第51話 巨大酒場の秘密

 固く閉じられた扉の前に、俺とガラは放り出された。


「また入ってきてみろ。次は牢屋にぶち込んでやる」


 マスターは巨大な酒場の中へと戻っていった。

 まあ、いきなり牢屋に入れられなかっただけマシか……。


「じゃ、べクーから連絡来るまで情報収集するか!」


 ガラの方を見ると、その背後には誰の人影もなかった。

 人通りが少ないどころではない、誰も外を歩いていない……街灯すらなく、あるのは建物の窓から漏れる光だけだ。

 巨大酒場をよく見てみたら、全ての建物と繋がっていて他の建物には出入口が見当たらない。


 ——出禁だ。

 できんだ、デキンダ……。

 脳裏で何度も繰り返されるその言葉と共に、俺は久方振りの詰みを感じた。


 でも案外、外にいるのかも知れない。

 道を歩いていると、開いた窓から会話が聞こえてくる。


「なあ知ってっか? この酒場のオーナーは、地下に秘密を隠してるらしい」

「なんだそれ?」

「降りていった先にはVIPルームがあるんだと。でも誰もそこに入れた者はいないそうだ」

「どーでもいいな。俺っちはお前とここで飲み食いしてりゃ満足だよ」

「へへ……おいらもだ」


 噂話だろうか。

 んん……盗み聞きは気分が良くないけど、この調子で情報を集めるとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る