第45話
「……」
上山君は今、席を離れてトイレに行ってるところ。
私は一人で席に残ってジュースを飲んでいる。
「……やっちゃった」
気持ちが昂りすぎて、奥底にある願望が口に出てしまった。
普段から、上山君を監禁したりする妄想ばかりしてたせいだ。
終わった。
今度こそ終わった。
変態認定された。
ああ、死にたい。
このジュースが喉に詰まればいいのに。
「ごめん冬咲」
上山君が謝りながら戻ってきた。
どういう意味で謝ってるんだろう。
席を外して一人にしたことについて?
それとも、私の気持ち悪い願望は聞けないというお断りの意味?
でも、聞けない。
「ええと、冬咲って家で過ごす方が好きな人?」
「……まあ」
「そっかあ。俺もどちらかといえばそうかな。外出ると金かかるしさ、あはは」
上山君のフォローが私の胸に刺さる。
閉じ込めておきたいなんて言った私の言葉を必死に和らげようとしてくれている。
でも、間違いなくそれは本音なの。
外にいるとさっきみたいに悪い虫が近づいてくるし、私は男の人が基本的に嫌いだし、だからずっと二人で家にいたい。
こんな私のことなんて、絶対嫌いだよね。
「嫌、だよね……」
そう呟くと、自然と涙が出た。
私はやっぱり、変だ。
だからこの気持ちは伝えたらダメだ。
諦めないと。
こんな変なやつ、上山君なんかのそばにいたら……
「嫌なもんか」
「え?」
今、なんて?
「冬咲、別に俺は変な趣味なんてないけど、それでも冬咲と一緒にいられるなら……その、ええと、嬉しいよ」
「あ、え、え?」
「そ、その代わりちょっとくらいは外でも遊びたいかも、なんて」
照れながら、上山君が笑う。
私は、頭の中が真っ白になっていく。
「あの、えと、上山君?」
「冬咲、よかったら俺と、付き合ってくれないか?」
「つきあ……う?」
上山君の言葉の意味が、私は理解ができなかった。
もう、頭の中だけじゃなくて目の前まで、真っ白になっていく。
そして、
「冬咲! 冬咲!?」
「あうううう」
私はその場で、意識を失ってしまった。
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