第43話


「終わった……」


 私は今、保健室で寝込んでいる。


 空気の読めない、否。人間の心とやらがわからない姉のせいで私の青春は終わった。


 私の気持ちが、バレてしまった。


 よく顔は見れなかったけど、あの時の上山君の何とも言えない表情が私の心を抉った。


 私はそのまま走って逃げた。


 で、保健室へかけこんだ。


 屋上に向かってそのまま飛び降りてやりたいくらいだったけど、階段を登る気力もなかった。


 で、今はベッドなう。


「あうあうあうう……」

「冬咲、お友達がお見舞いにきたぞ」

「……え?」


 悶えている私を見て笑いながら、保健の西宮先生がそう言った。


 お見舞い?

 お友達?


 あ、さくらだ。

 また怒られるかなあ。

 でも、無視もできないし。


「ほら、冬咲早くしろ」

「は、はひ」


 別に体調が悪いわけではないことを西宮先生にはすっかり見抜かれている。


 気は乗らないけど立ち上がってカーテンの奥を覗く。


 するとそこには見慣れた友達の……あ、あれ?


「冬咲! 大丈夫か?」

「あ、あれ、上山君?」

「急に気分悪そうに走っていったから心配でさ。ええと、その、迷惑かなとも思ったんだけど、生徒会長にも様子見てこいって言われて」

「はわ、はわわわ」

「冬咲?」

「あうう」

「冬咲!?」


 目の前に上山君がいて、私は驚きのあまり気絶した。


 もう、顔を合わせるのも恥ずかしくて死ぬと思っていたのに、こんな情けない姿まで晒してしまって限界だった。


 そして、目の前が真っ暗になった。



「……う、ん?」


 再び目が覚めると、まだ保健室にいた。


「やっと起きたか。冬咲、もうすぐ放課後だぞ」

「あ、西宮先生。そんなに寝てたんですか?」

「ぐっすりだ。で、上山を呼んでも大丈夫か?」

「な、なんで?」

「いや、上山がな。冬咲が起きたら絶対連絡くださいって。本当に付き合っとらんのかお前らは」

「……だって」

「まあ、誰彼構わず遊ぶ連中よりも好感は持てるがなあ。しかしあまり臆病すぎても機を失うぞ。あ、お前は気を失ってたな、あはは」


 不謹慎なジョークだ。

 私は何も笑えない。

 でも、先生の言葉は私に重く突き刺さる。


 ほんと、その通りだ。

 上山君はずっと私に寄り添ってくれてる。

 だから好きになるなんて自然だし、好きと伝えて嫌がるような人じゃない。


 その先はわかんないけど。

 ただの友達としか見られてないかもだけど。

 それでも、私の気持ちは私がちゃんと口にしないと。


「先生、上山君に連絡します」

「そうか。なら、授業が終わるまで休んでなさい」


 先生も、私の覚悟が伝わったようだ。


 私は、ちゃんと告白する。


 本当は文化祭でとか、色々先延ばしにしてたけど。

 いちごのせいで全部ぐちゃぐちゃにされたけど。


 今日。


 ちゃんと好きってことだけは口にしないと。

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