第22話 生き延びるために

「お兄ちゃん、アタシたちと一緒に暮らさないの?」

「ママ寂しい♡」

「パパも寂しい♡ つってな……。またいつでも帰って来いよ」


 ママがパパを笑顔で小突く。

 家に戻ったはいいが、よくよく考えると。

 シロシロがここに残らないと、魔を倒す人がいなくなるよな?

 うーん。


「お帰りなさいまし。あら、お客さんでございますわね」

「おい、コイツは……!」


 ロックの顔が強張り、べクーラガルルは杖を手元に出現させ構える。


「魔だな」


「……? 聖獣であるワタクシを魔呼ばわりとは、失礼ですわね。あなた達なんて闘気だけで倒せますわよ」


 鎧がシロシロに近付き、手を伸ばしておさわりしようとする。

 そこでシロシロがオーラを放ち、鎧は転んで爆散し消えた。

 ……え。

 いや、消えてくれるのは助かるが。


「お触り禁止ですわよ」

「待ってください。目的は同じなんですし、戦う必要ありませんよ」


 べクーラガルルが杖をシロシロに向けると、シロシロの体は浮いてそのまま家の外へと運び出される。


「ロック、剣を空へ突き立てろ」


 ロックが剣を天高く掲げた。

 その上へとシロシロの体が浮かび、落ちていく。

 これはヤバい。

 ヤバい……!


 俺はロックに体当たりしていた。

 もし呪いが発動すれば終わりだ、シロシロがやられる。

 

 ギ、ギ、ギ


 と……あの軋む音が聞こえ始める。

 ダメ、なのか……? いや、玄関前で気絶してれば、時間は稼げるはず……。


 目が覚めると、また家のベッドの上だった。


 周囲に人はいない。

 起きて外に出ると、玄関の前でシロシロが立ち尽くしていた。


「ああ。マヴくん。もう起きましたのね」


 シロシロの目の前では、ロックとべクーラガルルが倒れており、鎧兜も落ちている。

 良かった、鎧以外は無事らしい。


「魔法使いを交えた三人がかりでも、ワタクシにかかればちょちょいのちょいですわ。さ、いきなり襲ったのは許して差し上げますので。お話いたしましょう」

「……魔と交わす言葉などない」

「失礼ですわね、ワタクシは聖獣ですの。魔を狩る存在で、あなた方人間とは共生関係の存在ですのよ」


 そう、ゲーム内の聖獣という概念もザックリしている。

 ゲーム内で聖獣はシロシロ一人しか登場しない。

 シロシロは自分の存在について追求されても、魔だと疑われても、聖獣ですわとしか答えられないのだ。


「この街を支配する元凶には違いないだろ」

「それは勝手に崇められていただけですわ。ブロンズ像建ててくださいまし、なんてお願いしていませんの」

「……どうするよ魔法使い。こっちの勘違いでした、つっても逃がしてもらえそうだぜ?」


 這いつくばったまま、べクーラガルルはシロシロを睨む。

 そう敵意を向けられても困るんだけどな。


 と、二人の後ろから鎧が歩いてきた。


 復活したのか。

 少し……鎧の色が土色っぽい気がする。


「アダマンタイト……」


 シロシロがそう呟くと同時に、鎧がシロシロの方へと剣で切り掛かる。

 その剣は手に阻まれ、爆散して消えてなくなり——鎧はシロシロから距離を取って弓矢を手に取った。


 鏃が土色に煌めく。

 シロシロには、アダマンタイトの武器でかなりのダメージを与えられる。

 そして、アダマンタイトの防具でシロシロの攻撃、その殆どを無効化できる。

 コイツはそれを熟知しているようだ。


「マヴくん、加勢をお願いしますわ」

「はい」


 ……よし、やり取りを挟めばきっと呪いは発動しないぜ。

 こうなったら、シロシロを守るためにやるしかない。

 俺がコイツを倒す、例え何度復活しようと諦めるまで倒し続けてやる。

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