第54話 消えた聖獣

 俺たち三人は家へと入り、机を囲む。

 両親の顔色はすっかり良くなっていて安心……なのだが。


「それで、シロシロがいなくなったって本当?」

「ああ。急に街が元に戻って、人形が減ったと思ったら。いつの間にかいねえことになってた。魔法使いみたいにな」


 ガラは首を傾げ、俺とロックの方を見渡した。


「何そのシロシロって。何の話?」

「シロシロ様か。あの人はワシらが暗殺業をしていた頃のボスだったが、10数年前に突然姿を眩ませてな。それ以来会っていないぞ。しかし、マヴはよく知っていたな」


 ガラの質問に、側にあるソファで爪を金属のやすりで磨いている父が答えた。


 ……おいおい。

 べクーのヤツ、なんてことしてくれてんだ!


 ——俺いま、この世界に来て一番血の気引いてんぞ!


「それで、魔法使いは見つかったか?」

「それがだな……」




 ……クソっ。

 落ち着いて話せるような気分じゃないが。


 ベクーラガルルがベクーの一部であったこと、魂を集め切れば元の姿に戻せること、また、ベクーの目的と鎧騎士の目的をロックに伝える。

 それらを聞きながらロックは、机の上で拳を震わせていた。


「何だそりゃ。ふざけた話じゃねえか」

「俺もそう思う」

「しかしマヴ、その話よりもだ。お前の両親と聖獣様が暗殺業をやってたとはな。……まあ、今となっちゃどうでもいいが」


 ロックはジトーっと、俺のこと両親を見た。

 そういや話す前に父が漏らしてたな。


「魔の侵略に対抗するのが目的だったし、そう嫌わないでくれ」

「そうかよ。それで、聖獣様のことはどうすんだ? 探すんなら手伝うぜ」


 そりゃ、探したいのは山々だけど。

 べクーの手伝いさっさと終わらせたいしなあ。

 それに世界の改変でいなくなったのを探したところで、シロシロは俺のことをもう知らないだろう。

 ……最悪だ。

 まあ、べクーに苛立っても仕方ない。

 魂集めなんかよりも戦争止めるように言ってたのは、俺なんだし。


「魂集めを優先するよ」

「……おいおい、どうせ忘れられてるだろうからってどうでも良くなった訳じゃねーよな? もし聖獣様がお前のこと覚えてて、世界の改変でとんでもねーことになってたらお前はそのままでいいのか?」

「良くないけどさ、シロシロもベクーラガルルのことを忘れてたんだ。覚えてるはずない」


 ロックはぶつける先のない怒りを鎮めるかのように、息を大きく吸い片手で頭を抱える。


「関係ねーよ。なあに、探すだけさ。元気そーにしてんなら、それで少しは気ィ晴れんだろ」


 確かに。

 というか、ロックがいいヤツ過ぎる……。

 

 

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