11/17 額縁

9時を告げる鐘が何度か鳴った。

夜の月はここからでは見えない。

ここ数年、外の世界はカメラでしか見ていない。


外の月はどれだけ美しいだろう。

月よりも丸い生首がここにいる。


「おやすみー」


「ねむねむ」


ぶつぶつといいながら、生首たちはそれぞれのガラスケースへ戻った。

ここにいれば、何不自由なく過ごせる。

栄養満点の食事、清潔なシャワー室、快適な寝床、これほどいい施設もない。


生首を相手にしてくれるホテルがどこにあるというのだろう。

この施設にいれば、ずっと幸せに暮らしていける。

誰にも知られずに、過ごすことができる。


私の部屋に生首たちは絶対に近寄らない。

額縁にエヴァリスト公の肖像画を飾っているからだ。


彼らにとっては恐怖の象徴であり、殺害した本人である。

到底、許せるはずもない。


しかし、私にとっては神も同然である。

人間をこんなにかわいくしてくれて、本当に感謝しかない。


だから、私の可愛い子を奪ったあの男を絶対に許さない。

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