第41話

「体育館裏ってこんな静かなんだなあ」


 放課後。

 私は上山君と学校の敷地内を見て回っている。

  

 最初に訪れたのは体育館裏。


 かつては駐輪場だったそうだけど、柵の老朽化と日当たりの悪さにより使われなくなった場所で、裏門も反対側にあるため誰も来ない場所だそう。


 それに、学校のやんちゃな生徒が煙草を吸っていたりなんて噂もあって、まじめな生徒は余計に立ち寄らない。


 夕暮れ時なのにかなり暗くて怖い。

 今は誰もいないみたいだけど、おばけでそう。


「冬咲、もしかして怖い?」

「あ、うん、まあ。暗いから」

「だよな。俺もこういうとこ嫌いなんだよな。早く次いこっか」

「う、うん」


 というわけで奥まではいかず引き返すことに。


 しかし、


「あ、あれ?」


 さっきからずっと、怖くて力が入っていたせいか足の震えが止まらなくなった。

 どうしよう、うまく歩けないどころか足が……。


「冬咲、危ない!」

「え、あっ!」


 足がもたれて倒れそうになったところを、上山君に支えられて転げずに済んだ。


 済んだ、けど。


「あ……」


 上山君に、抱えられる形になってしまった。

 私は足に力が入らず、彼にもたれかかってしまったままだ。


「ご、ごめんなさい。ええと、あの」


 起きあがろうとするほど、体がいうことを聞かない。

 それに、顔が近い。


 やばい、息できない。

 死ぬ!


「ほら、起きれる?」

「あう、あうう」

「だ、大丈夫か? 熱ある?」

「はわわわわ」

「冬咲?」

「だ、だいじょぶ。おき、れる」


 窒息死寸前でなんとか体に力を込めて自力で立つ。

 でも、腰のあたりに上山君の手の温もりが……


「冬咲、今日は帰ろっか。文化祭の日に体調崩したら元も子もないし」

「う、うん」


 まだくらくらする頭を懸命に働かせて、私は上山君についていって一緒に校舎を出た。


 今日は彼の家でなく、逆に私の家まで送ってくれた。


 その後のことはよく覚えていない。


 無意識のまま用事を済ませて気がつけばベッドの上にいて。


 次に目が覚めた時はもう朝だった。


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