第46話 到達方法
三毛又数の口を緑髪の男が手で塞ぐ。
そして幌馬車の中からは、これまた緑色の髪ではあるが双子の女性が出てきて、三毛又数を連れ戻す。
馬は大人しく止まり、男を横目で見て合図を待っているようだった。
……幌馬車の中でガチャガチャと金属音が鳴る。
拘束されている最中なのだろうか。
仲間内からも相当嫌われていそうだ。
「三毛が君たちに迷惑をかけていたようだね。本当にすまない、何かお詫びをさせてくれ」
「いえいえ。その三毛又数さんが悪いだけなので」
「一理あるがね、彼は我々吟遊詩人の印象を悪くしてきた。泊まった村の食糧庫を荒らして帰る害獣を、放っておいてはいけないだろう? これは飼い主の責任というやつさ」
飼われてるのか。
情けないやつ。
「それじゃ、三毛又数の歌の口直しに……何か一つ、歌を聞かせてください」
「分かった。レイル、新作を歌ってあげなさい」
双子の1人が馬車の中から顔を覗かせる。
「聞いてもらうの恥ずかしいです」
「そうか。では我の歌とリラに乗せよう」
男は音階を確かめるかのように、ハープの弦を指で撫でた。
……リラっていう名前のハープなんだろうか? 楽器に名前付けるの面白いな。
俺も武器に名前付けようかな。
「かの不浄の森、生まれし戦の魔、飲まれし我が国々、嘆き渡る血肉。失われし血肉、魔となりし体、不浄となり塗り広がりし日。落ち休まぬ日は月を満たし、満たし。魔の遊びにより世界滅ばん。人なき地、崩れし地、抗わぬ者、抗わぬ者、捧ぐ命、捧ぐ命。待ちし救い来ず、滅びゆくは我」
歌い終わったらしく、演奏が止まり男はお辞儀する。
ふむ、分かるようなよく分からないような。
とりあえずガラに合わせて拍手した。
「どういう歌なんです?」
「今各地で起きてる戦争だよ。一匹の魔に世界はいつの間にか、いいようにされている。森の浄化を怠った者たちが根幹に近い原因なのだろうけどね。誰も魔と戦おうとはしないのが、どうにも悲しくてね。もはや誰かが戦える相手でもないのがまた、苦しいところだよ」
「なるほど」
操られたら終わりだものなあ。
でも倒すのは簡単だろう。
操られさえしなければいいんだし、その対策方法はある。
ゲーム内でベクーラガルルが作ったという魔法封じの道具、確かネックレスみたいなヤツを付ければいい。
まあそもそもこっちでも作ったのか分からないし、どこにあるのか知らん。
付けなくても魔法を使われる前に瞬殺すればいいのだが……あると確実だ。
とにかく、その操ってくる魔の居場所が分かればいいんだけどなあ。
「では行くよ。ご静聴ありがとう」
「待ってください、その歌に出てくる魔はどこにいるのか、分かったりします?」
「魔の居場所か。分かるよ、ヤツを避けて旅をしているから無事なわけだし」
おお、なんて幸運なんだ。
ダメ元で聞いてみるもんだな。
「どの辺にいますかね」
「魔というのは、腐敗した森からあまり離れられない生き物だ。しかし、魔がお互いに近くにいれば活動範囲をある程度は伸ばすこともできるようでね。スケルトンは基本的に並んでいるんだ。つまり腐敗した森とスケルトンのいる範囲、そこに潜んでいるだろうね」
「それって、腐敗した森を浄化したらどうなります? 離れてた魔とスケルトンは死にますかね?」
「死ぬだろうね」
そうか……。
今とんでもなく広い範囲だと思うが、やりようはある訳か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます