第42話 撃ちすぎ
……都市に着いた。
日が暮れて、都市の一区画にだけ明かりが灯っている。
もし瓦礫の除去を手伝っていなかったら、明かりは灯っていなかったかも知れない。
つまりは、暗くなった時に明かりの方へは向かわずに野営していたかも。
どのみち今夜野営することになるだろうけど、回収してからなら
「この調子で頑張りましょう!」
「うん疲れたねおやすみ!」
そして、全員入眠。
という感じで済むだろう。
「疲れた〜。休んでから混沌の時空に行こうよ」
「もう少しの辛抱です。ね? マヴさん」
「はい!」
疲れてるとこ悪いが行くぜ。
べクーは迷いなく瓦礫の中を進み、階段を降りていく。
また魔の時空へ向かった時の、ああいう感じのとこを歩くのだろうか。
ああいう幻想的なとこは月に1回ぐらい行くのはいいけど、頻繁に行ってたら正気を保てなくなる気がする。
いや、聖獣街もそうなのだが。
「この門の先です」
どこへかって言うと酒の貯蔵庫にでも繋がっていそうな、木と黒い金具の門。
べクーがそれを開けると、短い通路の奥には通路を塞ぐ蟹っぽい魔がいて、その手前に鎧の兜が何個か置いていた。
どうやら鎧は5回ほど負けたらしい……。
「こういう時、第三勢力の存在は助かりますね。この魔を倒して混沌の時空へ進みましょう」
「何でこんなとこに魔がいるんだ?」
「知りません」
べクーは武器を取り出す。
それは、この世界で一度も見ることはないと思っていた武器、銃であった。
銃弾は蟹の甲羅を貫き、一瞬で蜂の巣にする。
蟹はお金を落とさずに消えてしまった。
「ふう。この武器重たくて……動けないから、効かなかった時が怖いんですけどね、どうですか? 強いでしょう」
鎧の攻撃で弱ってただけかも知れないが、黙っておこう。
ガラは疑いの眼差しをベクーに向けている。
「その武器って何? 穴から何か出てるみたいだったよ」
「投石や砲弾のようなものです」
なんだその雑過ぎる説明は。
でもまあ、知らない人に説明するとなるとそういう感じになるか。
「とにかく進みますよ。この門の先が混沌の時空です」
ガラが正常でいられるのか不安なものの、進むしかない……。
門の先では、見覚えのあるイベント用キャラがクリスマスの飾り付けをしてある空間の中、1人で体育座りしていた。
「いらっしゃい。迷い込んできちゃったんだね、出口はあちらだよ」
白肌、ピンク色の髪、水色の瞳。
でかいオレンジ色のシャツ着てるだけのだらしない格好で、トカフは俺たちを迎える。
いや迎えてないな、帰るよう促してる。
トカフの目線の先、ベクーは空中を目で追っていた。
そして虫あみであの、天使っぽい光を捕まえる。
その光は虫あみの中で光ると、ベクーの体へ重なって消えた。
「よし帰りましょう」
ベクーが帰ろうとすると、門は消えており。
代わりにあったワープポータルらしきものが閉じる。
「……ちょっと。さっきのその子、唯一の話相手、だったんだけど」
トカフは何故か正座し、汗と涙を流している。
ちょ……これじゃ出られない。
「返してくれないかな……?」
「できません」
ベクーは容赦なくトカフに銃を向ける。
待て待て、血の気多いわ。
それに倒して出られなくなったらどうするんだ。
サッと2人の間に入ると、発砲音が鳴った。
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