11/2 食事


生首たちの朝は早い。

もぞもぞと日の出と同時に動き出し、ぼそぼそとあいさつを交わす。


「おはよ」


「おはー」


あいさつはたった一言だけでいい。

彼らが人間たる証拠はそれだけでいい。

彼らは生きるために思考機関を捨てた。


生首では何もできない。胴体はどこかに消えた。

どこに置いてきたかも分からない。


ただ、胴体が離れないことだけは覚えている。

誰かに斬られたことは覚えている。

自分はなぜ、生きているのか。

それすら分からない。


斬った相手の顔は忘れた。思考機関と共に消えた。

しかし、胴体がないことは覚えている。


「どうたい」


「しらない」


ごろごろと転がりながら、彼らなりに考える。


なぜ、自分の体はないのか。

なぜ、頭だけが残されたのか。


なぜなぜがとまらない。


「みんな~、ごはんよ~」


この一言ですべて吹き飛んだ。

もはや、何もかもがどうでもいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る