11/10 来る

生首を語る上でエヴァリスト公を語らないとはどういう了見だろう。

かの暴君はさらなる領地を求め大陸各地を渡り、住民の首を斬った。


人々を従わせるために国を恐怖に陥れた。

当時は英雄と称えられていたが、今はどうだろう。

侵略行為を繰り返し、悪行の限りを尽くした。


人々のためを思ってやったことなんだろうが、生活は一向によくならなかった。

飢えるばかりで、豊かにならない。


その数年後、国がひっくり返った。

これまでの仕返しとばかりに首ばかり執拗に斬られ、胴体がズタズタにされた。


彼の一生はそれで終わった。

首塚は殺された住民たちを供養するために建てられた。


町の観光名所として知られ、今も多くの人でにぎわっている。


これが首塚で眠っていた首なのだろうか。

扉を細工してやれば、生首のほうからやってくる。


首塚のその下にある首の状態など誰も知らない。

今も生きているだなんて、誰が思うだろうか。


俺はそっと抱えて逃げ出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る