11/21 飾り

施設はアリの穴のように地下へと広がっている。

生首たちの存在を信じているカルト集団の寄付で成り立っていると聞いていた。

生首たちはいつか来る滅びの日のための生贄となると語っていた。


もう一度死ぬために復活させられるとは、彼らは思ってもみなかっただろう。

生首だけとはいえ、ようやく生き返ることができたというのに。


「本当にどこにいるんだ……」


俺の背後をついてくる生首たちはどんどん増えていく。

友人はしんがりと務め、奇妙な行列を撮影している。


「ゆーりー?」


「ひときたー」


「だれー」


次々と叫びながら、あの女を探す。

彼らも女の居場所を知らないようで、あちこち転がりまわっていた。


最後の部屋の扉を開けると、正面にエヴァリスト公の肖像画が飾られていた。

生首といえば、彼だろう。彼らのせいで、生首たちは死んだ。

ようやく、すべてが終わる。


「……来ると思ったわ、待ってたのよ」


あの女はゆっくりと振り向いた。


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