


 上山君からのメッセージに、私は心があたたかくなる。


 ああ、ほんとうに私たち、付き合ったんだって。


 そのまま、私はメッセージごとスマホをギュッと抱きしめて、この瞬間を噛み締めていた。

 





 

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