part3 On the hell

間話 発端

 ある時、私は世界のり方に悩んでいた。


 悩みながら私は畑を耕すその手を止めなかった。

 そろそろ種を蒔く時期が近いので思索の最中わざわざ手を止めるわけにはいかなかったのだ。


 他の誰かに任せることも考えたが、私以外の私に土いじりを好む者はいなかったので、結局のところこの仕事は私がまっとうするしかなかった。


 だから並行して思索を進める。


 人類の、その行く末はいずれ平和という安寧のせいで消える。

 では、争いを起こすべきかとも考えたが、それには人類という種が育ちすぎている。

 戦争という災厄の果てに人が数を減らしては本末転倒だ。


 だから、どうするべきか。


 私はくわ振いふるいながら考える。


 畑は良い。

 人類が今の地位に至った発端。

 他の種を滅ぼし、唯一静的現実に適応を果たしたその発端の全てが詰まっている。


 それに精を出せばその分結果が返ってくるのも私の好むところではある。


 そう思いつつ、その日も私は鍬を振るっていた。


 そして見つけたのだ。


 最初それは畑の隅に現れるモヤのようなものだった。

 空気にそこだけ色を付けたような……


 肉の体では観測しきれぬそれを時折眺めるのが日課に加わり、それはどうやら生きているらしかった。


◆◆◆◆


 どうしたものか——と私は考えた。

 他の『老人』たちに伝えるべきでないというのは大前提だ。


 それは生きているが、同時に数日で死に至る。

 死んで、生き返るを繰り返し。

 どうやらこの世界で長く生きられないようで、その転生を繰り返す生き物に私は好奇心が駆られた。

 だから、別の私の力を借りて私の身体を分け与えた。


 身体というより正確には化身アヴァタールだったが、私の一部を与えたことに変わりはない。


 だから、それは生来の能力に加え私の魔術の要素が加わってしまった。


◆◆◆◆


 それは仮に定義するならば世界の外の道からやってきたのだという。


 完全にこの世の外からやってきた存在。

 世界の外にはこの世を作る全ての0ゼロがあると言う。

 この世に始まりがあるとすれば、それは無にして有でもある0ゼロという概念に集約される。


 その0と繋がりを持ち、外から道を通りやってきた彼を私は『外なる者』あるいは『外道者アウトサイダー』と呼ぶことにした。


——XXXX年 寧楽楪ねいらくちゃ・ドップマンがこれを記す

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