11/23 白


今は何を言っても話ができない。

遅れてやってきた友人は、こっそりと俺の後ろで女を撮っている。

すべてがようやく、白日の下に晒される。


「あの、いくつか質問してもいいですか?

世界の皆さんが解説を求めているので」


友人がひょっこりと前に出てきた。

あの女は抵抗する様子をまるで見せない。


「アンタたちも同じじゃない、そんなおもちゃで盗撮してたんだから。」


「ここの監視カメラが異常なだけです。

さて、ここの生首たちはエヴァリスト公の被害者であるという噂がありますが」


「そうよ、彼らは首を斬られたの。正義と国の発展のためにね」


もう何百年も前の話だ。

将軍だったエヴァリスト公はこの地に侵略し、抵抗する者たちの首を斬った。

当時は武勲として称えられた。


「この国を語る上でかかせない歴史上の大事件の裏側、ということですか。

なるほど、どうりでこの部屋に入ってこようとしないわけです」


カメラは静かに笑っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る