第12話 作戦

 作戦は二通りあった。

 暗殺グループと会い親はもう仕事をできない、ということにして俺が暗殺業を引き継ぐ。

 そして憑代を用意する。

 次にべクーラガルルから貰ったナイフで暗殺対象を始末し、憑代に憑依させ蘇生していく。

 そのあとは蘇生した暗殺対象となんとか仲良くして、俺が復讐に遭いそうになったら助けてもらえればラッキー……。

 家が憑代だらけにはなるけど。


 ……ハッキリ言って自己満足のようなものだ。

 俺が暗殺対象を始末しても、家族ごと恨まれてしまえば運命が変わるわけではないだろう。


 もう一つは両親の属している暗殺組織を壊滅させる、というものだ。


 ゲーム内のチャプター2では、その暗殺組織を潰しにチャプター主人公が単身で向かう。

 アジトに侵入したチャプター主人公のロックは、悪人だけを始末していると言い張る暗殺者たちに対して

「お前らのやってることは、横取りと何ら変わりねーように見えるが?」

 と言い戦い始め、返り討ちに遭い片腕を失い戻ってくるという展開なのだ。

 そしてプレイキャラが暗殺組織を壊滅させるも、本当に悪人だけを始末していたので世の中が少しずつ悪い方へと変わっていく、という展開である。


 ……世界を変えるとかできないのは仕方ない、要はシナリオ主人公たちと敵対するかを選ぶ訳だ。

 そもそも敵対する前に死にそうだが、後者なら戦わなくても説得すれば何とかなるかもしれない。


 べクーラガルルがいれば三歳児の俺でもやれる気がしたけど、頼らずにやれるもんなのか? いや案外、体の小ささとかが利点になって上手くいったり……?


 とにかく説得だ、そんで俺が強くなるのに充分な時間さえもらえれば、両親が殺される前に暗殺グループを壊滅させられるかも知れない。


「お兄ちゃん!」


 うおっ!? 耳元で大声がっ、と目の前にはガラがいた。


「やっぱり戻るの怖いよ。マヴくんがどうかは知らないけど、アタシはママから産まれてきたわけじゃないし……」

「そーなの!?」

「うん、本当の親はどこかへ行っちゃったって。事故で亡くなって、ママとパパが拾ってくれたんだと思ってたけど、ホントは殺されたのかも」


 考えてみればそうだ。

 子供をお腹に抱えたまま暗殺業なんて無理がある。

 マヴは暗殺対象から産まれていたのかも。

 同じ銀髪だから殺されずに済んでいただけで、本当は——。


 このまま帰ったら、ガラと共にまとめて殺されてしまうのでは?


 立ち止まっていると、背後から物音がする。

 大きなカゴを背負った父が、俺たちを見て目を見開いた。


「なんだ、こんなとこで遊んでるのか? あまり家から離れ過ぎるなよ、帰ってこれなくなるからな」


 俺とガラは顔を見合わせる。

 こういう事態の時ってホントに目が合うもんなんだな。


「どうした?」

「べっ、別にぃ〜? どうもしてないよ父さん」

「そうか。美味いキノコとか取れたし、帰って飯にするぞ」

「わ〜い、僕キノコ大好き……」


 動揺してガラのような喋り方になってしまった。

 やっぱり、ガラの家出に乗じるべきだったか……?

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