11/18 椿

椿は花ごと落ちる。胴体から落ちる生首みたいで美しい。

切れ味のいい剣ですぱんと落とす。これほど美しいものはない。


晩年のエヴァリスト公が己の首切りについてこう語っていた。

椿の花を庭で愛でていた。


そうえいば、母も椿の花が好きだった。赤い椿の花を庭に植えていた。

数年前に失踪し、行方不明となった。


「あの首塚は歴史的にも価値があるものだ。あれを破壊するだけでも十分に罪は重い。世間からの注目を浴びたいだけなら、それで十分のはずなんだ。

なのに、お前たちをよみがえらせた。その理由が分からないんだ」


「……ユリは楽しそうだよ。私たちを優しく扱ってくれるし」


「お前たちは首を斬られて死んだから、そう思うだけさ。

あの女は何も考えちゃいない、心の中にある空虚を埋めるのに必死なんだ」


あの女はいつも心が空っぽだった。

何かで埋めようと必死だったから、家庭は荒れるばかりだった。


あの女の自己満足に付き合うのもこれで終わりにしよう。


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