第46話

 私は今、空を飛んでいる。

 なんかふわふわと、気持ちいい。

 それに、なんだかとてもあたたかい。

 まるで誰かに抱きしめられてるような……


「……さき」

「ふえ?」

「冬咲? よかった、目が覚めた」

「……か、上山君!?」


 目が覚めると、上山君の顔がそこにあった。


「ご、ごめん膝枕とか。でも、急に倒れそうになったから」

「あ、あ……ご、ごめんなさい」


 私は起き上がると、すぐに上山君と少し間を空けた。


 心臓が激しく鼓動して息苦しい。

 そういえば私、なんで気絶なんか……あっ。


「か、上山君、あの、ええと、その」

「落ち着いて。水、飲む?」

「う、うん」


 水を渡されて、それを飲むと体がすーっと涼しくなる。


 そして、ようやく冷静になると上山君が私に言った言葉が頭によぎる。


 付き合って………。

 

「か、上山君、さっきのって」

「ご、ごめん。急に変なこと言ったかな。でも、俺の気持ちだから。それこそ嫌なら気にしなくていいから」


 嫌ならいい。

 そんなこと、私も言ったっけ。


 そっか、おんなじだ。

 上山君も、私と同じ気持ちだったんだ。


 でも、相手の考えなんてわからないから不安で。


 自分が傷つかないように予防線を張って。


 そうやって、ずっと壁を作っていたからやっぱり通じ合えなくて。


 だけど今はちゃんと、わかる。


「上山君のこと……嫌じゃない」

「え、えと。それってつまり」

「私のこと、嫌じゃない?」

「も、もちろんだって。俺は冬咲が……す、好きなんだから」

「……」

 

 また気絶しそうなくらい、胸が締め付けられた。

 でも、今はそれ以上に嬉しさが込み上げてきて体が熱かった。


 好き。

 私も好き。


 早く伝えないと。


 言葉が、出てこない。



「冬咲? あ、あの、ごめんやっぱり」


 上山君が、席を立つ。


 このまま、今日のところは何も言わずに終わりにして。

 

 なんて、思ったら苦しくて。


 私は吐き出すように言葉にした。


「いかないで」


 


 

 


 

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