第52話 侵入
『すみません、経過報告を貰えませんか?』
俺とガラが酒場の壁へ、もたれかかるようにして座っていると、ようやく連絡が来る。
「経過報告も何も、こっちからの通信手段を教わってないんだけど」
『ああ、失礼しました。インカムをお渡ししておきますので耳に付けてください』
目線の先でピロピロと電子的な光が剥がれ落ち、小さな機械が出てくる。
とりあえず手にとって耳に当てると、耳にくっ付いた。
「それでこれ、どうやって使うんだ?」
『耳の穴辺りをカチッと押して話せば、こちらへ通信できます』
んん、一度試しておきたいがいいか。
「魂がどこにあるのか情報収集してた。恐らくだけど、酒場内の地下にあると思う」
『あ……位置は上です。酒場の最上階を目指してください』
噂と逆なんだが、大丈夫なのだろうか……。
「分かった。でもさ、酒場出禁になっちゃって、また入るとまずそうなんだけど」
『んー、入って階段かエレベーターで上がるだけなので、大丈夫ですよ。それじゃ、魂取れたら連絡ください』
べクーの声が聞こえなくなる。
なんて雑な人なんだ。
と、ガラが入り口から入ろうと扉の手すりに手を掛けている。
「ちょっと待ってくれ。ガラ、これが最上階でフヨフヨしてる魂を虫あみで取るだけになると思うか?」
「そんな感じじゃないの? さっさと捕りに行こうよ」
「俺はどうもイヤな予感がするんだ、入ってもすぐマスターから捕まえられるような」
「お兄ちゃんだっさーい❤︎ 入らないと始まらないのに❤︎ そうやってビクビクしたまま、アタシの帰りを待ってれば?」
クッ、何か方法を見つけてからにしたかったが、捕まるなら2人同時の方がいいか……?
俺は酒場の中へと入るガラについて行った。
すかさずエレベーターの中へと2人で乗り込み、最上階へのボタンを押して閉じる。
どうやらここは80階建てらしい……外から見てそこまで高いような感じはしなかったのだが。
あ。
途中の階のボタンが、12の数字が点灯した。
これもう捕まるんじゃ……。
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